第137話「アカミの父の形見」
アカミの父の形見を探すのじゃ。
ワシらは青依神社から北へ進み東へと向かったのじゃ。水晶が示す方向は合っとるようじゃから後はジーザスの魔犬とアカミの狼の頼りじゃ。
アカミの父と母は交互に髪飾りを交換しとったらしく、匂いが残っとるようじゃ。
水晶の方向を進みながら行くと方角が北になるのじゃ。
「ここから先は匂いを辿るぞい」
ジーザスとアカミは魔犬と狼で匂いを探すのじゃ。森の中を進むのじゃが、全然ないのじゃ。
ワシも役に立たんから二人に任せて探すのじゃ。
「水晶の指す方向はまだ北ですね」
暫く北へ進むと洞窟があったのじゃ。
「匂いは中ですね」
ジーザスが言うのじゃ。アカミは自分一人で行こうとしたのじゃが、ワシが止めたのじゃ。
「これこれ、ワシらも行くぞい」
「でも危険だよ、コン様達を私のために危険な目には……」
「ワシらは一蓮托生じゃ。お主のためにだけじゃなく、ワシらのためにしとるんじゃよ」
アカミはルナやジーナ、グーシャ、ジーザスを見たのじゃ。皆優しげな目でアカミを見ておったのじゃ。そしてルナとジーナはアカミの手を握って言ったのじゃ。
「皆で行きましょう」
「皆となら大丈夫」
洞窟の中に入っていくと暗いのじゃ。灯りになるような物は持っとらん、いつも野宿は焚き木でやるしのう。
木の棒でも拾ってくるかと思った時、ふと思いついたのじゃ。
「赤コンよ、火に化けておくれ」
(よっしゃ、燃えるぜ! こーんこん)
ワシの手に乗った赤コンが火に化けて明かりが付いたのじゃ。
「凄いね! コン様!」
グーシャが前に出て言うのじゃ。シーフは夜目も利くから前に出たのじゃ。
アカミとジーザスも前に出るのじゃ。匂いを辿っていくと洞窟の湖に出たのじゃ。
そこまでいっても見つからんかったのじゃ。
「もういいよ、諦めようよ」
アカミが涙目でそういうのじゃが、ワシは頭を撫でながら言うのじゃ。
「まぁ、そういうでない。ここからはワシとジーナの出番じゃ」
ワシらは呼吸をしとるわけではないのじゃ。水の中もへっちゃらじゃ。
ジーナを連れて行こうとすると、ルナが言うのじゃ。
「あまり遠くには行かないでくださいね」
恐らく動物たちがこの場所まで運んでしまったんじゃろう。ワシとジーナは歩いていき、そのまま着水するのじゃ。
潜るというよりそのまま歩いて湖の底へと入っていくのじゃ。
「手分けして探そう、コン様」
「そうじゃな。気をつけるんじゃぞ」
ワシらは二手に分かれて探すのじゃ。中々ないのう……と思った時じゃった。
「きゃあ!」
ジーナの悲鳴が聞こえるのじゃ! ワシは聞こえた先に行ってみたのじゃ。
ジーナに向かって大きなサメが向かってきとるのじゃ。待て待て、ここ海ではないぞい、何故サメじゃ?
「我の領域に攻め込むとはいい度胸だな、狐の神、二人よ」
「ワシらは探し物をしてここへ辿り着いたんじゃ。髪飾りを知らんかのう?」
「そういうことなら水の神、水依ウンディーネ様に尋ねるといい。背中に乗れ、連れて行ってやろう」
ワシらは背中に乗り連れて行かれるのじゃ。
(コン様離れすぎてます。どうしたんですか?)
ジーナはワシの方を見とる。どうやらジーナにも伝わっとるらしいのじゃ。
(心配ない。今から水依ウンディーネ様のところに行くところじゃ)
「着いたぞ」
暫くサメに乗っておると水中の祠に着いたのじゃ。ワシがどうしたらいいか迷っておると、中心の水晶が喋りだしたのじゃ。
『よく来ましたね。狐依コン、狐依ジーナ。探し物は祠の裏です。恐らく水の精が私への奉納に持ってきたのでしょう』
祠の裏を見ると沢山の金銀財宝が奉られておったのじゃ。ワシはその中からアカミの父の形見を見つけたのじゃが、触れんのじゃ。しまったのじゃ、ここまで考えておらんかったわい。
神力で出来ておらねば触れんのじゃ。神力の塊というわけでもない形見に苦戦しておると、水の泡に包まれたのじゃ。
『私が運びましょう。あなた達も運びますよ』
「すまんのう、ウンディーネ様よ。助かったのじゃ! いつかまた会おうなのじゃ」
『楽しみにしてます。では』
水流が溢れ出しワシらを元いた場所へと送り流すのじゃ。
水面から顔を出すとワシに抱きついてくるルナじゃ。
「離れすぎて神力のリンクが途切れるかと思いましたよ! 心配したんですからね!」
珍しくワシのために涙を流しとるルナじゃ。心配させてしもうたのう。
ワシはルナの頭を撫でながら謝るのじゃ。
「心配かけてすまんのじゃ。じゃが目的の物はゲットしてきたぞい」
ジーナが指さしとるところにアカミの形見があるのじゃ。アカミは拾って、ワシに感謝するのじゃ。
「コン様ぁぁぁ! ジーナ様ぁぁぁ!」
アカミは泣きじゃくって、ワシに抱きつくのじゃ。
「この恩は一生忘れません! ウチの全力を尽くして返します!」
「よいよい、さぁこれで心残りはないのう? 次へと進むぞい」
ワシらは南へ下り道へ入ったのじゃ。そしてクア村へと向かったのじゃった。
見つかってよかったのじゃ。いつかまた水依ウンディーネ様にも会えるといいのう!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




