45話前編 テレサちゃんはゲームが好き!
「お邪魔しまーす! なのです!」
元気よく扉を開き、建物の中に進んでいくテレサちゃん。今日の僕たちのお出かけ先は。
「こんにちは皆さん! 待ってましたよ!」
扉の向こうには、笑顔で僕たちを迎えてくれるロゼさんの姿が。僕たちが今日やってきたのは、マツリさんの研究所だ。
なんでも、テレサちゃんが未来に帰る前にマツリさんの研究所を一目見たいとのこと。未来の研究所の場所は移転した先だって言ってたし、レアな存在なのかもしれない。
「すごいのです! 豆腐の中身は十年経っても変わらないのです!」
テレサちゃんは建物に入るなり、キョロキョロと中を見回す。テレサちゃんも豆腐呼ばわりしていると思うとなんか面白い。
「あ、でも今の方が部屋は汚くないのです! 綺麗な豆腐の方がテレサは好きなのです」
「ふふふ……それはですね。ボクが掃除を毎日しているからですっ!」
書類が綺麗にファイリングされ、ズラッと並べられている棚を見て、目を輝かせるテレサちゃん。そんな彼女の言葉に、ロゼさんが自信満々に胸をドンと叩いた。
「おねーさんは誰なのです?」
「ボ、ボクは男ですよっ!」
「ええっ!? おとこ!?」
初見はビックリするよね。僕も確認したわけではないので真偽は不明だが、ロゼさんは正真正銘、男性だ。多分。
さらさらとした緑髪に、綺麗に透き通った黄色の瞳。何故かやや丸みを帯びたその肩のラインは、女性だと勘違いしてもしかたない。でも間違いなく男だ。なんでなんだろうね。
「ゆー君、テレサはよくわからなくなってしまったのです……。きっとこの人が嘘をついているに違いないのです」
「僕も未だによくわかってないから、そのままでいいんじゃないかな」
「からかわないでくださいよー! ユートさんまでー!!」
もうお手上げだといわんばかりのテレサちゃん。彼女が抱えている頭からは煙が出ていて、そろそろ可哀想なので話を進めてあげたい。
「ボクの名前はロゼです! あなたが未来からやってきたテレサさんですね?」
「ロゼロゼ! テレサの名前はテレサなのです! よろしくなのです!」
ゆー君、ありしーと来て今度はロゼロゼか。ニックネームもだいぶ集まってきたね。
二人は好意的に握手をし、すっかりお友達になったみたいだ。
「ところで、博士はどこにいるのです? テレサは博士にも会いたいのです」
「マツリさんならそこにいますよ?」
ロゼさんが指した方向を見てみると。
「すぴぴぴぴぴぴ……」
ベッドの上で寝息を立てているマツリさんがいた。アイマスクには『1:1.618』と書かれている。大きく口を開けていて、リラックスしているようだ。
「ねえねえ、あのアイマスクはなに?」
「黄金比アイマスクだそうです。なにやらこれが最も美しいとかなんとか」
さっぱり何のことを言っているのかわからない。やはり天才の考えることは僕みたいな一般人には理解できないな。
「昨日はかなり熱心に研究なさってましたからね……あと8時間くらい寝たら起きると思います」
「博士はお寝坊さんなのです。口が開いていると中に何か入れてみたくなるのです!」
「駄目だよテレサ! マツリさんは疲れてるんだから」
アリシアさんの静止によって、マツリさんの口の中にボールペンが突っ込まれる事態は避けられた。子供はやる事が恐ろしいね。
「というわけで、見ての通りマツリさんはお疲れなので、ここはボクがおもてなしします!」
ええっ、ロゼさんが? ちょっと不安だなあ。
「ロゼさんもお忙しいでしょうし、僕たちは帰りますよ? テレサちゃんは研究所が見たいだけだったみたいですし」
「いえいえお構いなく! ここしばらくの修行の結果、ボクのおもてなしスキルは飛躍的に進化しています! 今日は三人にその真骨頂をお見せします!」
しれっと断ったつもりだったんだけどなあ。どうやらロゼさんはやる気満々らしい。鼻息を荒くして、グッと拳を握る。
嫌な予感しかしないけどなあ。なんせ天下のドジっ子、ロゼさんだぞ。そこにアリシアさんとテレサちゃんの二人を加えたら僕の身が持つ気がしない。
「大丈夫だよユート君。ロゼさんもこう言ってるから。それに、このお部屋だってすごくきれいだし!」
確かに。アリシアさんの言う通り、部屋の中は真っ白なのに汚れがまったく見当たらない。埃一つないくらいにピカピカで、書類もきちんと整理されている。いつもの彼|(女)の行動を見ていると、既に研究所は粉みじんになっているはずだ。
もしかして、ロゼさんは家事においてはめちゃくちゃ有能だったりするのか……?
「三人とも、そこにあるデスクの席に座っていてください! 今お茶をいれますね!」
そう言って、ロゼさんはぱたぱたと奥の部屋に進む。僕たちは言われた通りに部屋の大きなデスクの方へ行き、置かれている椅子に座って待つ。
あのロゼさんだぞ? きっとまた事件が起こるに違いないという不安と、実は家事は上手なのではという期待が入り混じる。そわそわしながら待っていると。
「お待たせしましたー! お茶の用意ができましたよー!」
トレーに湯飲みを載せて、ロゼさんがやってきた。すごく自信がありそうで、まだお茶をいれただけなのに既にドヤ顔だ。
デスクに置かれた湯飲みの中をおそるおそる覗いてみると……ロゼさんの髪の色のような緑色の液体が入っている。今のところ普通だ。紫色とかを想像していたのに。
「どうぞ召し上がってください!」
「……いただきます」
「ゆー君、お茶は熱いからふーふーしないといけないのです! テレサはカップ麺でそれを学んだのです!」
しぶしぶ湯飲みに手を付けようとしていた僕に、テレサちゃんは自信ありげに忠告をする。緑色の液体にふーふーと息を吹きかけ、ゴクリ。
「うげえええええええええええ!?!?!? なんなのですこれは!?!?!?」
これは……どっちだ!? 美味いのか、マズいのか!?
「甘いのです!!」
甘い……? 詰めが甘いってことか……? 僕は意味がわからず、おそるおそる湯飲みに手を付け、ゴクリ。
甘い。この独特な甘みと酸味。この味わいは……。
これお茶じゃない! エナジードリンクだ!
「変な味がするのです! ぎょえええ!!」
「えっ、えっ!? 確かにコンビニで買った緑茶を入れたはずなのに……!?」
しかも自分でいれるんじゃなくてコンビニで買ったやつを出そうとしてたのかよ! やっぱりこの人駄目だ!!
まったく先が思いやられるな……。
うっかり投稿してませんでしたー!すみません!




