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第5話 兄弟子

「なにカルス、あの人知り合いなの?」

「うん。あの人は師匠の弟子、僕にとって兄弟子みたいな存在なんだ」


 五年前、師匠が魔術協会を抜けるきっかけとなった会長からの伝えを持ってきたのがマクベルさんだ。

 あの後、師匠は僕のせいで協会を抜けた。そのことでマクベルさんからよく思われてなかった時期もあったけど、今では和解している。


 三年前から学園の講師になっていたのは知ってたけど、まさか試験官になっていたとはね。


「えー、君たち推薦組の実力は認められている、よって通常の試験はない。だがこの学園で何を為したいかを教えてほしい。それと本人確認の意味で簡単な魔法の実力を見せてほしい。それによって合否が決まることはないから安心してくれ」


 五人の試験官の中でも、もっとも年長に見える人がそう言う。


 順番はジャックから始まり、僕が最後みたいだ。


「ではジャックくん。君からお願いするよ」

「は、はい!」


 緊張しているのかジャックの声は上ずっている。普段は調子がいいけど、本番は弱いタイプみたいだ。


「えーと、俺……じゃなくて私は、一流の魔法使いになり王国の魔術省に入るために来ました!」


 魔術省とは王国の魔法全般を担当する組織だ。王国直属の組織で、業務は大変だけど給料が良いらしい。その分倍率も高いけど学園を優秀な成績で卒業したら充分狙える範囲内だ。


「そうか、魔術省か。いい目標だね。じゃあ次に魔法を見せてくれないか。この推薦書にあるものが見たいな」

「は、はい! あれですね!」


 ジャックは両手を前に出すと、魔力を練り始める。

 そんなに量は多くないけど、練り方が丁寧だ。たくさん練習したんだろうね。


「ではいきます。土動け(ズズ・ロ)!」


 ジャックが呪文を唱えると手から土の塊が現れて宙に浮く。

 へえ、土魔法か。土魔法は農業が盛んな地域の人がよく使う魔法だ。土を耕したり、土を栄養豊富にしたりと農業に役立つ魔法が多い。


 そんなことを考えているとジャックは驚きの行動に出る。


「からのぉ……木よ生えろ(モル・ロ)!」


 なんと今度は浮いた土の塊から木が生えた!

 どうやらジャックは二つの属性が使える魔法使いみたいだ。これは珍しいね。


 普通精霊は一人の魔法使いに一人しか憑かない。二人以上つくのは稀だ。

 興味津々に見ていると、ジャックは更に僕を驚かせてみせた。


「更に、からの……水よ湧け(オル・ロ)!」


 なんと今度は水を手から出して、木にかけてみせた。

 これは驚いたね……まさか三つの属性を使えるなんて。これなら推薦組に選ばれるのも納得だ。

 試験官の人たちも「ほお……」と驚いている。


 僕はそんな試験官さんたちの目を盗み、小声で相棒・・に話しかける。


「ねえ、セレナ。目を借りたいんだけどいい?」

「ええいいわよ。ただし後でおいしい王都のスイーツを供えること! わかった?」

「わかったよ。全くセレナは甘いものが好きだなあ」


 光の精霊セレナは今も僕の隣にいる。呪いが収まった時は見えなくなるんじゃないかと不安になったけど、そんなことはなかった。

 それはつまり呪いが完全に消えてない証拠にもなっちゃうんだけど、せっかく出来た相棒が見えなくなるのも寂しいし今は気にしてない。


「それじゃ行くわよ、えい」


 セレナはかわいくそう言うと、親指と人差し指で輪っかを作って、それを僕の右目に眼鏡のように被せる。


 すると僕の視界に精霊の姿が映るようになる。

 これが僕が五年間の間に生み出した新たな技、その名も『精霊の指眼鏡(シルフリング)』。僕は自分の目で他の人に憑いている精霊も見れるようになったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法を使っているのだから魔術省よりは魔法省の方がいいんじゃないかと思うのだが
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