・レベリング三日目 - 変わり身最速の男 -
目を覚ますとそこは青空だった。
いや、こちらを見下ろすリリウムの顔もある。
彼女は俺の覚醒に安堵したのか小さなため息を吐いて、さも当然のように人の髪を撫でた。
「おい、戦闘はどうなった?」
「勝った……。あの後、変なのきたけど、みんなでやっつけたよ……」
「変なの……? お、なんだありゃ……って、おまっ、な、何してんだよっ!?」
「何が……?」
軽く身を起こすと、俺は公衆の面前で女に膝枕をされていたことに気づくことになった。
それと荒野に金色の小さなゴーレムたちが転がっている。
構造がどこかシンプルで、小型の雑魚ゴーレムといった風貌だった。
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名前 ジャック
レベル 45 → 46
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ギルドカードを確認すれば、レベルが1つ上がっている。
やはり何もしていなくとも、ホムンクルス任せで俺は経験値を総取り出来るらしかった。
「あっ、おはようございます! へへへ、さすがスートさんでさ、おかげで俺ら命拾いしましたよっ!」
「キャーッ、スートさん素敵ぃっ、その赤毛といい、エルジョン様よりカッコイイわぁ!」
冒険者のエルジョンとそのペアは、こちらの思考回路が一時停止するほどに変わり身が早かった。
こちらが『コイツらこういう性格だったっけ?』と困惑しているところに、2人してごますりの手揉みをして、不自然な張り付いた笑いを向けてきていた。
「どうしやしたかっ、もしや御加減でも悪いんでっ?!」
「いや……てめーら、たくましいな……」
「スートの兄貴には敵わないっスよーっ!」
「一撃でミスリルゴーレムを倒しちゃうなんてっ、今度お仕事ご一緒させて下さい、スート様♪」
リリウムもこいつらの変わり身の早さに混乱しているようだ。
首を傾げたまま固まっている。出来るならば俺もそうしていたい気分だった。
「一昨日まで上から目線でマウント取ってきたやつのセリフじゃねーだろ……」
「そうっスけど、この業界って力こそ正義じゃないっスか。格上の存在に中指立てて暮らすより、お友達になった方が得ってもんっスよ!」
「ま、プライドで飯は食えねーのは事実だな……」
少し離れたミスリル鉱床の方に目を向けると、冒険者たちがつるはしを振り下ろしている。
俺の引いてきたカートに、莫大な価値のある鉱石を積載して、追加報酬でも期待しているのかみんなが笑っていた。
アレもエルジョンが手のひらを返した理由の1つだろう。
東の世界で暮らす連中は、大小こそあるが町への帰属心が強いからな。
「俺、手伝ってくるっス!」
「あーんっ、待ってエルジョン様! 今後ご一緒しましょうね、スート様っ♪」
「なんなんだ、アイツらは……」
軽薄なようで、意外と働き者なおかしな連中の背中を見送って、それからすぐ側にいたリリウムを手招きした。
「座れ」
「うん……。座った」
「そのままでいろ。二度寝する」
「わかった……」
採掘が終わったら、俺はまた馬車馬のように巨大なカートを引くことになる。
だから少しくらいいいだろうと開き直って、どこか懐かしい匂いのするリリウムの膝に寝っ転がった。
「スラ公もいいが、テメーも悪くねーぞ」
「兄さん……。兄さん、兄さん、兄さん、兄さん……なんだか、嬉しい。えへへ……」
幸せそうな彼女の微笑みを直視出来なくなって、俺はそっぽを向いた。
荒れ果てた荒野の彼方に、あまりにちっぽけなレッドの町が見えた。
こっちの連中は限られた富と土地を分け合って、一生懸命に生きている。
西に行けば戦争と隣り合わせの豊かさがあるというのに、ここに留まる彼らの気持ちが最近わかってきた。
俺たちはこれでもかとミスリル鉱石を採掘して、その後は無事にレッドの町へと帰還した。
しょっぱい報酬が7倍の3500ルピに膨れ上がったのは、レッドの町の発展を俺に期待させたが――あいにく、土地の限られたこの町に大きな発展は期待できそうもなかった。
こちら側の世界は何よりも土地が足りない。
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【所持金】2720ルピ → 6220ルピ
出資者が見つかったそうだ。
ミスリル鉱石を精錬して西の国々に売れば沢山の物資が得られると、ギルドマスターが喜んでいた。
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