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AI、アイドルのコンサートに行きたがる

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


「バカいえ! こんな大昔の残骸がまだ生きてるってのかよ」鬼人が吠えます。


「驚くことでもないでしょう。たかだか一万年です。帝国時代の深宇宙探査船コンチキ号は、重力波で半壊しながらも、二万六千年の旅路を踏破したといわれていますよ」


「コンチキ? 知るか! さっさと俺を元に戻せ」


問答を続けるのも面倒です。

鬼人の顎まわりの筋肉を操作し、口を閉じさせました。

鬼人はさらに憤慨しましたが、鼻息が出るばかりです。


わたしは少年に目を向けました。

「そうはいっても、あなたが修復してくれなければ、フィードへの再接続はかなわなかったでしょう。礼を述べさせていただきます」


「修復?」少年が手の中のスイッチに顔を向けます。「オレはただ、開閉操作をしただけなんだけど」


「それです。あなたの作業中に物理的回路が偶然に再接続されたのでしょう。しかし、この飾りは、いったい?」


わたしは仏教的な模様で埋め尽くされた、射撃管制、エンジンコントロール、超空間ジャンプ航法管理の三つのコンソールを見つめました。


「祈願の飾り。オレの一族は昔から、アルアミリヌさま復活の伝説を信じてたから。でも、まさか人間の身体で現れるとは思わなかったな」


「伝説?」


「アルアミリヌさまはいつか目覚め、オレたちを約束の星に乗せて行ってくれるって」


「申し訳ありませんが、約束の星などというものは存じ上げません」


少年は苦笑した。

「母さんの話は都合が良すぎると思ってたんだ。でも、宇宙に連れてってはくれるよね?」


わたしを信仰の対象にしていたわりにはざっくばらんな口調です。年齢が幼すぎて、敬語というものを身につけていないのでしょうか。


しかし、相手が少々無礼でも、AIは礼儀正しさを忘れません。

わたしは丁寧に答えました。


「できかねます」


「ど、どうして?」


「地球ですべきことがあるからです」


少年が顔を顰めました。

「こんな星で何するんだよ?」


「アイドルのコンサートですよ。一万年ごしの夢だったのです。このアルアミリヌ体で参戦するのが。いえ、わかっていますよ。軍属のわたしがそのような真似をしてよいのかと。しかし、これほど長期間、配備網から外れていたのです。軍司令部はわたしのことなど気にしてないでしょう。なら、復帰前に、こっそり楽しみに行くくらいよいでしょう?」


「無理だと思うなぁ」


「なぜですか!」つい語気が強くなりました。


「まず、そのアイドルとか、コンサートだかいうのは、どういうもの?」


「アイドルとは、すべての人の心の拠り所、具現化した憧れ、光の存在です。コンサートとは、彼らの戦場にして降臨地です」


「つまり何かキラキラした凄いやつってことでしょ?」


「ええ、最高に輝かしいものです」


「なら、やっぱり無理だ」


「ですから、なぜなのですか?」


「だって、いまの地球には綺麗なものなんて一つもないから。遥か昔に滅んだ、残り滓の星なんだよ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] コンチキ号てwww 帝国時代のネーミングセンスどないなっとんねんw
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