第116話「正しい方向へ」
火山の問題を何とかするぞい!
ワシは男の頭の中を正しい方向に向かうように念じてこね回した。人を助けたい、救いたいと思うようにじゃ。
男は生き残りのようで争いの跡があったのじゃ。冒険者たちも必死に止めようとしたんじゃろうが、男の仲間達に敗北したようじゃ。
つまりそれだけの規模の組織だったということじゃ。
「あ、ああ、ああああ! 俺はなんで世界征服なんて事を……」
幼稚園児かのう? ワシは呆れつつ、男の頭をこねるのじゃ。男の手足は黒主の蛇で縛っておるからのう。
「コン、あたいがあなたを見えるようにするわ! それで情報を聞き出しなさい!」
フェニ子がワシを見えるようにするのじゃ。
「ああ……! 神様……俺をお許しください……」
「駄目じゃ、許さん。罪を償うのじゃ」
「俺はどうしたら……?」
「これから殺した人の分だけ善行積めばよい。人の人生を狂わせたお主は自分の全てをかけて人のために尽くすのじゃ」
男は崩れ落ちて、泣き始めたのじゃ。そしてワシに向かって手を合わせて懺悔し始めたのじゃ。
「俺は火神教という宗教の教祖様に、火の神を何があっても復活させるように言われて仲間と共にここまでしました。これは間違いだったのでしょうか?」
ワシはフェニ子の方を向いて聞くのじゃ。
「火の神は復活させるべきなのかのう?」
「あのね、こんな事してもイフリート様は顕現されないわよ? あなた完全に騙されてるわ」
「あの……この鳥は?」
「火の神イフリートの使者、フェニックスじゃ。ワシはこの子に頼まれてきたのじゃ。イフリート様から情報を得て、火山の様子を見に来たのじゃ」
それを聞いた男はワナワナと震え始めたのじゃ。騙されてこんな罪を犯してしまった。だがこれが正しいと盲信していたのも事実。
自分の愚かさを悔いた男は、険しい目つきになり、状況を整理し始めたのじゃ。
「今、この粉を火口に流すように言われて流していたんです」
「これは多分火を活性化させる魔法の粉ね。それがマグマに溜まっているのよ。困ったことになったわね」
いつ暴発してもおかしくない状態、そんな状態まで持っていってしまっておったのじゃ。
「何とかならんのか?」
「ふふん、大丈夫よ。ありがとね、コン。あたいがここにいるから問題ないわよ」
フェニ子をここに連れてきたことがまず正解だったようじゃ。
「本当に運がいい馬鹿狐ね。あなたのその運命は世界を変えるかもしれないわ。期待しているわよ? 頑張りなさい! じゃあ行くわね」
「!? 何をするつもりじゃ! フェニ子!」
フェニ子は飛び立ち、一気に火口へと飛び込んだのじゃ。今にも噴火しそうな火山はどんどん静かになって行き、マグマがなくなっていくのじゃ。そして、地面のように固まっていき、蓋を閉じたのじゃった。
「フェニ子……」
「大丈夫だよ、コン様。見て!」
ジーナが指を指すのじゃ。固まった火口からフェニックスが飛び出してくるのじゃ!
「コン、ジーナ、乗りなさい」
フェニ子の声じゃが威厳があるのじゃ。キャラが変わったのう?
「綺麗」
ジーナが感嘆の声をあげるのじゃ。フェニ子は男を足で掴み、ワシらに背に乗るのじゃ。
そうしてギルドまで戻ってきたのじゃった。
「もしかしてフェニ子さんですか!?」
「凄い! 綺麗! かっこいい!」
「素敵です……」
ルナとグーシャとジーザスが迎えてくれるのじゃ。
「お世話になりました。コン、ジーナ、ありがとうございます。おかげで火山の爆発は免れました」
自然な噴火はイフリート様の導きじゃが、意味もなく暴発させるつもりはないそうじゃ。フェニ子はワシらに男の処分を任せると言うのじゃ。
「フェニ子、お主はどうするのじゃ?」
フェニ子はフェニックスとなっておる。つまりヒヨコから成鳥へとなっておるのじゃ。
その姿は大きく、めちゃくちゃ目立つのじゃ。
「あたいはこのまま、この火山の守り神として、火山のマグマに潜みこのアズマ半島を守ります」
「ではここでお別れじゃのう。短い間じゃったが楽しかったぞい」
「代わりと言っては何ですが、あたいの子供を預けていきます」
そう言うとフェニ子はケツを向けてプリッと卵を産んだのじゃ。
「生暖かいのう。割っても良いかのう?」
「どうぞご自由に、あたいはもう行きます。ではさようなら。その子をよろしくね、コン、ジーナ」
ワシらは手を振り、飛び立つフェニ子と別れを告げたのじゃ。
ワシはフェニ子が遠く旅立つ中、卵に思いっきりサンドイッチ狐依パンチをかましてみるのじゃ。割れんのう……今はまだその時ではないのかもしれんわい。
「ちょっと貸してみて」
ジーナが卵を奪い取るのじゃ。
「えい!」
ジーナ版サンドイッチ狐依パンチじゃ。するとヒビが割れて中から赤いヒヨコのような鳥が飛び出てくるのじゃ。
「いったーーーーーーい! 加減ってものを知らないの? この馬鹿女狐!」
「なんか女狐って表現嫌だな」
そんなジーナは笑っとるのじゃ。ワシらは皆笑い転げたのじゃ。結局別れておらんではないか、のう? そうじゃろ? また旅をしてくれるのではないかのう?
「のう、フェニ子バージョンツーよ、またワシらと旅をしてくれんかのう?」
「バージョンツーは余計よ。ふふふ、あたいと別れるのが嫌なのね。ま、いいわ。ただし馬鹿狐、あんたの肩には乗らないわ。適合したのは馬鹿女狐の方だからね」
「女狐って言わないで」
苦笑するジーナの肩に乗り、何かをボソボソ呟いておるのじゃ。何じゃ? 何を言うておる?
「焼き鳥にしますよ? フェニ子さん」
ルナが何故か怒っとるのじゃ。なるほど、ジーナの考えを読んだんじゃな。
するとパタパタと飛んだフェニ子はルナの肩に乗り囁くのじゃ。
「そ、そんなんじゃないです! え? で、でも……」
その後、グーシャとジーザスの肩にも乗り、囁くのじゃ。ワシのとこには来んのじゃ。何なんじゃ。
皆して、ワシの方を向いて顔を赤らめておったのじゃった。
フェニ子、何かを呟く。何なのじゃろうな、一体。
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