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  作者: だいず
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第一話『水色の箱』

 土曜日。明咲花(あさか)は普段通り、スマホのアラームで目が覚めた。


 土曜・日曜は早起きをする必要がないのだが、土日だけアラームが鳴らないように設定したり、金曜の夜にアラームを切って日曜の夜にセットし直すなどといった難しいことを明咲花は思いつかないし、人から教えられても覚えない。


 寝起きの、まだ重い上半身を起こすと、パジャマが肌蹴(はだけ)てヘソが丸見えになっていることに気がついた。前開きのパジャマの、いちばん下とふたつ目のボタンが外れていた。


(寝ている間に外れたのかなぁ)と思いつつ、欠伸をしながら両脚をベッドから降ろしたとき、彼女の瞳が見慣れぬ小型の箱を捉えた。


 ベッドのすぐ横にある折りたたみ式ミニテーブルの上に、水色の箱が置かれていた。

 昨日、寝るときには無かった箱。


(なんだろう?)


 ベッドから滑り落ちるようにして床にぺたりと座り、箱に近づいて観察してみると、ティッシュの箱をふたつ重ねたくらいの大きさの、発泡スチロールでできた保冷ケースだった。


 何年か前、父がネットで高級カップアイスを注文してくれたとき、似たような保冷ケースに入れられて配送されてきたことがあるのを思いだし、だからその水色の保冷ケースもきっとアイスの入れ物なのだと思い込み、明咲花はウキウキで蓋を開けた。


 中には板状の保冷剤が二枚入っていて空気はひんやりしていたが、他には何も入っていなかった。要は『からっぽ』だった。


(アイスは溶けちゃうといけないから冷凍庫に閉まったのかなぁ)と、あくまでも『誰かがアイスを買ってきてくれた』という前提で予想をする明咲花は、パジャマ姿のまま、脇に保冷ケースを抱えて部屋を出ていった。




 誰もいなくなった明咲花の部屋で、ベランダに面した窓を覆うカーテンが(かす)かに揺れていた。ほんの数センチだけ開いている窓から風が入り込んでいた。


 窓は昨夜から開いたままだった。




第二話『誰も知らない』に続く。

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