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第13話 最悪の邂逅

 カルス、ゴーリィ、そしてエミリア。

 相手の出方を伺っていた三者だったが、その沈黙をエミリアが破る。


「ほう、その子が『特異点』か。くく、確かに良い魔力をしている」


 エミリアは舐め回すようにカルスを眺める。

 カルスは背中がぞわっとし、鳥肌が立つ。


「人並外れた魔力、『竜の器』か……『黒の祝子』か。いずれにしても面白いことになりそうだ」


 エミリアの口から出る謎の言葉にカルスは首を傾げる。深い知識を持つゴーリィですらその意味を理解することはできなかったのだから当然だ。


「いいおもちゃを見つけたじゃないかゴーリィ。お前ひとりで遊ぶなんてズルいぞ?」

「たわけが。この子はおもちゃなどではない。軽い気持ちで手を出すようなら容赦せぬぞ……!」


 ゴーリィは全身から殺気を放ち、容赦なくエミリアに浴びせる。しかし彼はそれを涼しい顔で受け止める。そしてゴーリィを完全に無視し、カルスに話しかける。


「こんにちは少年。お名前は?」


 答えるな。そう大声で言うゴーリィだったが、その声はなぜかカルスに届く前に消えてしまう。

 何度声を出そうとしても音になる前に消えてしまうのだ。


(しまった、魔法で音を消してるのか! これではカルスを止められない!)


 気づいた時にはもう遅い。魔法による妨害だと気づいた時にはもうカルスは口を開いていた。


「僕はカルスと申します。貴方はどなたですか?」

「そうかカルス君か、いい名前だね。私はエミリア・リヒトー。一応魔術協会の会長をしている、よろしくね☆」


 ペロッと舌を出して言うエミリア。

 彼の肩書きを聞いたカルスは戦慄する。そして目の前にいる人物への警戒度をマックスまで高める。


「あなたが師匠を除名したんですね……!」

「おや、だいぶ恨まれてるみたいだね。これはお詫びをしないといけないな……アレグロ、アレを持ってこい!」


 エミリアが大きく声を出すと、馬車からぬうっと長身の男性が現れる。

 赤髪のオールバックが特徴的なその男は手に何やら紙箱の様な物をいくつか持っている。

 いったい何をする気なんだ、と警戒するカルス。しかしその男の放った言葉はそんな空気をぶち壊す物だった。


「会長、手土産はどれにしますか?」


 ずっこけるカルス。

 彼が持っていたのは寄ってきた町々で買った手土産、いわゆる特産品だった。


「ふむ。私はこのクッキーとまんじゅう。それにこの干物も食べたいから渡すな」

「ええ!? でもそうしたら私の分のお土産が何も無くなってしまいますよ! 娘に叱られるー!」

「うっさい、帰りになんか買って我慢しろ」

「うう、帰りに同じの売ってるかな……?」


 涙目でカルスに近づく大男アレグロ。そして『星降る丘のスターダストクッキー☆』と書かれた箱をカルスに渡す。


「せめて美味しく食べて下さーい……」

「はあ、どうも……」


 娘へのお土産を後悔しながらも渡すアレグロ。

 それを見てエミリアはくく、と笑う。

 その間にゴーリィはカルスのもとに近づき、耳打ちする。


「気をつけろカルス、あやつは本物の化物・・じゃ。見た目も歳も立ち振る舞いも全て嘘だと思え」

「わ、わかりました!」


 もう何も情報は漏らさない、そう決意するカルスだったが、次のエミリアの台詞はそんな彼の決意を打ち砕くものだった。


「ねえカルス君。もし君のお師匠様、『賢者に戻せる』って言ったら……どうする?」


 どくん、とカルスの心臓が跳ねる。

 それは絶対に不可能だと思われた願い。今も彼の心の奥底に仕舞われた後悔、後ろめたさ。


 自分のために地位を捨てた師匠。それを取り戻して上げれるならばカルスはなんでも出来た。


 しかし当然ゴーリィはそんなこと望んでいない。


「カルス! 耳を貸すな!」


 ゴーリィはカルスを止めようとするが、いつの間にか二人の間には透明な障壁が出現しており、ゴーリィはカルスに触れることが出来なかった。


「魔術『不和の壁(アンチ・バリアー)』……若者の言葉を老人が邪魔するもんじゃないよ」

「エミリア貴様っ! これを消せ!」


 魔法で攻撃するゴーリィだが、エミリアの作り出した壁は堅牢で傷一つつくことはなかった。壁はいつの間にかゴーリィを囲むように出現しており、エミリアにも手を出せなくなっていた。


 邪魔が入らないことを確認したエミリアはカルスに語りかける。


「実はゴーリィを除名したことで、魔法使いの連中から結構叩かれてしまってね。戻してあげてもいいかなーって思ってたんだよ」

「勝手なことを……! だったら最初から除名なんてしなければいいじゃないですか!」

「まあそこは大人の事情ってことで。色々あるのさ大人には」


 のらりくらりとカルスの追求を躱すエミリア。

 これ以上問い詰めても無駄だと感じたカルスは本題に入る。


「確かに僕は師匠に賢者に戻って欲しいです。戻していただけるんですか?」


 それを聞いたエミリアはぱあっと顔を明るくする。


「そうかい! いいともいいとも……私の願いを聞いてくれればね」

「願い? 一体なんですか?」


 カルスとゴーリィは嫌な予感をビンビンに感じながら、エミリアの言葉を待つ。

 そして彼が放った言葉は二人とも予想だにしない、意外なものだった。


「カルスくん。君、魔術協会に入らないか?」

[用語解説]

・竜の器

【閲覧不可】


・黒の祝子

【閲覧不可】

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