第130話「バクト街」
バクト街に向かうのじゃ!
ワシらはバクト街に向けてスライムに乗ったのじゃ。するとグーシャが言ったのじゃ。
「南東に行く道がないよ?」
クア村の出入口は北か、入ってきた西からしかないのじゃ。
南か東へ行く道がないのは困るのう。役員さんの情報では、西に出て草むら掻き分けるしかないらしいのじゃ。
そこでジーザスの魔犬と、アカミの狼が先行して進み、街を探すのじゃ。
草むらはグーシャのシーフが切っていくのじゃ。ワシらはスライムに乗っとるから足も汚れんのじゃよ。
やがて沼が見えてきたのじゃ。沼の魔物は厄介でドロドロじゃ。泥を被せてきて汚れるのじゃ。
沼を抜けてから、一旦シャワータイムじゃ。交代で水浴びをして、勿論ワシは見張り役じゃ。
森の中で泥を落とすとスライムの上に乗っかって魔物の対処を交代でしながら寝たのじゃった。
次の日、いよいよバクト街に着いたのじゃった。ギルドはないからどうしたモノかと思っておると、案内役のような者が現れたのじゃ。
「バクト街は初めてですかね? 何かしたい事がありますか?」
「この街を管理している神様に会わせてください」
ルナは大胆にも直球じゃ。それでいいのかのう?
「狸依ポン様に会わせろとは、これまた。だけど会わせられないね。たとえあんたが巫女だとして、傍に神様がいたとしても」
ニヤリと笑った男の頭をワシはこね回し、ワシはルナに再度尋ねるように言うのじゃ。
「いや、言えないんだよ……本当に。言ったら俺が殺される。どうしても知りたいなら中央局に行きな」
仕方なくワシらは中央局と呼ばれる場所へ向かうのじゃ。
そこはカジノのような場所がいくつもある所の中央地で、ギルドの役員のようになにか受付をしとる人がおるのじゃ。
「どうかなさいましたか?」
「この街を管理している神様に会わせてください」
「なるほど、でしたらこの街で稼いでください。この街の通貨が沢山あれば、会えますよ」
なるほどのう。それなら稼ぐしかないようじゃな。
「どうしましょう? 賭け事は得意ではないんですが」
「大丈夫じゃ。いくらかコインにだけしておくれ」
百枚程のコインにしてもらうとルナにスロットに行ってもらうのじゃ。
「他のじゃとイカサマを疑われるからのう」
と言っても今からするのはイカサマのようなものじゃがのう。
ルナに座ってもらうとジーザスとグーシャとアカミも後ろから覗くのじゃ。
「私やった事ないですよ?」
ワシはジーナに、ルナの背中に触れて神力を流すように言うのじゃ。
ワシとジーナの幸運の神力を受けたルナがスロットをプレイすると、当たったり外れたりして五十回くらい続けた後、大当たりが当たったのじゃ。
そこからガンガンとコインが出てきて大儲けじゃ。更にワシとジーナはルナに神力を流すのじゃ。
ルナがワシらに流せるならワシらからも流せるじゃろうと思っての事じゃった。
ワシとジーナは今日のワシとジーナの運をルナに分け与えたのじゃ。
そうする事でルナの運が高まり、スロットで大儲けしまくったのじゃった。
ルナの席だけ死ぬほどコインが出てくるのにイカサマを疑う人が多かったが、『不正』はしとらんからのう。ただ運が良くなっただけじゃ。
そしてルナは呼び出されたのじゃ。コインを換金しようとしたら止められて「管理しますので」と支配人室に連れていかれたワシらは、支配人の男に何が目的かを尋ねられたのじゃ。
「私はずっと、この街を管理している神様に会いたいと言っているんですが」
「わかりました。ご案内します」
そうして案内された先に厳重な扉があり、開かれた先に狸の神様がおったのじゃ。
「ようきたのう、狐の神よ」
ふてぶてしく座る狸依ポンにワシは名乗り、ワシの目的を言ったのじゃ。
「ミカ村から攫われた人間か、リストはあるか?」
ルナが見せようとするのじゃが、ワシが止めるのじゃ。
「勝手に処分したりせんよのう?」
するとポン様は笑ってこう言うのじゃ。
「信用できんわなぁ? だが名前がわからんと、こちらも改名させた人間のリストは出せん。何か信用出来るものがあればいいが、儂にはそんなものは……」
「では一発白主を当てさせてくれんかのう? それでわかるのでのう」
「ポン様を殺す気ですか?」
巫女が前に出て手を横に広げるのじゃ。
「一発白主を当てただけでは死なんじゃろ?」
「一発だけならいいぞ。それでわかるんだな?」
ポン様の言葉に頷いたワシは白主を走らせるのじゃ。
ポン様に当たるとポヨヨンと魂が跳ねるのじゃ。大丈夫じゃ、魂は柔らかい。
「お主の言葉に悪意はないのじゃな?」
「勿論だ、ないぞ」
ルナに目配せしたワシは、リストを巫女さんに渡させるのじゃ。
「私はルナです。名前を聞いてもいいですか?」
「サーミです」
サーミさんは情報を手にして、別の紙にリストを作り、それを水晶に染み込ませたのじゃ。
すると水晶に何かが浮かび上がったようで、それを紙に書いていき、ルナに渡すのじゃ。
「その名前でどこかのギルドに捜索依頼を出したらわかるでしょう」
「この国ではどんな事をしとるのじゃ?」
ワシが尋ねるとポン様は笑うのじゃ。
「お尋ね者の改名さ。それを悪用されたようだな」
お尋ね者の改名じゃと? 何故そんなことをしとるのじゃろう。
「これは口外しないように頼むぞ。儂はお尋ね者だった前世があるからお尋ね者の気持ちがわかるのだ。だから彼らが更生して生きられるような道を作りたいとワールド様とゴッド様に頼んだのだ。儂を軽蔑するか?」
ワシは首を横に振り言うのじゃ。
「ワシはこの世界に来て旅をして、魔王を助けたいと思って行動しておるのじゃ。悲しい運命を辿る魔王たちを助ける旅をしておるのじゃ、ここにおる三人は、元魔王じゃ」
グーシャとジーザスとアカミを前に出すのじゃ。
「魔王を救う旅か、中々大変そうだな。儂に出来ることはなさそうだが、何かして欲しいことはあるか?」
「とりあえず稼いだ金を換金させておくれよのう」
笑ったポン様はすぐにサーミさんに対応させたのじゃった。
ポン様にも事情があるようじゃった。悪い神様ではないのじゃ。
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