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狼のいるコンビニ

作者: 土屋

これは、私が真夏のジメジメとした熱帯夜、田舎の田んぼ道を一人で歩いていた時の出来事です。


その日私は、実家に帰省して、5分くらい離れた近所のコンビニにアイスを買いに行きました。店内には、私と店員の若い女性が一人。人が少ないと感じながらも、深夜ですから無理もないですし、おそらく裏に店長さんがいるのだろう。そんなことを考えながら、目当てのものを幾つか取り、レジの女性にお会計を頼んだところ、どうも私に対するお姉さんの様子がおかしいことに気が付きました。


というのも、女性は、私と目をいっこうに合わせようとしません。はじめは私も人と目を合わせて喋るのが苦手なので、少し親近感を感じ始めていたのですが、、、違いました。彼女は、人見知りとか、目を合わせるのが苦手とかではなかったのです。


彼女は目線の逸らし方に違和感がありました。普通、というか私の場合は相手の目より下の胸元や眉間をみることで何とかごまかしています。でも、彼女のそれは、余りにもおかしいのです。


彼女は、私と一瞬目が合ったと思ったら、私の頭上や、肩、腕など私の体をなぞるように見るのです。汚れがついているのか、髪の癖が変になっているのかなどの不安は、人の体をじろじろみる失礼な視線だ、と徐々に憤りに近い感情に変わっていきました。


じろじろ、じろじろとあまりにもいきすぎたその不躾な視線はもはや隠す気がないように感じたので、つい聞いてしまったのです。


「私、何か変ですか?」


私の声にビクッと反応した彼女は、我を取り戻したかのように、


「す、すみません!!]


彼女はパッ、と手元に視線を戻して作業に集中しようとしているようにみえました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

用が済んだので、帰ろうとお釣りを手に取り、出口に向かおうとしたら、


「あのっ、、」


とどこか申し訳なさそうな、弱弱しいような心配そうな様子で彼女は声をかけきたのです、こう一言。


「帰り道、絶対に転ばないよう気を付けてください」


ありがとうございました、又のご来店をお待ちしております。丁寧なお辞儀と気遣い、彼女の様子が不可解に感じる違和感を後目に私は、足元にあるわずかな扉の段差にうっかり足を取られてしまいました。おっとっとと1歩、2歩耐えようとしますがバランスを崩して地面にへたり。


ガラスの自動ドアの向こう側の彼女は、一部始終をみていただろう。足元のお留守な私の滑稽な姿に対して笑うだろうか、危なっかしさに呆れたか、それとも心配が勝ったのか。転ばないよう気を付けろと言った直後に転ばれては世話がない、一体どのような反応をしているのか、気になる答えを確かめるように私は彼女の方を見ました。どれも違っていました。


あーあ、という諦観が彼女の顔には浮かんでいたのです。


彼女の表情の答えを知りたい、こんど訪れたときに聞けるだろうか。


彼女の口から2度と答えを知ることはできないとも知らず、しかしすぐに身をもって味わい知るのだと、溶けかけのアイスが地面に広がってゆく感触を、私は朧気な意識の中、確かに感じたのでした。


終わり。

土屋です。小説投稿は初めてです。ホラーとか怪談が好きなので、これからちょっとずつ投稿していけたらなと思います。拙筆ですが、何卒宜しくお願い致します。

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