第176話「ゆったりと」
フウチョウのフウ子を仲間に入れるのじゃ。
ホウジョウ王国の感じを見ておって思うのじゃ。ああ、こういうゆったりとした雰囲気がいいよのうとな。
そう簡単には手に入れられないこの平和に、一体誰が守っとるんじゃろうかと思うのじゃ。
「コン、馬鹿ね。当然シルフ様の加護おかげよ。そしてそれに応え続けることよ。そうすれば穏やかな加護の風が国を包み続けてくれるのよ」
フェニ子が笑いながら言うのじゃ。そこまで効果があるのかのう? ワシは女の子にシルフ様について聞いてみたくなるのじゃ。
「シルフ様ってどんな神様ですか?」
ルナが聞くと女の子はこう答えるのじゃ。
「フウチョウに聞けばわかるかもしれないね」
ワシらはまずフウチョウに会うことにしたのじゃ。
様々な鳥がおる中でより一層の加護を受けているフウチョウを探すと緑色の尾が長い鳥がおったのじゃ。フウチョウというよりウグイスに見えるのじゃ。
ここからじゃがフェニ子に頼むのじゃ。
「駄目よ、あたいたちはそれぞれ合わないもの」
ならばワシとジーナが行くしかないのかのう?
「いいえ、ルナに行かせるべきね。選ばれたらついてくるわ」
「わかりました、行ってきます」
「緑主を出して行きなさい。それで判別してくれるはずよ」
ルナは言われた通りにするのじゃ。するとフウチョウはルナの方を見ておったのじゃ。
ゆっくり近づいていくルナに飛び上がったフウチョウはルナの肩に乗り、何かを囁くのじゃ。
そして肩にフウチョウを乗せたまま、ゆっくり戻ってくるルナは、顔が強ばっておったのじゃ。
「久しぶりね、元気してたかしら?」
フェニ子が言うのじゃ。
「あら、そちらこそ熱でやられてないのかしら?」
「火の鳥のあたいが熱にやられるわけないでしょ?」
「で、要件は何かしら?」
ワシはフウチョウに尋ねるのじゃ。
「シルフ様に会ってみたいのじゃ。協力してくれんかのう?」
するとフウチョウは頭を傾げ、聞いてくるのじゃ。
「どうして会いたいの?」
「どんな神様なのか知りたいのじゃ」
ふうん、とフウチョウは呟いた後、ワシの肩に乗るのじゃ。
「シルフ様に会いたいなんて神様は珍しいわね。大抵無関心なのに。ここから遠いけど、あちし一匹くらいなら離れても大丈夫だし、案内するわ。よろしくね」
「ワシは狐依コンじゃ! フウ子と呼んでよいかのう?」
「あちしのことは何とでも呼びなさいな、コンちゃん」
こうしてフウチョウのフウ子が仲間になったのじゃった。
「早速ですが、この国の加護について聞きたいのですが」
ルナが尋ねると、フウ子は自慢げにこう言うのじゃ。
「シルフ様の風は世界全体に吹いているけど、加護は選ばれた場所でしか受けられないの。それがこの場所なのよ。この国はシルフ様を敬愛する事で、その加護を受けた場所なの」
「風を愛し、シルフ様の加護を受けとるのじゃな。国が上位神に愛されとるとは凄いのじゃ!」
「外交も上手で食物の要にもなっているそうよ。様々な場所に大量の食物を送っているそうだからね」
それだけ貢献しておるホウジョウ王国を誇りに思っておるのかもしれんのう。
豊作祭もラスト一日、夜には花火が上がるのじゃ。それは野菜や肉などの形をした豊作祭じゃからこその花火じゃった。
「花火は綺麗ですね」
「お主も綺麗じゃよ」
ついつい昔のように、ルナに答えてしまったワシじゃ。
「……」
ルナは黙っておるのじゃ。そして唐突にワシの腕を組んだのじゃった。
「何じゃ?」
「……」
沈黙するルナの方を見ると顔は笑っておるのじゃ。
「ルナ、お主気味が悪いぞい」
ぺしと手を叩くルナじゃ。まったくやれやれじゃ。いつの間にかあの人と重なっておった気がするのじゃ。
ワシはルナの手を握り言ったのじゃ。
「永遠におれなくても最期まで綺麗で可愛く優しいお主でおってくれ」
ルナは手を握り返して言うのじゃ。
「どこまでも永遠に、優しく正しく甘い神様であってくださいね、コン様」
すると横からジーナが割り込んできたのじゃ。
「私はずっとコン様の隣にいるよ!」
「そうじゃな、ワシはもうジーナを失うのは嫌じゃよ」
誰を失っても嫌じゃ。じゃが敵は殺すしかない時も多くなってきたのじゃ。
我儘じゃな。世界をもっと優しい世界にしたいのじゃ。魔王が生まれんような世界にのう。それは無理な話じゃがのう。
色々な人がこの世界にもおるのじゃ。悪い奴らもおるのじゃ。それらとは戦わねばならんのじゃ。
花火を見ながらぼんやりそんな事を考えておると、最後の花火が上がるのじゃ。
それは三つのハートの花火じゃった。
ふとグーシャの方を見るとジーザスと手を繋いでおったのじゃ。そしてジーザスはアカミの手を握っておったのじゃ。
ワシは微笑み、花火が終わり帰る人々に流されんように皆で集まり、もう一度祭りの露店で食べる様子を見ながら心を休めたのじゃ。
やがて豊作祭が終わり片付けをする中にあの女の子を見つけたのじゃ。
「手伝いますよ」
あの女の子の両親に許可を貰い、重いものをスライムやシーフに持たせていくグーシャじゃ。
「ありがとうございます。もしよければ店の料理を食べていきませんか?」
どんだけ食うんじゃと思ったワシじゃった。
たんまり食べるルナ達じゃった。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ




