表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/155

第8話 少女の独学

《シシィ目線》


 お屋敷に来てからもう一週間が経ちました。

 最初ゴーリィさまに『回復魔法を教えてほしい少年がいるんじゃ』と文を頂いた時はとても驚き、緊張しました。


 だって私は今まで友人などおらず、一人部屋の中でずっと魔法を学んでました。

 最初の頃こそ先生と呼べる方もいましたが、光魔法を教えられる方は少なく、すぐに私に魔法を教えられる方はいなくなってしまいました。


 なので一人で、孤独に私は本を読み、魔法を学んでました。


 ただ一人私の従者であり騎士のラーヤだけはお話が出来ましたが、彼女は文より武、魔法より剣といったお人なのであまり共通の話題がありませんでした。


 なのでカルスさまとの毎日は、とても楽しく刺激的なものでした。


 初めて話す同年代の方、しかも異性。私は大変緊張しましたがカルスさまは優しく、しどろもどろな私に優しく、根気強く付き合ってくださいました。

 なので数日もしたら私はカルスさまと目を見てお話し出来るようになりました。これはすごいことです。私史上初めての快挙です。


 カルスさまは覚える速度が速く、私が教えたことをすごい速さで覚えました。そのおかげで私はたくさんのことを彼とお話ししました。


 魔法のこと、医学のこと、薬草のことなど、子どもにはおそらく似つかわしくない、難しいことを、たくさんお話ししました。

 今までは本から受け取り頭の中で反芻することしか出来なかった私にとってそれは素晴らしい時間でした。他の方が感じたことを聞き、それに対し私の知見を述べる。そして更にそれを聞いたカルスさまが違う意見を言う。

 連鎖するように広がる知識、思考。この時間が永遠に続いてほしいとすら思いました。


 そんなカルスさまですが一つだけ、困ったことがあります。

 それは会うたびに私の容姿を褒めることです。


 私は自分の容姿に自信がないので前髪を伸ばし眼を隠しているのですが、この前なんかその前髪をよけて「きれいな眼をしてるのに隠すなんてもったいないよ」なんておっしゃいました。私は恥ずかしくて恥ずかしくて顔から火が出るかと思いました……!

 日常的にも「おはようシシィ、今日もかわいいね」とか「今日も金色の髪がきれいだね」など思い出すだけで顔が熱くなるほどのことをおっしゃります。


 その度私は情けない悲鳴を上げ、飛び退いてしまいます。

 カルスさまの赤い瞳もかっこいいですよ……ぐらい言えるほど、私の心が強ければいいのですが。奥手で臆病者の私はそれが出来ません。


 よくこんなキザなセリフが言えるものだと感心します。誰か女誑しの師匠でもいるのでしょうか?



 ……とまあ、カルスさまは本当に変わったお方です。


 

 本当に変わった――――私の、初めての友達。


 生きてほしい。苦しまないでほしい。

 私は今まで培ってきた技術と知恵がこの為にあったのだと思い懸命に魔法を教えました。


 しかし……結果は実りませんでした。

 私の魔法で痛みこそ抑えられているものの、呪いは少しずつカルスさまを蝕んでいきます。痩せ細り、立つのすら困難になっていくカルスさまを見るのは……つらい。


 要領のいいカルスさまがここまで回復魔法の習得に苦戦するのは、私には少し変に思えました。何か理由があるのではないかと、そう思い彼を注意深く観察した私は、あることに気がつきました。


 多分私の仮説は正しい……と思います。

 でもそれは伝えてしまうと逆に足枷となってしまうかもしれないことでした。


 私は……悩みました。

 悩んで悩んで、そして決断しました。


 たとえそれが彼と私を苦しめることになろうとも、実行するべきだと。


 お許しくださいカルスさま。こんな不器用な手段しか取れない私を――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