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久々の夜会だ。

彼女に触れていると落ち着くな。

いつでもこうして触れていられればいいのに。


ダンスを踊る姿も可愛い。可憐に咲いた花のように笑う彼女に、俺の口角も自然と上がる。


ダメだ。彼女のことをうっかり愛してしまいそうになる。

いつか手放すことになるのに。


苦しい。



夜になってベッドに入る時は、隣で彼女が寝ているかと思うと、本当にドキドキする。

眠れないのでスリープの魔法を自分にかけて寝ている。


このまま君の心を奪って俺のものにしてしまいたい。

でもダメだ。そんなことをして彼女を傷つけてしまうくらいなら、俺が苦しい方がいい。



キャンディと泣き虫ピエロとしてやり取りする手紙には本音を書ける。

なぜなら、それは夢物語で現実にはなり得ないと、私も彼女も分かっているから。


手紙の最後には、君が愛おしい。君を思うと胸が苦しい。

と書いて出した。

手紙の中だけの戯言だ。許してくれ。


それから手紙の最後には毎回、同じように私の彼女への想いを書いている。


君のことが好きだ。君に触れたい。

これは全部私の本音だ。叶わないと分かっている夢。







旦那様は早起きだ。

私が起きる頃にはもうベッドは空になっていて、食堂で本を読みながら待っている。たまに本ではなく書類なども読んでいるが、私よりは早起きだ。

いつも私が席に着いてから食事をとる。

そのために旦那様は待っていてくれるのだ。

妻として、受け入れようとしてくれているんだろうか?


でも目が合うと、すぐに逸らされてしまうし、旦那様との距離感はなかなか難しい。


旦那様は最近、玄関でお見送りと、お出迎えをすると、表情が優しくなる気がする。

ほんの少しなので、もしかしたら私の気のせいかもしれないけど。



泣き虫ピエロさんから届く最近の手紙は、私に向けて愛を囁いてくる。

今まではそんなことなかったのに、どうして変わってしまったのだろう。


好きだと、愛していると言われれば嬉しい。旦那様は私のことを愛してないので、そんなことは言ってくれないし、愛しいと書かれた言葉に靡いてしまいそうになる。



旦那様がいるのに、他の男性にうつつを抜かすなど、侯爵夫人として醜聞が過ぎる。

自戒しなければ。


ピエロさんの言葉に答えてしまったらダメだと、いつも通り、日常の小さな幸せを書いて送っている。

何も反応がない私のことをピエロさんはどう考えているのだろう・・・。






またピエロさんから手紙が届いた。

いつも通りの日常の内容の最後に、君が愛おしすぎて苦しい、君が許してくれるなら君を今すぐにでも連れ去りたい。愛している。


そう書かれていた。



ドクンと心臓が強く鼓動した。

ダメ。ピエロさんの元へ行ってはダメ。

はっきりとお断りした方が良いのだろうか、でも、私の我儘だけど、ピエロさんはずっと私の支えだったから、失うのが怖い。



私は、いつものように手紙を書いて、最後に、ピエロさんの気持ちはとても嬉しいです。ピエロさんはずっと私の支えでした。ピエロさんを失いたくはないけれど、どうしたら良いのか分からないのです。

と書いて手紙を出した。



正直、ピエロさんの反応が怖い。

でもどこかで、本当に私を連れ去ってくれたら良いのに、とも思っている自分がいる。


恐ろしいことだわ。





閲覧ありがとうございます。

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