第118話「我慢できない」
やれやれ、2回目じゃ。
第118話「我慢できない」
ワシらはウィド街の青空教室で勉強するのじゃが、グーシャの様子が変なのじゃ。眠らんと授業を聞いておるのかと思ったらワシの方を眺めておるのじゃ。
授業が終わってワシのところに来たグーシャは恥ずかしがりながらこう言うのじゃ。
「コン様……夜の夢だけじゃ我慢できない」
ほれ見ろじゃ。じゃがワシはグーシャに言うのじゃ。
「お主の体は死んでおって、性的快感は覚えられんはずじゃろ。夢まで待ちなさいなのじゃ」
頭を撫でてやり、宥めるのじゃ。グーシャはもう味わえない事を夢で味わってしまったのじゃ。
ちなみに痛覚や味覚がないわけではないらしいので補足じゃ。神力が体を動かしとるのじゃ。じゃが性的快感は生殖機能的要素じゃ。
神に生殖機能はないから性的快感が入ってこんようになるのが下位の神、特に体が死んで生き返った者の体じゃ。
じゃから自分でしても快感を得られん。神に不必要だからじゃ。
食事などは体が衰えない為に必要なので食べて食感や味を感じるんじゃ。なかなかややこしいのう。
とにかく性的快感はグーシャは味わえんから夢の中だけで味わうしかないのじゃ。
「こんな事なら最初から味わうんじゃなかった」
「フェニ子に頼むかのう?」
「ううん、もう覚えちゃったら、またしたくなる。慣れるまでは昼間が……だけど」
ワシの手を繋ぎながら歩くグーシャは、ワシに尋ねるのじゃ。
「コン様は、どうしてそんなに性に強いの?」
「ワシだってしたいと思うことは多々あるぞい」
「そうなの? じゃあなんで?」
「なんでじゃろうなぁ。お主らがまだ子供なのもあるかもしれんのう」
「テンカだったらしたいってこと?」
「そうも言えんのう。ただ……」
「ただ?」
「ワシには最愛の妻がおったから、例えどれだけ女遊びをしても、他の女を抱くことはせんかったのじゃ。それが原因かもしれんのう」
グーシャは前世のワシが想像つかんようじゃった。夢では今世でのワシに慰められたからだそうじゃ。
ワシがどんな人間だったかを聞かれてワシははぐらかしたわい。ワシは大きなことは残せん癖に、大きな夢を持つ人間じゃった。
不幸な人を幸せにしたかったのじゃ。前世ではワシはそれが出来んかった。ワシは馬鹿じゃったからのう。
じゃが、それでも今に繋がっておる。この子らを幸せにするのがワシの夢じゃ。
救える魔王を救い、倒さねばならん魔王を倒し、この世界から理不尽を減らして魔王が生まれるのを防ぐのじゃ。
理想は思わねば叶わんからのう。出来るか出来ないかではなく「やる」ただそれだけじゃ。
全部を解決は出来んじゃろう。それでも沢山の魔王と、人々を救うことはワシの願いじゃ。
ワシは世界を救うぞい。
グーシャの手を強く握りしめ、抱きしめてキスしたのじゃ。
「夢のワシもいいが、現実のワシも忘れないでおくれよ」
「うん、わかってる」
顔を埋めてワシを抱き返すグーシャは、フッと笑顔になったのじゃ。
そんな中、ジーザスはフェニ子に何かを聞いておったわい。何か真剣に話をしているジーザスはフェニ子にアドバイスを受けとったようじゃ。
そしてジーザスはワシとグーシャの方に来て言うのじゃ。
「もし神仙郷の近くに来たら、グーシャと一緒に入りたいんだ」
グーシャはあまりの事に驚いておったわい。ワシは最後まで話を聞こうと思ったのじゃ。
「まだ先の話だけど、神仙郷がある場所まで来たらグーシャと一緒に入って子供を作りたい。僕は真剣だよ」
「やだ! あたしコン様と別れたくない! それにあたしには罪がある! まだ許されてなんか……」
「罪はよい。お主がどうしたいかで決めなさいなのじゃ」
「フェニ子さんに聞いたらその罪も神仙郷で償えるそうだよ。だから問題はコン様と別れることだよね」
「やだよ! あたしは……」
「夢で会えるじゃろ?」
ワシの言葉にグーシャは驚いて顔をしかめたのじゃ。
「現実のワシも大切にして欲しいと言うたがのう。それはまずお主の幸せあっての事じゃ。まだ時間はある、ゆっくり考えなさいなのじゃ」
「……」
ジーザスはグーシャの手を握る。ワシら三人はちゃんと絆で繋がっておる。
「私達も忘れてはいけませんよ」
ルナがワシの手を握り、ルナの手をジーナが握るのじゃ。
ワシら五人はどこまで行けるわからん旅路を離れるまで進むのじゃろう。
「どんなに離れてもワシらは仲間じゃ。それを忘れるなよのう」
グーシャは顔を上げて前を見たのじゃ。まだその時ではないが、その時がきたらきっとグーシャとジーザスは行くだろう、そう思ったのじゃった。
ワシはグーシャの手を離し抱き寄せて、言ったのじゃ。
「グーシャ、ワシがお主と会った時言ったことを覚えておるか?」
「家族になるってこと?」
「そうじゃ。ワシらは仲間であり家族じゃ。じゃから辛くなったらいつでも相談していいんじゃ」
グーシャは悩みながら打ち明けたのじゃ。
「あたしはジーザスと子供を作りたい、でもコン様やジーナ、ルナと別れたくない。どうしたらいいの?」
ワシは考えながら言ったのじゃ。
「優先順位があるじゃろう? その中でお主はどれが一番じゃ?」
「……」
グーシャはポロポロと涙を流し言うのじゃ。
「あたしは子供を作りたい! ジーザスが望んでくれるなら一緒に子供を作りたい! それがパパとママの願いだったから! 元気な孫をって! でもでもでも……コン様と別れたくないの!」
駄々をこねるように泣くグーシャの頭を撫でてやり、こう言うのじゃ。
「巡り巡って出会えた縁を離れるのは辛いのじゃ。でもいつか答えが出るからのう。その時まで目一杯、ワシらの旅を楽しもうなのじゃ」
グーシャは目を擦り、頷くのじゃ。
まだまだ旅は続くからのう。じゃが別れは徐々に近づいてくるのじゃった。
いつかまた別れをじゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




