第15話「経験」
大人な街も出るのじゃ。
これからディー街に行くことにしたワシらじゃったが、ルナから一つの提案がされたのじゃ。
「魔王の支配から離れたゴブリン退治で経験を積みましょう」
確かにゴブリンの魔王はどんな人間なのかもわからんのじゃ。
ワシもまだ刀の肩慣らしをしたいところじゃった。勿論ゴブリンの魔王と和解出来たらそれでよいのじゃが、戦闘になる可能性がほぼ確定なのじゃ。
ゴブリンとの戦いに慣れるに越したことはないのじゃ。
シー街で街道の依頼を受けて、ゴブリン退治に向かったのじゃった。
昼間は障害物のない道で休憩し、夜になってゴブリンが襲ってきたところを一網打尽にしていったのじゃ。
段々ゴブリンとの戦いも慣れてきたのじゃ。簡単にゴブリンを殺せるようになったところで夜が明けたのじゃった。
「かなり経験を積めましたね」
「もうゴブリン怖くない」
「油断はいかんぞい。じゃがこの調子ならゴブリンの魔王も何とかなるじゃろう」
ワシらは一旦シー街へと戻り宿で休んだのじゃ。そのまま一徹して、夜まで食事を楽しんだのじゃった。
そして宿で一泊した後、準備を整えてディー街へと向かうのじゃ。
情報によるとディー街へは二日かかるそうなのじゃ。
ディー街からイー街へは四日かかるそうなのでディー街では入念な準備が必要じゃろうのう。
とにかくディー街へと向かうことにしたのじゃ。生憎ディー街へ向かう依頼はなかったので、そのまま向かうことにしたのじゃった。
「スライムでの移動って楽でいいですけど、運動不足になりそうですね」
スライムに乗っての移動も慣れてきたのじゃ。ルナがまるで太りそうな発言を言ったのじゃ。
「既にぷにぷにしておったりしてのう?」
「し、してないですよ!」
ルナは慌てるが怪しいのじゃ。ご飯も沢山食べとるしのう。
ジーナはふふふと笑ってスライムを伸ばして寝転んだのじゃ。
「このまま休憩せずにスライムで進めば一日で着くんじゃないかな?」
確かにその通りなのじゃ。スライムの扱いはジーナに任せて、ワシらはディー街へと最短距離で行ったのじゃった。
そしてディー街へ着いた頃には日が沈んでおった。
なんとかゴブリンに遭遇せんと来れたのじゃ。
門番さんに身分証を見せて中に入ったのじゃ。ディー街は夜の街も賑やかでキラキラしておったのじゃ。
ルナとジーナは目を光らせてあちこちを見とったのじゃ。
これ以上はいかん、大人の時間じゃ。
「ルナ、ジーナ、興味があるのはわかるのじゃが、今は宿で体を休めるのが先じゃ」
ワシはルナとジーナの手を握り、宿へと向かったのじゃ。
これ以上大人の世界を見せてはいかん。
「別にやらしい雰囲気では無いですよ? コン様」
「じゃが酒を提供する店が多いようじゃ。ルナはエー町から出たことがないのではないかのう?」
「確かにそうですが、教えてもらったので知識くらいは……」
「それではダメじゃ。例えばあの男を見てみるのじゃ」
ワシはホストらしき男を指さしたのじゃ。
「カッコイイ人ですよね」
「あれは女子を思いのままにするためにそういう格好をしとるのじゃ」
「偏見ではないですか?」
「昼になればわかるわい」
客引きの説明などしとる暇もないのじゃ。
比較的大人しい家屋が見えてきたので宿を探し一泊したのじゃった。
そして朝になり朝食を食べてから昨日の場所に行ってみたのじゃ。
「静かなもんじゃろう?」
「夜と全然違うね」
「こんなにも違うんですね……」
ディー街は夜の街のようじゃな。これは早々に旅立たんといかんのじゃ。ギルドに寄って依頼がないか見ていると変な依頼を見つけたのじゃ。
「イー街までの護衛の依頼ですけど、依頼日が十日前ですね。誰も受けなかったんでしょうか?」
「実はこの依頼、かなり難しいんですよ」
役員さんから話を聞くと、イー街までの子供十人の護衛任務じゃった。それもまとめての依頼らしいのじゃ。
別々なら他の人でも受けられるのじゃ。じゃがどうしても十人一緒じゃないと駄目らしいのじゃ。
馬車を借りても子供十人を相手にしながら四日旅するのはきついのじゃ。
ゴブリン退治の依頼がないとはいえゴブリンが出ない保証はない。危険度の高い依頼と言えるのじゃ。
「受けようよ」
ジーナが言ったのじゃ。
「そうじゃな。困っとるようじゃし、いいじゃろう」
ワシらはこの依頼を受けることにしたのじゃ。この街の小さな教会にいくと十人の元気な子供たちが笑顔で走り回っとったのじゃ。
神父さんにルナが話を通すと事情を説明されたのじゃ。
「実はこの子供たちは呪いを受けたせいで離れられないそうなんです」
一定の距離から離れられない十人の子供たち、何故イー街に行くのかと聞くと、呪いを解いてくれる呪術師がおるらしいのじゃ。
「ちなみにルナには解けんのかのう?」
「やってみますね」
ルナが子供たちに触れていく。じゃがルナは首を横に振ったのじゃ。
「私には無理ですね。コン様はどうですか?」
ワシにも恐らく無理じゃろうと思っておった。何故ならワシには最初から子供たちが白い鎖に繋がれとるように見えたからじゃ。
あれをちぎるのは今のワシには至難の業じゃろうのう。
「ちなみにどうしてこの子達は呪われてるんですか?」
「正確には聖なる力なんです。ゴブリンの魔王によって殺された両親が残した聖なる魔力がこの子達を守る代わりに、縛り付けてしまったんです」
神父さんの話によるとまたしてもゴブリンの魔王が関わっとるのじゃった。
呪い、魔法の類じゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




