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第5話 決闘当日

 翌日の放課後。

 僕たちは約束通り『魔法練習場跡地』に向かっていた。


 メンバーは昨日も一緒だったクリスとジャックの他に、サリアさんとセシリアさんにも来てもらった。

 先輩たちも関係者だからね。


「わざわざ来て頂きありがとうございます」

「本当だよ全く。外は眩しいし汚いし最悪だよ。早く帰りたい」


 いつも時計塔に引きこもっているサリアさんは不快そうだ。

 早く決闘を終わらせて帰らせてあげよう。


「――――来たか」


 魔法練習場跡地に到着すると、既にヴォルガさんがいた。

 既に練習場の中心に立っていて、いつでも始められますって感じだ。


 練習場の周囲には何人か生徒が観戦しに来ている。ヴォルガさんと一緒にいた生徒たちももちろんいる。

 他の人たちはどこからか噂を聞きつけてやって来たのかな?

 騒ぎになるからと決闘の情報は秘密になっていたはずだ。


「おまたせしました」

「ああ、昨日から待ちわびていたぞ。早く始めよう」


 見せつけるように牙を剥き、ヴォルガさんは笑う。

 覚悟は決まっていたはずなのに、ドキドキして来た。果たして僕はどれくらい戦えるんだろう。


「なにビビってんのよ。カルスなら大丈夫よ」


 そう言ってクリスは僕の背中を叩き、鼓舞してくれた。


「……そうだね。ありがとう」

「思いっきりやって来なさい。もし負けても私が優しく慰めてあげるわ」

「それは嬉しいね。わざと負けるのも良さそうだ」

「ったく、馬鹿なこと言ってないでさっさと行ってきなさい」


 笑いながらそう言ってくれるクリス。

 すると次にセシリアさんが僕のもとにやってくる。


「……あまり無理をなさらないで下さいね」


 その表情は不安げだ。

 優しい人だから心配してくれてるんだろう。


「はい。光魔法の力、見せつけてきますよ」


 そう力強く言うと、セシリアさんは手に光を宿して僕の額にかざしてくる。


「汝に光の加護があらんことを」


 すると光が体の中に入ってきて……全身がぽかぽかと暖かくなるのを感じた。

 心なしか不安な気持ちが薄くなった気がする。


「これは聖王国に伝わる戦士を送り出す儀式です。生きて再び帰ってこれるように、そんな願いがこめられています」

「そんな凄いものを……ありがとうございます。絶対に勝って帰ってきます」


 そう言って僕は練習場中央に足を運ぶ。

 後ろからはジャックやみんなの声援が聞こえる。もう不安な気持ちなんてどこにもなかった。


「どうやら覚悟は決まったみたいだな」

「はい。心強い仲間がいますので」


 屋敷を出て、一人で行くと息巻いていた僕だけど今は少し考え方が変わった。

 結局人は一人では生きられない。

 だからお世話になってくれた人に恩を返せる人になるんだ。僕を支え、応援してくれる人に応えるためにもこの決闘は勝たなくちゃいけない。


「二人とも、準備はいいか?」


 そう話しかけてきたのは、今回の決闘の審判兼見届人の先生だ。

 名前は確かゴドベルさん。元冒険者の武闘派な先生だ。


「はい、いつでも大丈夫です」

「俺もだ」


 僕たちの返事を聞いたゴドベル先生は持っていた物を僕たちに渡してくる。

 これは……石を彫って作った人形、かな?


「それは魔道具『写身人形』。魔力を流した者とリンクし、その者が傷つく度に人形も壊れていく。この人形が壊れた時点で決着とし、それ以上の戦闘行為を禁じる」

「へえ、こんな物があるんですね」


 初めて知った。

 これがあれば確かに勝敗がつけやすいね。


「昔は降参か審判の判断で決着をつけていたが、最近発明されたこの魔道具のお陰で死者も減った。壊れた時点で決着を宣言するのですぐに戦闘行為をやめるように」

「分かりました。ところでこの人形って僕が回復したら人形も直るんですか?」

「たしか直るはずだ。そうか……君は光魔法使いだったな」


 いいことを聞いた。

 回復しても人形が傷ついたままじゃ回復魔法を使う意味がなくなっちゃうからね。

 思う存分使わせてもらおう。


「それでは両者距離を構えて! これより王国決闘法に基づきヴォルガとカルスの決闘を行う、両者相手を尊重し、誇りをかけて死力を尽くすように!」


 僕とヴォルガは無言で構える。

 もう言葉はいらない。後は戦いの中で語ればいい。


「それでは――――始めィッ!」


 こうして僕たちの決闘は幕を開けた。

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