第165話「鳥依ホウオウ様」
ホウオウ帝国帝王様に会うのじゃ!
ワシらは翌日、シェイさんの案内でとある人物に会ったのじゃった。その人はホウオウ帝国の重鎮のようで、ワシらの話を聞くと、是非帝王様に会っていただきたいと言ったのじゃった。
ワシらはセイリュウ街から西に向かい、帝国の中心部である帝都に向かったのじゃ。帝都ツイバミという街では、重鎮しか入れないようじゃった。
シェイさんと別れを告げ、重鎮の人に連れられて中に入ると更に豪勢な街並みが広がっておったのじゃ。綺麗な着物を着た男女が闊歩する、そんな街じゃ。
ワシらはただついてくるように言われるのじゃが色んなものに目移りするのを止められんのじゃ。
それを咳払いで窘める重鎮さんじゃが、それでもワシらはその光り輝く宝石のような街に釘付けじゃった。
ここまで綺麗に着飾ったりするのには何百年もかかりそうじゃ。整備もせねばならんしのう。
「あの、帝王様ってどんな方なんですか?」
ルナが尋ねるのじゃ。すると重鎮の人は首を横に振るのじゃ。
「私は見た事がない。見た事があるのは一部の者のみとされている」
そうして大きな御屋敷についたのじゃった。重鎮の人は案内役の人に言伝して、ワシらにこう伝えたのじゃ。
「この案内役の人について中に入るといい。私は中にここであなた方を待っている」
そうして別れ、案内役の人についていくのじゃ。中も赤く色とりどりの装飾が飾られ豪華なのじゃ。やがてある部屋に連れていかれたのじゃ。
そこに座り御簾の奥にいる鳳凰様と謁見するのじゃ。
サラサラと言う音がして御簾が開くのじゃ。そこにおったのは紛れもなく……鳥の神じゃった。
「やはり神かのう」
「コン様は気づいていたんですか?」
ワシは人差し指を口元に当て、綺麗な着物姿の鳳凰様の言葉を待つのじゃ。
「私は鳥依ホウオウじゃ。狐の神二人に巫女、元魔王の下位の神か、不思議な組み合わせよのう。それで、この国には何をしにまいったのじゃ」
ホウオウ様は正座をしてワシらの返答を待っておるのじゃ。
「ワシらはこの国とこの国の北にある国の戦争を何とかしたいと思っておる。上位神インドラ様から雷の魔道具を何とかするように言われておるのじゃ」
すると何やら考えるように悩み始めたホウオウ様じゃ。
案内役の人は何が何かわからん状態じゃが、ホウオウ様がそこにおるのは知っとるようじゃ。
ホウオウ様は立ち上がり、羽を抜いて墨に付け、特殊な紙に何かを書き始めたのじゃ。
「これが私の能力じゃ」
紙はふわりとホウオウ様の黒主によって飛び上がり案内役の人の元にたどり着いたのじゃ。
それを読み、礼をした案内役の人は、ワシらにもお辞儀をして部屋を出ていったのじゃ。
「禰宜を介さずに人に伝える術があるのかのう?」
「限定的じゃがな。しかし狐の神よ、大先輩に対し、敬語の一つも言えんとは何事じゃ?」
「……すみませんのじゃ。ワシもこの喋りを崩せませんのじゃ。ある程度は許してくださると助かりますのじゃ」
ワシがそう頭を下げると、カッカッカッと盛大に笑うホウオウ様じゃ。
「冗談じゃ。それより私に聞きたいことはないのかのう?」
「お主がここに帝国を創ったのはいつ頃じゃ?」
「千年は前じゃのう。当時は禰宜と共に国づくりのために動いて苦労しておったのじゃ。ワールド様とゴッド様は知っとるな?」
ワシが頷くとホウオウ様は遠くを見つめながら言うのじゃ。
「二段階目の場で、この世界で何をしたいかを問われた時、国を創りたいと言ったら盛大に笑われてのう」
それで維持でも創ってやろうと心に決めたらしいのじゃ。それからは元々戦いで領地が曖昧なこの辺りを統治するようになっていったそうじゃ。
「何故国を創りたかったんじゃ?」
「女王に憧れたからと言ったら笑うかのう?」
ふふっと笑ってしまったワシは口を噤むのじゃ。
「そうやって小さい国から始めた帝国も大きくなっていったのじゃが、私が表立って政策を決めているとある問題に直面したのじゃ」
煌びやかになっていき豊かになっていくホウオウ帝国を羨ましく思った北側の国イガコウガ帝国という名の新国家が喧嘩をふっかけてきたそうじゃ。
「最初は小競り合いで済んだのじゃが、段々相手も力をつけてきて争いに発展していったのじゃ。それが更に加速したのが、雷の魔道具が使われ始めてからだったのじゃよ」
どうやらホウオウ様も困っとったらしいのじゃ。ワシは更に聞くのじゃ。
「イガコウガ帝国の帝王は蛇依ジャン様ではないかのう?」
「知っておるのかのう?」
「いや、忍者に名を吐かせたのじゃ」
ワシの言葉を聞いて、ワシの力を信用したホウオウ様はこくりと頷き、情報を教えてくれたのじゃ。
「あの蛇女神は、邪神ではないのじゃが、私に闘争心を燃やしておるせいで、躍起になって何でもかんでもに手を出そうとしておる。イガコウガを忍者の帝国にしたのも元を正せば、私に勝つためじゃ」
「古くからおるのかのう?」
「いや、割と新しい神じゃよ。お主よりは大分先輩じゃろうがのう」
どうやらホウオウ様のこの国を羨ましく思い、自分でも国を創って勝とうとしたそうじゃ。
ホウオウ様は、ジャン様は邪神ではないというのじゃが、ワシにしてみれば私利私欲じゃよ。
それにワシには懸念があったのじゃ。
「邪神教という組織を知らんかのう?」
ホウオウ様は眉をひそめたのじゃ。どうやら知っておるようじゃ。
「ワシはジャン様が邪神教に唆されておるか、加入しておると思っておる。じゃから……」
「確かに有り得る話じゃ、じゃが国の長は殺してはならぬ」
「別に殺すとは言うてはおらんじゃろ」
「ではどうするのじゃ?」
ワシは白主を出したのじゃ。
「今からワシがこれをお主に当てる、実体験してみよのう」
ワシは白主をホウオウ様に当てたのじゃ。
「……なるほどのう。私も頭がスッキリしたわい」
ホウオウ様はワシらに頭を下げたのじゃ。
「あの蛇神の魂を柔らかくしてやっておくれ」
今ならまだ救える、そう信じてワシは頷くのじゃった。
鳥依ホウオウ様に蛇依ジャン様を救うように頼まれるのじゃ!
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