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第3話 シシィ

 結局目が覚めたその日は、横になって体を休めた。

 シシィが着くのは明日になるから休め、と師匠に言われたからだ。


 明日に備えて体力を戻さなきゃいけないのは分かる。その通りだと思う。

 でも……僕はなかなか寝付くことが出来なかった。


「寝れないの?」


 不意にそう話しかけられる。

 もう外も暗い時間で、部屋には誰もいない。


 精霊であるセレナを除いて。


「うん。なんか色々考えちゃって」

「そう……よね。もし抱えたままで寝られないなら、私が聞くわよ。ほら、私は他の人に見えないから言いふらしたり出来ないし、安心でしょ?」

「ふふ、そうだね。確かに安心だ」


 セレナはいつもと同じように明るく振る舞ってくれる。それが今の僕にはありがたく感じた。


「ねえカルス。私は精霊だから人間であるキミがどう辛いのか、苦しいのかは正直よく分からない。でも私は最後まで側にいて力になってあげるから安心しなさい。たとえ神が相手だろうと私はキミを見捨てない」


 そう言ってセレナは僕の手を両手で包んでくれる。

 触れることは出来ない。でも確かな温もりを僕は感じた。


 そして心地よい温かさに包まれながら、僕の意識は落ちていくのだった。



◇ ◇ ◇



 翌日の昼頃、僕は師匠と一緒に外に出てシシィさんを待っていた。


「良いのだぞ、部屋にいても」

「少し体調良くなったから大丈夫。僕も早く会ってみたいし」


 呪いの痛みはずっと続いてるわけじゃなくて、時間を置いて突発的に来る。

 だから普段は割と自由に動けるんだけど、発作が来たら……地獄だ。


 『光の治癒(ラ・ヒール)』をかけているにもかかわらず、その痛みは師匠が来る前よりも大きい。体の神経を引っこ抜かれてヤスリで磨かれているような痛み。こんな生活長くは続かない……


 だから無理してでも早く『光の治癒(ラ・ヒール)』を覚えなきゃ。


「む、どうやら来たようだな」


 一台の馬車が門をくぐってこっちに来る。

 白を基調としたその馬車は、見るからにお金がかかってそうな作りをしてる。中に乗ってる人は貴族かお金持ちなのかな?


 目の前で止まった馬車の扉が開く。

 すると中から白い装束に身を包んだ女性の騎士が降りてくる。綺麗で凛々しい人だ。この人がシシィさんか……と思ってると、騎士さんの後ろからもう一人、降りてくる人がいた。


「……へ?」


 騎士さんに手を引かれて降りてきたのは、小さな女の子だった。

 綺麗な金色の髪が特徴的な女の子。背は小さくて少しおどおどしている。歳は僕より少し下くらいかな?


 その女の子はとてとて、とこちらに来ると師匠、続いて僕を見た後ぺこりとお辞儀をして、言った。


「初めまして、シシィと申します。不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします……」


 僕は困惑しながらも小さな先生に頭を下げるのだった。


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