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・レベル99エルフ&スライム

 リリウムだけを戦わせるのは気がとがめて、後日スライム型のホムンクルスを造った。


 というよりも、ケチってモンスターからドロップしたアクアマリンを材料にしたら、ぷるぷると揺れる水色の不定形生物になってしまった。


 今は少女とスライムのホムンクルスを連れて荒野を歩いていた。

 マーチャント時代のスキルはそのままなので、自らカートを引いて、レベル99ホムンクルスという護衛を付けた上で、街から街への運び屋生活を始めた。


 モンスターだらけのこの地に安全なルートなんてどこにも存在しない。

 そもそも街道がない。それでも誰かが物資を町から町へと運ばなければならなかった。


「~~♪」


 リリウムの背中を見つめて、彼女の鼻歌を聴いて歩いた。

 嘘だろ……。鼻歌まで記憶の中のリリウムそのままだ……。


 スライムの方はカートの上部に載せて、見張り役になってもらった。

 こんな姿だが賢く、気配りのできるいいやつだ。


「敵か?」


 そのスライムがカートを飛び降りて俺の前に立った。

 不定形な体で矢印を作り、俺とリリウムにモンスターの方角を教えた。


 俺もカートに足をかけてよく目を凝らすと、殺風景な岩場の奥にモンスターの群れが集まっていた。

 ここ一帯ではお馴染みのゴブリンに、スケルトン、頑丈で厄介なメタルスケルトンまでいる。


 こっちはレベル0だ。やつら一匹にちょっと殴られただけで死ぬかもしれない。

 こんな体になってしまった以上、数が多い相手は避けた方が無難だ。


「排除……」

「排除? ちょ、ちょっと待て、テメェら止まれやっ!?」


 まさか俺がやつらに恐怖を抱いたからだろうか。

 こちらが口を開く前に、少女とスライムがモンスターの群れに突っ込んでいった。


 どちらもレベル99のカンストだ。最強の一人と一匹が敵を片付けてゆくのを、俺は唖然と見つめるばかりだった。

 リリウムが次々とレイピアで急所を貫き、アクアマリン色のスライムが巨大化して敵をまとめて押し潰してゆく。


 するとどこからともなくファンファーレが鳴り響いた。

 ジャックはレベルが上がった。ジャックはレベルが上がった。ジャックはレベルが上がった。ジャックは――


 指をくわえて見ているだけなのに、俺のレベルは0から7になっていた。


「終わった……」

「プリュプリュプリュ……」


 スライムと少女はドロップした宝石や魔物素材の数々を抱えて戻ってきて、自慢げに目を輝かせていた。


「戦うの、楽しい……」

「プルル……ッ」


 これだけあれば、チンピラくらいなら簡単にやっつけられる。

 レベル7といえば、駆け出しの冒険者くらいの実力だろうか。


 俺は指一本動かしていない。

 まさかとは思うが、ホムンクルスが稼いだ経験値は全て俺のものになるのか……?


 少女とスライムは褒めて褒めてと言わんばかりに期待の眼差しを向けてきたり、しきりにプルプルと震えている。


「いきなり突っ込んでったのにはぶったまげたが、強いな……。二人ともよくやった」

「うん、がんばった……。褒められると、嬉しい……初体験……」


「そ、そうか……?」

「そうみたい。どうしてか、わからないけど……ジャック様に、褒められると、頭がおかしくなりそうなくらい、嬉しい気持ち、いっぱい……。もっとご命令を……」


 妹と同じ顔をしたホムンクルスに、命令をねだられると複雑な気分だ。

 だが褒めてくれと期待を込めて俺を見上げるその姿は愛らしく、昔を思い出して少し悲しかった。


 これがホムンクルスマスターか。

 ホムンクルス製造に莫大な金こそかかるが、これは凄まじい。


 ケチって造ったスライムですらレベル99で生まれてきた。

 そしてそいつらが稼いだ経験値を、全て俺が独り占めできるとするならば――これはいける。


 これならば、ヤツが俺を殺しにやってきても、余裕で返り討ちに出来る。


「よくやった」


 妹に瓜二つのエルフの頭を撫でた。

 地に膝を突いて、スライムの方にも。撫でるというより、パン生地をこねるような感覚だが……。


「もっと褒めて……。今の、もう一度、してほしい……。ジャック様、お願い……」

「ジャック様は止めろ。俺のことは――俺はお前のことなんてなんとも思っちゃいねぇが――お前は俺を、兄さんと呼べ」


 妹の顔で様付けされると戸惑いしかない。

 妹は両親と一緒に戦争で死んでしまったのに、何をやっているのだろう、俺は。


「兄さん」

「ッッ……?!」


「兄さん……兄さんを、これからは、兄さんと呼びます……。兄さん、リリウムは、兄さんに褒めてもらえると、とても幸せです……」

「へっ……そうかよ、だったら好きにしな……」


 目元が熱くなるのを堪えて、俺は運び屋の仕事に戻った。


――――――――――――――――

 名前  ジャック

 レベル 0 → 7

 職業  ホムンクルスマスター

 能力値 生まれたてのゴブリン並み → ホブゴブリン級

 スキル

  ・カート運搬9/9

  ・カート攻撃9/9

  ・アイテム鑑定7/9

  ・投擲術5/9

  ・片手剣8/9

  ・所持品重量半減

  ・ホムンクルス製造1/9

――――――――――――――――


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