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52話後半 二人は仲直りしたい!

「…………」


「…………」


 ダースとライブに行った次の日。僕はいつものギルドの席で座っていた。その向かいには、いつものようにアリシアさんが座っている。


 前回あんな別れ方をしたんだから、示し合わせたわけじゃない。だけど、何故か僕たちは二人して、いつものギルドの席に座っていた。


 僕はアリシアさんに謝ろうと思ってギルドに来たんだけど。まさか本当にいつもの席に座っているとは。正直びっくりした。


 そしていざ僕も席に座ったはいいけど、口を開くのが難しい。空気が重いうえに、おととい喧嘩して別れたばっかりだから口火を切ることができない。


「…………」


「…………」

 き、きまず~~~~~~~。気まずすぎる。緊張して、さっき貰って来たばっかりのオレンジジュースをゴクゴクと飲んでしまうので、どんどん減っていく。


 一方のアリシアさんはと言うと。お冷を一口飲んで、コップを置き――いや、まて、机の上にコップがあり得ないくらい置いてあるぞ!? 1、2、3……18個!?


僕が座ってから今までの間に水を18杯も飲み干したのか!?


あんたは砂漠か!? そんなもちもちした肌をしてるのに!!


 駄目だ、こんなところでおじけづいていたら一生仲直りをすることができなくなってしまう! もしくはアリシアさんの体内の水分の量が飽和して水滴が結露してしまう! ここは僕から謝るんだっ!!


「「すいませんでしたっっ!!」」


 僕が頭を下げると、何故かアリシアさんの声もして。


「「えっ!?」」


 僕たちの声が重なった。


「「リトマス試験紙」」


 なんでそれがハモった? 絶対被らない単語を言ったつもりだったんだが?


 って、そんなバカみたいなことをしている場合じゃない。アリシアさんも同時に謝ったって、どういうことなんだ!?


「……ユート君、一昨日のことは私が悪かったよ。ごめんなさい」


「えっ、なんでですか!? あれは僕が悪かったのに!?」


「いや、あれは私が悪いからッッッ!!!」


「そこで張り合ってどうするッッッ!!!」


 とにかく、目の前で話しているアリシアさんは、完全にいつものアリシアさんだ。一昨日見た時のように違和感はないし、むしろ何故か今にも泣き出しそうな目をしている。


「ごめん。私、魔王を目の前にして、おじけづいたの。今までスライム克服だってできそうな気がしていたのに、なんだか急に自信がなくなって。それで、スライム克服も私には無理だって思ったんだ」


 やっぱり、アリシアさんはプレッシャーを感じていたんだ。だから『今日はスライム克服はいい』って言い始めたってことだったのか。


「僕の方こそごめんなさい。アリシアさんの気持ちも理解しないで、無理な作戦ばかり押し付けて。どうしても魔王を倒さないとと思って、焦ってしまいました」


「ううん。きっと私たち、二人とも焦ってたんだよ。魔王を目の前にして、絶対に倒さないといけないと思って」


 そっか、じゃあ僕たち、二人とも焦って、二人と相手に悪いと思っていたのか……。


「アリシアさん、森に行ってみませんか?」



 僕たちはギルドから外へ出て、いつもの森へと向かった。中に入り、ズンズン進んでいく。


「つきましたよ」


 やってきたのは、僕たちが最初に出会った場所。森の中でスライムまみれになっていたアリシアさんを、僕が見つけたんだっけ。


「懐かしいね。三か月前のことなのに、ここ最近でいろいろなことがあったもんね」


「ですね。仲間が増えて、事件がたくさん起きて、しまいには未来も変えて……」


 でも、楽しかった。これからも仲間たちと一緒にそんな日々を過ごしたいと感じる。


「アリシアさん。僕はアリシアさんのことを全力でサポートしますし、無理強いもしません。僕は後ろからただ応援し続けます。スライム克服、しますか?」


 僕が問うと、アリシアさんは少し考えた後、首を横に振って。


「……しないよ」


 と答えた。やっぱり精神的なプレッシャーが大きかったか。でも、それは彼女の決断だ。僕はそれを受け入れる。


「後ろからじゃなくて、ずっと隣で応援して。じゃないとスライム克服はしない!」


 ええ……? そこ?


 と、いつもの僕ならツッコんでいただろうけど、彼女の笑顔が今日は一段と輝いているように感じたので。


「わかりました。アリシアさんの隣で、一緒に頑張り続けます。魔王を倒しましょう!」


 僕とアリシアさんは握手を交わし、魔王討伐を決意した!


 暗い森の中に、一筋の光が差し込んできた――そんな気がした。



 ユートとアリシアが森の外へ出た後、茂みの中から声が上がった。


「おいロリ! お前よくやったな!? あの状況からアリシアさんを元気づけるとか、マジで天才じゃねえのか!?」


「何言ってるのよ!! ユートがあんなに改心するなんて、普通じゃ考えられないわ! アンタ最高よキモ男!」


「ロリ!」


「キモ男!」


 ――と、ダースとリサはお互いを褒めた後で、自分たちを客観視して。


「……おいお前キモ男とか言うな!!」


「何よ!? アンタこそ私のことをロリ呼ばわりするのはやめろ!! カスが!! 気持ち悪いんだよ!!」


「んだとテメエ!? しばき倒してやる!」


 いつものようにヒートアップした。ダースが拳を振り上げるが、数秒動きを止めると、スッと下ろして。


「……でも、今回は助かったぜ。ありがとな」


「な、なによ。急に素直になって。わ、わかってるわよ。アンタこそよくやったじゃない。たまには褒めてやるわ……」


 二人はちょっともじもじしながら互いを褒め、そのあと森のモンスターに襲われて全力で逃げましたとさ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます(^_^ゞ アリシアさんとユートくんが仲直り出来て一安心。 二人の距離感も近付いた感じですし、いよいよ特訓も再開ですね! [気になる点] リトマス試験紙……。 あ…
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