第172話「戦争を止めた英雄」
イガコウガ帝国とホウオウ帝国との戦争は終わりに向かうのじゃ。
ホウオウ帝国に帰る途中、戦線の後方で待機しとるホウオウ帝国側の兵達のところに行くのじゃ。
「おお! よく戻った! どうやら上手くいったようだな。まだ緊張状態は解けてないがね」
そうじゃろうな。すぐには難しいのじゃ。じゃが徐々に変わっていくじゃろう。
ワシらは兵を残し、兵長と共にホウオウ帝国へと戻ったのじゃった。
するとゲンブ街の入口にある人が立っていたのじゃ。
「ホウオウ様!?」
「よくぞ帰ったのう。既に使いの者が私に手紙を届けてきて、蛇神の意思を伝え聞いておる。よくやってくれた」
兵長がキョロキョロ辺りを見渡すのじゃ。
「ホウオウ様がいらっしゃるのか?」
「はい。禰宜がいないのが辛いところですね」
「私も意固地にならず禰宜をとるべきかのう? まぁ今はそれはいい、一旦屋敷に来ておくれ。話したいことがあるのじゃ」
勅命書の巻物を持って通してもらうと、帝都にてホウオウ様の屋敷に着くのじゃった。
そして案内役の子に飲み物を渡されたルナ達は寛いだのじゃった。
やがてホウオウ様が新たな巻物に何かを書き記し案内役の人に飛ばしたのじゃ。
受け取った案内役の人は慌てて部屋から出ていったのじゃった。
「何なんじゃ? 何かあるのかのう?」
「いやのう。狐の神よ、名を狐依コンと言うのだそうじゃな? そして、ルナ、狐依ジーナ、グーシャ、ジーザス、アカミの六名を、戦争を止めた英雄として讃えようと思ってな」
「ええ……? まだ戦争が完全に止まったわけではないじゃろう?」
「いいや、蛇依ジャンから停戦協定の申し出と、戦争を終わらせる合同会議の提案があったのじゃ。
そして事の成り行きに邪神教があり、その対策もしていきたいとのう。その全ての功績は狐依コンにあるとあったからのう」
ホウオウ様はニヤニヤしておったのじゃ。そうして宴の準備が始まったのじゃった。
「わぁぁぁ! 凄い! 美味しそう!」
グーシャが運ばれてくる料理を見ながら喜ぶのじゃ。
「ウチ、手伝ってくるね」
アカミは厨房に消えていくのじゃ。
ジーザスはさりげなくグーシャの手を取るのじゃ。隣を確保しとるあたり、中々やるのう。
「当然コン様の隣は私です」
「私もだよ」
ルナとジーナがワシの隣に来るのじゃ。ツバメ様が料理を運んでくるのじゃ。
「いくらでも食べていいですからね」
ツバメ様はニッコリ笑って料理を置いていくのじゃ。
「いただきます!」
ワシらはどんちゃん騒ぎの中食事を楽しむのじゃった。
「我らの劇を見ていけよ!」
「芸も楽しめよ!」
「笑え笑えよ、その憂いも苦しみも吹き飛ばしてみせよう!」
屋敷内の皆が、ワシらとホウオウ様を楽しませようと一斉に色々し出すのじゃ。
ワシはその様子が可笑しくて、盛大に笑ったのじゃった。
この国も世界も日本とは違う、それでもどこかで何かが繋がっているのかもしれんと、そう思うのじゃった。
ふとワシの手をルナが握るのじゃ。ワシがルナの方を見るとワシの方を見つめるのじゃ。
「どうしたのじゃ?」
「いえ、なにも」
「じゃあ何でワシの方見つめとるのじゃ?」
「別に」
「教えておくれよのう。ワシのできる範囲で何でも叶えるからのう」
するとルナは目を瞑り唇を突き出すのじゃ。やれやれじゃのう。
そっと唇を重ねると、首に手を回してきて抱きつくルナじゃ。
「なんだか久しぶりな気がします」
「狡いよ、ルナ! コン様、私も……」
「あー! あたしもあたしも!」
「ウチも!」
ええい! まとめてこいなのじゃ!
「グーシャ、僕ともして欲しい……」
ジーザスも言えるようになってきたのう!
キスして回るワシに皆が抱きしめてくるのじゃ。そしてルナが言うのじゃ。
「コン様、ずっと一緒ですよ」
「うむ、命続く限り、ずっと一緒じゃ」
「きっと何度でもいいます。何度でも」
「構わんよ、いつでも言うておくれよのう」
そしてパレードが始まったのじゃった。ホウオウ様はワシの姿をなるべく出し続けられないか言うたのじゃ。
「ホウオウ様よ、あんまりワシの巫女に無理は言わないでおくれよのう」
「そうじゃな。すまぬ」
「いえ、やります! コン様の存在をもっと知らしめるために!」
ルナは張り切るのじゃが、ワシは心配じゃった。
「おおおお! この方がホウオウ様とこの帝国を救ってくださった神様か!」
人々が手を振るので、手を振り返すと更にヒートアップするのじゃ。
ワシはルナの方をちらりと見るのじゃが、笑顔でこちらを見てくるルナに何も言えんかったのじゃ。
そしてパレードが終わりホウオウ様の屋敷に帰った時、ルナが倒れたのじゃ。ぐったりするまで疲れることはよくあったが、今回は熱もあるようじゃった。
部屋を借りて寝かせるワシはアカミに言って氷を用意してもらうように言うのじゃ。
「すまん、私が無理を言うたばかりに……」
「構わんぞい。ワシも許したのじゃからのう。それよりお主は仕事があるじゃろう? ワシらはルナの看病をするので必要な物があったら言うのでのう」
ホウオウ様は頭を下げて出ていくのじゃ。ルナを寝かせたワシは隣に寝転び抱き寄せるのじゃ。
「コン様?」
赤い顔で苦しそうなルナがワシを見つめてくるのじゃ。
ワシは氷を落とさんように頭を撫でてやり、ただただ、隣にいてあげたのじゃった。
熱を出したルナの隣にいてあげるワシじゃった。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




