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「私は君の実家が天候不良で困窮していることを知って、助けたいと思った。

それで王太子に相談したら、あれよあれよという間に、王命で私と君の政略結婚が決まってしまった。」

「はい。」

助けたい?私の実家を?なぜ?ちょっとよく意味が分からない。


「私と君は10歳以上離れているし、若い君を縛り付けたくなかった。

だから白い結婚にして、君の実家が回復したら君を解放してあげようと思っていたんだ。」

「はい。」

そんなことを考えていたなんて、全然知らなかった。



「ごめん。」

「それは、何に対しての謝罪なのですか?」


「婚約した当時は君も子供だったし、大丈夫だと思っていた。

しかし、結婚式で大人になった君の姿を見たとき、私は君に・・・あ、いや、何でもない。」

「え?」


「手放さなければならないという気持ちと、手放したくないという気持ちがせめぎ合って、君に辛く当たってしまった。」

「いえ、そんなことありません。あの、手紙の内容は・・・。」

手放したくない?私にそんな価値ありましたっけ?


「あ、あれは、嘘じゃない。君を揶揄ったわけでも、ない。全部本音、だ。」


「リーヴェス様、私はもうずっと前からあなたの事をお慕いしています。」

何だろう、いつもの冷たくて素っ気ない旦那様はどこかへいってしまったようだ。


「嘘だ・・・」

「嘘じゃないです。でも、結婚してもずっと素っ気ない態度で寂しくて辛かったです。」

「・・・すまない。」

リーヴェス様が話してくれたので、私も溜め込んでいたことを話そうと思います。



「私、結婚して間もない頃に、リーヴェス様がお部屋で手紙を読んで目を細めている姿を見たんです。

それで、他に恋人がいて、その人と本当は結婚したかったんじゃないかと思って…

本命の彼女を邸に連れてくるのなら、彼女を本宅に、私は離れにでも住もうと思って、離れを片付けたんです。」


「え?他に彼女などいたことはない。ごめん。そんなことを考えていたなんて全然気付かなかった。」

旦那様は向かいのソファーから移動して、私の隣に座ってそう言った。


「そうですか。あと・・・」

「まだあるのか?いいよ、聞こう、全部。」

諦めたような顔で寂しそうに微笑んで、旦那様は私の手を取った。



「子供が出来ないことで色々噂されているのはご存知ですよね?」

「あぁ。だからプリーメルが変な令嬢や夫人方にちょっかいをかけられないために、夜会では離れないようにしていたんだが。」

仲睦まじい夫婦を演じていたんじゃないの?


「そのような理由だったのですね。でも、馬車に戻るとため息をついておられたので、仲睦まじい夫婦を演じるのが苦痛だったのかと・・・。」

「いや、さ、寂しかっただけだ。」

寂しさでため息?


「えっとそれで、子供が出来ないことを心配した両親に病院に連れていかれそうになりました。」

「まさかそんなことになっていたとは。辛い思いをさせてすまなかった。

傷つけたくないと、守りたいと思っていたのに・・・」

旦那様はガックリと項垂れた。


「もう流石に嫌われたか・・・」

いつかの公園のベンチで涙を浮かべて項垂れる青年を思い出した。



手紙だと本音を書けるのに、本人を前にすると何も出来なくなってしまう不器用な旦那様。

愛しさが込み上げ、幼い頃のように旦那様の頭を撫でた。



「泣かないで。キャンディは持ってないけど、私の愛をあげる。ピエロさんも私に愛をくれるんでしょ?」

「あげる。全部プリーメルにあげるよ。」



私は横抱きにされて、夫婦の寝室へ繋がる扉を開けてベッドに下ろされた。



「いいの?」

私の首の横に手を付き、不安に揺れる目で私を見下ろす旦那様。


「あなたはまだ不安なの?私はもう不安なんて無いわ。あなたのことを愛していますから。」

ずっと支えてくれたピエロさん。私の心の英雄で、ちょっと不器用な私の旦那様。



旦那様は私の額に頬に髪に、キスを落とし、結婚式以来の口にも、それは初めて、触れるだけではないキスだった。


月明かりが窓から差し込む夜。

その月明かりに照らされた2人の影がゆっくり重なっていった。



「プリーメル、好きだよ。愛してる。」

旦那様の瞳にはキラリと光るものがあふれて、やっぱり旦那様は泣き虫ピエロだった。



閲覧ありがとうございます。これで完結です。


最後まで読んで下さりありがとうございました。

別の作品も読んでいただけると嬉しいです。

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