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1話後半 アリシアさんはスライムが苦手!

 ……というわけで昨日、僕はアリシアさんのスライム克服を手伝うことになったわけだ。


 しかし、彼女はスライムを見るとたちまち腰が抜けてしまい、とてもじゃないが現段階でスライム嫌いが治る気配はない。


 今日が二日目。スライム克服に失敗し、森から出て街へと歩いていると。


「ユート君、ちょっといい?」


 隣を歩くアリシアさんが僕に声をかけてきた。


「なんですか? タオルですか?」


 僕はバッグからタオルを取り出そうとするが、アリシアさんは首を振る。どうやらさっきスライムに襲われた時のベトベトが気になるわけではないらしい。


「ちょっと思ったんだけど……やっぱり何のお礼もしないでユート君に手伝ってもらうのは悪いよ」


「え? 別にいいですよ、好きでやってるんで」


「そうはいかないよ! だから私考えたんだ」


 アリシアさんはそう言って人差し指を立てる。


「一日スライム克服を手伝ってもらうごとに、ユート君の『お願い』を聞いてあげます」


「お願い……ですか?」


「うん。何でも一個、お願いを聞いてあげる!」


 腕を曲げ、任せろと言うように力こぶをアピールするアリシアさん。彼女の瞳には純粋(じゅんすい)さとやる気が入り混じっている。


掃除(そうじ)でも洗濯(せんたく)でも、何でも言って!」


「……アリシアさんってそういう発想力が子供で止まってますよね」


「ええ!? どこが!? 私もう大人だよ!?」


 申し訳ないけど、そういうところが。


「さあさあ! 今日のぶんのお願い決めちゃって!」


 と、言われてもなあ。アリシアさんはずいぶんノリ気みたいだが、頼みたいことなんて特には……。


「私にかかれば()()()()やっちゃうよ!」


 ん……?


「アリシアさん、今『なんでも』って言いました?」


「そうだけど……そ、その目はいったい!?」


「ふふ……ふふふ……」


 何でもなんて言われたら、男としてはアレ(・・)を頼むに決まっている。


「アリシアさん! お願い、決めましたよ!」


「ごくり」



「ユート君? 私たちどこに向かってるの?」


 森からしばらく歩いて、街に到着(とうちゃく)する。僕とアリシアさんが暮らすこの街『シエラニア』には、たくさんのお店が並んでおり、今日も活気に(あふ)れている。


「着きましたよ、アリシアさん!」


 目的地に到着し、僕は目の前の建物を指さす。


「ここって、ファミレス!?」


 ガラス張りの入り口に並べられた、色とりどりの食品サンプル。そう。ここは『ファミリーレストラン』だ。


「僕のお願いは、『一緒にファミレスに入ってほしい』です!」


 ファミレスってたまに入りたくなるけど、一人だと入りづらいんだよね。


「こ、こんなことでいいの!? 重労働でもなんでもするよ!?」


「重労働ってどうせ肩たたきとかじゃないですか……さ、早く入りましょう!」


「でも! 私ファミレス入ったことなくて!」


「え?」


 アリシアさんはファミレスに入ったことがないだと!? ファミレスに入ったことがない人なんて見たことがない。それくらいこの町ではポピュラーなはずだ。


 ファミレスなんて、どこにでもあって当たり前なはずだよね!?


「とにかく入ってみましょう! ほら!」


「あ、待って待って!」


 ドアを開け、僕たちはファミレスの中に入っていく。


「いらっしゃいませー! ファミリーレストラン『キャットテイル』にようこそにゃん!」


禁煙(きんえん)二名で!」


「かしこまりました! ご案内しますにゃん!」


 店内に入ると、フリフリの制服に身を包んだ猫耳(ねこみみ)獣人(じゅうじん)のお姉さんが、僕たちを席まで案内してくれる。


「へー、結構オシャレな雰囲気だね」


 木造特有の暖かみを感じる店内だ。ボックス席がいくつも並べられていて、クエスト帰りの打ち上げと見える冒険者パーティーや、夕食を済ませる親子など、幅広い客層(きゃくそう)が食事を楽しんでいる。


