第14話「新たな街で」
魔王を救う旅じゃ。ゴブリンの魔王も救わねばならんのじゃ。
ワシらは何とかシー街に辿り着いたのじゃ。その後報酬を商人のおじさんから受け取り、シー街のギルドに向かったのじゃった。
身分証にはちゃんと依頼成功が刻まれとったらしく、ルナとジーナはハイタッチしたのじゃった。
ジーナはワシともハイタッチしようとしたのじゃ。じゃからワシは屈んでやり、ハイタッチしたのじゃ。
ルナもうずうずしとったのでルナに向けて手を挙げたのじゃ。
ワシとルナはハイタッチして成功を祝ったのじゃった。
護衛任務は思ったより大変じゃった。特に夜は魔物が多くなるのか、人を襲いやすくなるのか、危険なのじゃ。
この周辺にはゴブリンしかおらんようじゃったから恐らくゴブリンの魔王によって生み出されたゴブリンが街道を牛耳っとるんじゃろう。
街の中には兵達がおるから、街の中なら安全なようじゃのう。ワシらはまだ時間があるので情報収集にかかったのじゃ。
まずはゴブリンの目撃情報じゃ。ビー街ではシー街への街道で依頼があったのじゃ。
じゃがおかしいのじゃ? シー街はビー街から東に進んだ方向にあるのじゃ。
ゴブリンの魔王のせいで滅んだエフ街は西にあるのじゃ。完全に反対方向にあるのじゃ。
そう簡単に反対方面へ行けるものかのう? 街の検閲もあるのじゃ。
「元々身分証のある人が魔王になったのかもしれません」
なるほどじゃ。そして魔王であることを隠して紛れとるというわけじゃな。
「目撃情報はシー街への街道だけではないようじゃのう」
ディー街への街道にもゴブリン退治の依頼はあるのじゃ。
そしてイー街への街道にはなかったのじゃ。つまり……。
「シー街、ディー街。このどちらかにいますね」
「ワシはディー街ではないと思うのじゃ」
「どうしてですか?」
ワシの持論では、ディー街におったらイー街の街道にもおるはずなのじゃ。森などを通じて入り込むはずじゃからのう。
「うーん、じゃあこの街にいるということになりますね」
「私ちょっと不思議に思ってる」
ここでジーナが疑問に思ってることを言ったのじゃ。
「どうしてゴブリンさんは魔王さんの言うことを聞いてないんだろう?」
さて、ここで前に言うた通りゴブリンは魔王の支配から離れたゴブリンじゃったのじゃ。
それはルナから教えてもらったのじゃ。
「魔物は魔王から距離を置きすぎると支配から離れるんです。だからジーナのスライムも離れすぎると支配から外れてしまいます」
完全な魔物となったゴブリンは人を襲うようになるらしいのう。知能もあがってくるのじゃ。
「わかった」
謎が解けたと言った風にジーナが呟いたのじゃ。
「ゴブリンの魔王さんはイー街にいる」
ワシとルナはぽかんと口を開けて呆けたのじゃった。ジーナは話聞いとったのかのう?
「話は聞いてたよ。でも考えてみて? 距離がある方が支配から離れやすいの」
ルナは何か考えとるようじゃった。ワシ馬鹿じゃからようわからんのじゃ。
「つまりこういう事ですね? イー街にいるゴブリンの魔王から離れたゴブリンたちがディー街とシー街の街道にいるということですね」
ビー街からイー街に行くには急な山道でかなり時間がかかるらしいのじゃ。
つまり正式な手順を追うならシー街からディー街へ行き、イー街へと行くのが楽らしいのじゃ。
「そうと決まれば次はディー街を目指すのじゃのう」
「とりあえず宿をとって休みましょう」
ワシらは大きなベッド一つの部屋をとって、テーブルで食事をしたのじゃった。
といってもワシは食べんのじゃがな。
「はい、アーン」
ワシに向けてルナが神力を込めてゆで卵を差し出してきたのじゃ。
「むぅ」
まさかアーンをされるとはのう。じゃが美味しそうじゃし頂いたのじゃ。
「私もアーンしたい……」
ジーナが俯いとったのじゃ。じゃがこればかりは仕方ないのじゃ。
「スライムが食べられたらいいんですけどね〜」
ルナが何気ない一言を放ったのじゃが、これがいかんかった。
「そっか!」
ジーナは一体のスライムを出して、言ったのじゃ。
「コン様、このスライムを食べてあげてください」
何を言っておるのじゃこの子は?
「いや、流石にそれは無理じゃよ……」
そんな得体もしれんものを食べろと言われて食べるやつは胃腸が最強なのじゃ。
じゃがジーナが見つめてくるのじゃ。止めるのじゃ、そんな目で見るななのじゃ。
「これならどうかな?」
スライムが大きく膨らんだのじゃ。それを握ったジーナはちぎったのじゃった。
「はい、アーン」
マジで言うとるのかのう? ワシこれ食べないとダメなのかのう?
「食べても大丈夫だと思いますよ」
魔物は魔力の塊じゃ。神力と同じ力じゃから食べられるとのこと。
ワシは思い切って、ジーナの手の上のスライムの破片にかぶりついたのじゃ。
食感はゼリーのようじゃった。味は酸っぱいのじゃ。なんじゃろうのう、不味くはないのじゃが、美味しいのかもわからんのじゃ。
「美味しい?」
「微妙じゃ……」
「そっか……」
落ち込むジーナの頭を撫でてやるワシは言ったのじゃ。
「ワシのためにしてくれてありがとうなのじゃ」
そうして風呂に入った後、三人でくっついて寝たのじゃった。
あーん、ここで出てるのじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




