第17話「盗賊」
盗賊の足を洗わせるのじゃ。
ワシらがもう大丈夫そうじゃと寝静まった二日目の晩。ワシは念の為寝てなかったので気付けたのじゃ。
「こいつら魔物の上で寝てやがる。珍しいガキ共だな」
怪しさ抜群、明らかに盗人の格好をした四人組が忍び足でやってきたのじゃ。
「ジーナ! ジーナ起きるのじゃ! 敵襲じゃ!」
「う……ん?」
ジーナは目を覚まし起きて状況を確認したのじゃ。
「誰?」
「やばっ、起きやがった!」
「関係ねぇ! ガキ共攫うぞ!」
「む? 悪い人……こないで!」
ジーナは四匹のスライムで対抗したのじゃ。
「このガキ、スライムを操りやがる!」
「これは高く売れそうねぇ!」
これはまずいのじゃ。スライムは兵達でも対抗できた魔物じゃ。当然人が倒せない魔物ではないのじゃ。
ジーナは必死にスライムに命じておるようじゃったが、明らかに相手は戦闘に慣れた大人なのじゃ。
狡猾にスライムを削っていきスライムの核を破壊したのじゃ。
ワシは何とかできんかと刀を振り回してみるが無理だったのじゃ。
じゃが思いついたので盗賊の頭に触れてみたのじゃ。
「やはり! 悪しき頭には触れられるのう」
何故刀が通らんかはわかったのじゃ。ワシは流石に頭を狙えん。
体は悪くないので触れられんのじゃ。
ならばワシの選択肢は二つ。頭を切り付けるか、頭を柔らかくするか。
ワシは後者を選んだのじゃ。
「この悪しき頭をこね回して、優しくしてやるのじゃ!」
ワシはジーナに盗賊の体を固定できぬか聞いたのじゃ。
「やってみる!」
スライムをやられた分の追加でもう一匹召喚し、盗賊達の足元に突撃させるジーナ。
「こ、この! こいつめ! おまえら、このスライムを引き剥がすぞ!」
四人の足を止めたジーナに感謝し、急いで盗賊達の頭をこね回したのじゃ。
「ほれほれ、何故こんな悪いことをするのじゃ? お主の良心を復活せよ」
まずは一人の頭をこね回す。そやつはボーッとしだしたのじゃ。
そしてワシがポンポンと頭を叩いて背中を叩くと、前のめりに転びかけた後泣き出したのじゃ。
「お、俺なんでこんなことしてたんだ……!」
「はぁ? 何言ってんだ、お前?」
盗賊達は驚いて改心した盗賊の人を見とったのじゃ。
ワシは次に紅一点の女性盗賊の頭をこね回したのじゃ。
優しく背中を押すとまたしても泣き始めたのじゃ。
「こんなことして私が馬鹿だった……!」
「くっ、何か知らんが攻撃を受けてるらしい! 急いで抜け出すぞ!」
そんな事をリーダーの人物が言うとる間にワシはもう一人の頭をこね回して背中を押したのじゃ。
「家に帰って父ちゃんに謝りたい……!」
家族がおるものでも盗賊になるのじゃのう。きっと貧しさからじゃろうのう。
「ちぃ! だが俺は負けんぞ!」
ワシは盗賊のリーダーの後ろに行き、こね回そうとしたのじゃ。
「か、硬いのう! やはり一筋縄ではいかんというわけか……!」
硬さで言えば誰よりも硬かったのじゃ。そして冷たかったのじゃ。
きっと殺しも沢山してきたのじゃろう。こやつを更生させるのは難しいのじゃ。
盗賊のリーダー相手に空いたスライム三匹で完全に拘束したジーナ。
「参った。降参だ。もう襲わないから見逃してくれ」
リーダーは両手を挙げる。ワシもこれ以上こね回すこともできん。リーダーの頭は今のワシでは柔らかくできんのじゃ。
「使えねえ奴らだぜ」
リーダーは拘束を解かれた後、イー街の方へ走っていったのじゃった。
他の三人は武装を解除して土下座してきたのじゃ。
「なんで盗賊になんかなったの?」
ジーナが三人に聞いたのじゃ。
「お金がなくて……学もないから良い仕事に就けなくて……ヤケになってる所をリーダーに拾われたんだ」
三人とも似たような境遇じゃった。ジーナは三人に盗賊から足を洗うことを言ったのじゃ。
じゃが生きていくには金がいるのじゃ。職がいるのじゃ。
一度盗賊という職に就いた三人が他の職に就くのは難しい。犯罪者じゃからのう。
じゃが粘りよく、ひたむきに頑張れば報われるはずじゃ。
一度失った信用を取り戻すのは難しいのじゃができない事はないじゃろう。
あとは根性じゃ。ここでルナが起きてきたのじゃ。
「うるさいですねぇ……何なんですか? ってうわぁ! 誰ですか!? その人たち!」
ルナに説明したのじゃ。
「なんで私を起こさないんですか! 事情はわかりました。神力でコン様を見せましょう」
ワシの姿が見えるようになると三人は驚いておったのじゃ。そして平伏して謝罪を述べてきたのじゃ。
「顔を上げい! ワシからお主らに誠実さと根性のおまじないをしてやるのじゃ。ほれ、そこに並んで立つのじゃ!」
三人がビシッと並んで立つと、ワシの行動を待っとったのじゃ。
「頑張るのじゃぞ」
ルナの神力とワシの神力の集まった肩ポンポンじゃ。三人にしてやると、嬉しそうにはしゃぎ回る元盗賊の三人じゃった。
実際それが何の役に立つのかはわからんのじゃが、きっと神の加護がついとるはずなのじゃ。
三人は護衛を申し出てくれたので、ワシとルナは休んで、ジーナに任せたのじゃった。
いい人たちだったのじゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




