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15話後半 ユートは街を守りたい!

「止めるって言ったって……どうやって?」


 キョトンとした顔をするアリシアさん。止める方法なんて、僕が知りたいくらいだ。


 でも、既に僕の中の変なスイッチが入ってしまった。絶対にアリシアさんは助けるし、その方法だって見つける。見殺しにして僕たちだけ逃げるという選択肢は完全になくなった。


「マツリさん! ヤマトダイナを止める方法はないんですか!?」


「……ない。さっきも言ったように、弱い攻撃は砲撃で撃ち落とされて、強い攻撃は結界で防がれてしまう。はっきり言って無敵よ」


 アリシアさんがヤマトダイナに攻撃しても結界に守られているから機体を傷つけることはできないし、僕が近づこうものなら砲台に攻撃されてしまう。まさに鉄壁の布陣(ふじん)だ。


「じゃあ、その結界はなんとかして止められないですか?」


「結界を展開しているのは、戦艦内部のエンジンルーム。そこまで到達し、中の機械を破壊できれば結界は張れなくなるわ」


「それなら僕がエンジンルームの機械を破壊して、結界が張れなくなった瞬間アリシアさんが攻撃すれば! マツリさん、ヤマトダイナに近づくための機械はありますか!?」


「確かにあなたが言うような機械はあるし、その方法ならヤマトダイナを止められる。でも、問題が二つあるわ。


まず、使用する機械の問題。私が作った『ホバーボード』はスケートボードのような板で、魔力を注げば宙を浮くし、空を移動することはできるわ。でも、使う魔力の量が多すぎて、とても一般人には扱えないわ」


 そのホバーボードに乗れば、ヤマトダイナに接近することができる。しかし、僕にそれを操縦できるほどの魔力はない。これではどうすることもできない……。


「どうやら私の出番みたいね」


 顔を上げると、そこにはリサの姿があった。


「リサ!? 逃げたんじゃ……」


「私を誰だと思ってるの。魔法学院を首席で卒業したエリート中のエリート。そんなカッコいい名前の機械、乗らないわけないじゃない」


 そうか、記憶から消えかかっていたけど、リサは魔法に関してはエリート……彼女ならホバーボードを乗りこなし、ヤマトダイナに近づくことができる!


「これでエンジンルームに行くことができる!」


「でも、もう一つ問題がある。ヤマトダイナに近づいたら、砲台が標的を補足して攻撃してくるわ。ホバーボードに乗っている間は魔法が使えないから、近づけたとしても撃ち落とされてしまう……」


 マツリさんが語った現実は、あまりにも残酷だった。


 あと少しで結界を止めることができそうなのに、リサがホバーボードに乗っている間は魔法が使えない。それではどうすることもできない。


「あー、もう! やればいいんだろやれば!」


 絶望して顔を落とそうとした瞬間、外に出ようとしている群衆の中から声がした。外へ出ようとしている人々の中でただ一人、こちらに向かって歩いてくる人物がいる。


「おめーらがそこまで言うんなら、俺も協力してやる! 俺だけ逃げるのも後味悪いと思ってたんだよ」


 めんどくさそうにため息をつきながら、髪を掻いているその男は、ダースだ。


「おい聞け冒険者ども! 俺はこの街に残るぜ! 俺がこのまま死んだら債務不履行(さいむふりこう)ってことでお前らが俺に貸した借金はチャラだ! 残念だったな!」


 逃げ出そうとしていた冒険者たちがその一言で足を止め、ダースの一点を見つめる。


『ふざけんじゃねえ! 金返せ!』


『お前には3万ギルも貸してるんだぞ!』


『俺なんか6万だ!』


 逃げようとしていた冒険者たちは方向を変えてダースの周りに集まる。みんなしてダースに金を貸しているらしく、金を返せと息巻いている。こいつどんだけ金にだらしないんだよ。かく言う僕も3000ギルくらい貸していて返ってきていない。


「お前ら、金を返してほしいか? だったら武器を持て! お前らの武器で、このロリっ子を撃ち落とそうとするヤマトダイナの砲撃を撃ち落とせ! いいか、これは俺だけのためじゃねー、街のためでもあるんだぜ! ユートやアリシアさんたちが命張ってる中、俺たちだけケツまいて逃げるなんてだっせーこと出来るかよ!」


 ダースは人々に向かって勢いよく演説をする。その迫力に、誰もが舌を巻いた。


『……って、なんかいい話風にしてんじゃねーぞ!』


『最初から金返しやがれクズ野郎が!』


 あ、みんな気づいたっぽい。これ全然カッコよくないからね。


『でも、俺たちも戦うぞダース!』


『俺たちが守るぜアリシアさん!』


 さっきまで逃げようとしていた冒険者の群衆(ぐんしゅう)は、ダースへの怒り半分、ヤマトダイナへの闘志半分で雄たけびを上げる。


 なにはともあれ、このギルド内にいる人々の志が一つになった!


「いける……これならいける!」


 僕は会心のガッツポーズをした。心臓がバクバクと高鳴る。


 作戦はこうなる。


 まずリサがホバーボードに乗って、ヤマトダイナに近づく。


 ヤマトダイナはリサを感知すると、無数の大砲で撃ち落とそうとしてくる。それをギルドの冒険者たちが攻撃し、空中で爆発させることで、リサに砲弾が直撃するのを防ぐ。


 ヤマトダイナの装甲に到達したリサはエンジンルームに侵入。機体を守っている結界を張る装置を爆破し、防御できなくする。


 守りが手薄になったところで、アリシアさんが攻撃し、ヤマトダイナを破壊する。


 これならアリシアさんを死なせることはないし、街を守ることもできる!!


「そうと決まればさっそく準備に取り掛かりましょう!」


 僕は声を上げ、みんなを鼓舞する。絶対にこの街を救うんだ!



「準備はいいわね」


 30分ほどして準備が整い、僕たちは街の門の外にテントを張り、簡易的だが防衛本部を作る。


 その様子を見て、冒険者の人々がざわざわとヤジを飛ばしているのが聞こえる。


『見てみろよ、すげえメンツだぜ!』


『まずは最強の勇者で才色兼備、完璧姫様パーフェクト・プリンセスのアリシアさん!』


『その横にいるのは天才魔女っ子の緋色の天才スカーレット・ジーニアス、リサ・フィエルテ!』


『見てみろ! あれがこの街を発展させた美少女天才科学者、覚めない白雪姫スリーピング・スノーホワイト、ワタナベ・マツリだぜ!』


『そしておなじみのクズの極み野郎、ダース・アミティエ』


『…………ユート・カインディアだ!』


 僕だけ異名が思いつかなかったみたいなのやめろ。これから戦いだというのにズッコケてしまいそうだ。


 だけど、これだけ強いメンバーが集まっているのだ。絶対にこの街を守り切れるはずだ。


 僕たち最強パーティ(・・・・)なら。


「みんな! 行くよ!」


「「「「おう!」」」」


 アリシアさんの掛け声に呼応し、僕たちはヤマトダイナを止める覚悟を決めた。

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