「本当にファミリーレストランだけでよかったの?」


「よかったですけど、なんでですか?」


「ユート君って……無欲だよね!」


「どこがです? こんなに自分勝手なお願いしてるのに」


「そういうところが」


 ……? 言いたいことがよくわからない。別に無欲じゃないと思うけどなあ。


「そんなことより注文しちゃおうよ!」


 テーブルの隅に置かれたメニューの冊子(さっし)を、アリシアさんに差し出す。


「ユート君は何を頼むか決めてるの?」


「はい。実は食べたいものがあって……」


 僕はメニューをパラパラとめくる。


「これです! 『キャットタワーパフェ』!」


 メニューの目当てのページを開く。1ページを豪華(ごうか)に使って、でかでかとパフェの絵が描かれている。右下では猫のキャラクターが『当店限定のオススメだにゃん!』と言っている。


「うわーーーー!! 可愛い!! 私もそれがいい!!」


 アリシアさんは目を輝かせてメニューに顔を近づけている。


「結構大きいらしいですけど、大丈夫ですか?」


「大食いには自信あるよ!」


 アリシアさんの覚悟が決まったようなので、僕は店員さんに声をかけ、『キャットタワーパフェ』を注文した。



「あ、グリンピースの大きさがちょっと違う!」


「え、凄い! アリシアさん、なんでそんなのわかるんですか!?」


「えっへん。これでも勇者だからね」


 注文が終わり、僕とアリシアさんがキッズメニューの表紙の間違い探しに挑戦していると。


「お待たせしましたにゃん! キャットタワーパフェ、お二つだにゃん!」


 そう言って猫耳の店員さんが持ってきたものを見て、僕は絶句した。


 それはまるで、机の上に天高くそびえ立つ塔だ。ガラス容器の中にクリーム、コーンフレークがふんだんに入れられており、さらにその上からアイスクリーム、いちご、バナナ、チョコチップが大量に乗せられている。


「……思った以上に大きかったですね」


 高さは優に30センチを超えていて、どう考えてもおやつ感覚で食べられる量ではない。


「そうだね。もしかして、結構お値段するやつだったかな?」


「いえ、一個599ギルです」


「599ギル!? なんでそんなに安いの!?」


「キャットテイルは広告費を抑えて、その分食事を安く提供しているんです。だからこのパフェも安価なんですよ」


企業努力(きぎょうどりょく)!!」


 こういう裏話を聞くと、目の前の巨大パフェもなんだかありがたいものに感じる。僕たちはスプーンを手に取った。


「「いただきます!!」」


 アイスクリームをスプーンですくい、口の中に運ぶと。


「!」


 舌先にアイスが触れた瞬間、濃厚(のうこう)なバニラの味わいが口いっぱいに広がる。約600ギルのクオリティとは思えないほどなめらかなくちどけで、幸せな甘みを感じる。


「おいし~!」


 アリシアさんはあまりのおいしさに悶えており、ほっぺが落ちないように左手で押さえている。大きく開いた瞳に光が射し、爛々(らんらん)と光る。本当に美味しそうに食べるなあ。


「ユート君、これ本当においしいよ!」


「気に入ってもらえてよかったです、ファミレスが初めてだって言うから、合わなかったらどうしようって思ってました」


「ううん。すっごく気に入っちゃったこれ!」


 アリシアさんのスプーンが止まる気配はない。


 そこから黙々と食べ続けて15分もすると、あれだけクリームがぎゅうぎゅうに詰められていたパフェの容器も、すっからかんになっていた。


「「ごちそうさまでした!!」」


 さすがに量があったからお腹がいっぱいだ。アリシアさんも満足そうな表情。


「ユート君、今日は付き合ってくれてありがとね!」


「僕の方こそありがとうございました、パフェも食べられて満足です」


「またよろしくねっ!」


 アリシアさんはそう言ってお会計カウンターへと歩いていく。


 スライム克服は、まだ始まったばかりだ。僕は明日も頑張ろうと胸に(ちか)うのだった。

おまけ

ユート「お会計は僕が出しますよ」

アリシア「えっ、私が出すよ!」

ユート「じゃあ間を取って割り勘にしましょう」


1ギル=1円です!

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