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第5話 共同作業

「すごい。シズクって魔法も上手なんだね」

「いえ、そんな大層なものではありませんよ。カルス様でしたらこの程度すぐに出来るようになります」

「そうかなあ」


 シズクの出した氷の花は、芸術品と呼んでもいいほど綺麗だった。

 溶けちゃうのがもったいないくらいだ。


「この花びらが重なってる部分とか、すごい複雑じゃん。こんな繊細な魔法出来る気がしないよ」

「……確かに一からそれを作ろうとすると高度な技術を必要としますでしょうが、私はそのようなことしておりませんよ。私はざっくり『薔薇に似た花を作ろう』と思っただけです」

「へ?」


 それは聞き捨てならない。

 もしかして魔法って、全部自分でやるものじゃないの?


「いや、でも……もしかして」


 師匠は言っていた。

 魔法とは精霊が起こすものだと。


 だったら魔法はある程度精霊に委ねた方がいいのかもしれない。いきなり自分で全部やろうとするからいけないんだ。

 僕と、精霊。二人の息を合わせて魔法を発動するんだ。


「ごめん。次は一緒にやろうね」


 そこにいるはずの精霊にそう話しかけ、僕は再び集中する。


 肩の力を抜け。

 リラックスして……委ねるんだ。


 無駄な力が抜けたおかげか、自分の中に流れる魔力を感じることが出来た。

 これを右手に集中させて……精霊に呼びかける。


ライ


 ぽう、っと淡い光が右手に宿る。

 よし、ここまではオッケーだ。問題はここから。

 

 更に魔力を右手に集中させるんだ。でもその上で力は抜く。

 ぐむむ、難しい。どうしても力んでしまう。


「カルス様……」


 見ればシズクが心配そうに僕のことを見ている。

 思えばシズクにはずっと心配をかけさせてしまっている。本当に申し訳ない。


 もうそんな顔をしてほしくないから、頑張らなくちゃ。

 みんなに「もう心配いらないよ」「僕はもう一人で大丈夫」とそう言えるように。


 強く、なるんだ。

 だから、


光在れ(ライ・ロ)


 精霊よ、力を貸してくれ。


「……っ!」


 次の瞬間感じたのは、魔力がごっそりと抜け落ちる感覚だった。

 体が脱力してクラッとする。気を抜けば意識を失ってしまいそうだ。


 思わず魔力を渡すのを止めてしまいそうになるけど、思いとどまる。ここを乗り越えなくちゃ次はきっとないと思ったからだ。


「好きなだけ持っていきなよ。でもその代わり、力になってもらうよ……!」


 僕は体に残る魔力を限界まで搾り取られる。

 これ以上取られたら危ない、そんなギリギリのラインまで魔力を抜かれ……それは終わった。


 そして息も絶え絶えの状態で前を向くと、そこにはゆらゆらと宙に浮かぶ小さな光の玉があった。


「で、できた……」


 なんて小さくて頼りない光なんだろう。

 でもこれは大きな前進だ。僕は魔法を自分の体の外に出すことが出来るようになったんだ。


「カルス様!」

「おわっ!?」


 魔法を見たシズクはまるで自分のことのように喜び、僕に抱きついてくる。

 するとシズクの大きな胸が僕の顔に覆い被さり、息が出来なくなってしまう。


「もが、もがが」


 なんて幸せな感触……じゃなくて息が出来ない! 

 手足をバタバタと動かすけど、今の魔法で結構体力を使ってしまったので振り解けない。ていうかそれ以前にシズクの腕力が強すぎる。ぎゅむむ……


「やりましたねカルス様! カルス様なら必ずや成し遂げると私は思っていました!」

「シ、シズク、力が強い……」

「へ? あ、すみませんっ!」


 僕の顔が青くなってることに気がつき、シズクは体を離す。

 ふう、なんとか息ができるようになった。


「とにかく、おめでとうございます。これで魔法の特訓も次の段階に進めますね」

「うん、そうだね。でも明日の特訓までには時間があるからもう少し自主練をしようかな。師匠を驚かせたいしね」

「頑張るのも結構ですが、あまり無理しないでくださいね。カルス様は頑張りすぎるところがありますので」

「はは、苦労をかけてごめんね」


 そう謝ると、シズクは小さく笑みを浮かべながら「いいんですよ」と許してくれる。

 本当にシズクは僕にはもったいない、よく出来た人だと再確認したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] どれだけ魔力を持っていかれても魔法を使うのは精霊。 なので今回の場合は例えるなら、定価1円の商品を1万円で売られたような感じと解釈したが合っているんだろうか。
[気になる点] 竜に匹敵する魔力をごっそり持っていかれる理由を事前に提示しておいたほうが
[一言] こ、これがドラゴンに匹敵する魔力を限界までつぎ込んだ光魔法、、、(( ¯• •¯ ))ガクブル
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