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第十五話 エンドロールに遊び要素があるゲームは神

見事ラスボスを打ち破る事に成功した不働。

しかし彼はがっくりと肩を落としていた。


確かに魔王は倒した。だが代わりにヘルメラも倒されてしまった。

もしも彼女が本当にゲームをクリアしたら消えてしまうNPCなのだとしたら、もうこれきり会えないのではないかと・・・。


「ヘルメラ・・・ヘルメラ。」

不働は涙をこぼした。


すると・・・。


「フッ、フフフッ・・・!」


くすくすという笑い声が後方から聞こえてくる。

慌て振り返ると、そこには全身を焼き焦がしてはいるが確かにヘルメラがいた。

不働は横たわる彼女に駆け寄った。


「ヘルメラっ・・・!?」

「フッ、フフフ・・・いや、すまない。笑ってはいけないんだろうが、普段あれだけ自信に満ちたお前がそうして泣き崩れているのを見ると何か面白くてな。」

「なっ・・・いやそれよりどうしてお前は生きているんだ!?」


必死に堪えようとしつつも笑い声を漏らすヘルメラに、不働は若干照れながらも問い掛けた。


「勝手に殺してくれるな・・・最もそれも一時的なものだがな。騎士の特殊能力はな、敵の全ての攻撃を受け止め・・・そのターンの間だけHPを1で耐え留めるというものだったんだ。」

「そんな力が・・・女騎士ってのも大概にチートだな。」

「フッ、まあそんな訳で私の命はもうすぐ潰える訳だが・・・。」

「・・・!!ヘルメラ・・・また、会えるよな?」


目に涙を溜めながら問い掛ける不働。

するとヘルメラは、少し身を起こして・・・グッと彼に顔を近づけた。


「勿論だ。約束・・・忘れてはいないだろうな?」

「・・・っ!!当たり前だ!必ず、必ず・・・!!」

「そうか、それは良かった。では待っているぞ不働・・・楽しみにな。」


にっこり微笑むと、彼女の体は光と消えた。

それはプレイヤーだとかNPCだとか・・・そんなものは関係なく、とても可愛らしい一人の女の子の笑顔だった。




きゅおおおおん!

少しして魔王の間の奥に光の門の様なものが出現する。

これまでのゲーム内容とは明らかに一線を画すその門は・・・現実へと繋がるゲートであろう。




・・・不働はそれを潜らずに、魔王の間でじっと待ち続けた。

しばらくして・・・鈍い音を立てて再び魔王の間の扉が開く。


ぎぃぃぃ・・・。


現れたのは不働の妹、和來だった。

教会で復活し・・・彼女は再びここまで来たのだ。


「兄しゃ・・・本当に倒したんだね、魔王を!!」

「ああ、そうだ。」


和來は目を輝かせながら不働の元へ駆け寄った。

そして語った・・・魔王が倒された事により町の人々のセリフがエンディング仕様に変わった事と、死んだ皆が順番に教会で蘇りここに向かっている事をだ。

不働は穏やかな表情でそれを聞いていた。


「中には全部の町のキャラと会話しないと気が済まないっていうゲーマー気質の人もいるけど、その内皆ここに来るだろな。」

「そうか・・・。」

「私はもう満足したからゲームクリアするけど、兄しゃはどうする?パパとママも心配してるだろうよ?」

「俺はまだここにいるよ・・・待ってる奴がいるからな。」

「そう、分かった!じゃあまたな、兄しゃ。」


そう言うと和來は光の門を潜っていった。



しばらくして・・・続々と他のプレイヤー達が魔王の間へとやってくる。

和來の仲間の攻略最前線組や、ジックー達。

それからパーティに加入していたレベル25の仲間達。

彼等は不働に礼を言いながら、現実へと帰っていく。


しかし不働の待つ者の姿は一向に現れない。

最も彼女が倒れたのは一番最後だ。教会が渋滞しているのかもしれない。

不働はそれをいまかいまかと待ち続けた。


・・・やがて、パーティの仲間達も全員がゲームをクリアし門から出ていった。

続いて現れるのはゲームクリアを断念し他の町に留まっていたプレイヤー達。

彼等も不働に感謝感激の言葉を投げ掛けると、ぞろぞろと光の門を通り抜けていった。




不働は・・・じっと待ち続けた。

だがいつまで経っても、彼女が現れる事は無かった。




・・・どれほどの時が過ぎただろうか。

少しずつゲームから出ていくプレイヤーの数は減っていき、やがてゼロになった。

それでも不働はそこから動こうとはしなかった。


ぎぃぃぃ。


数日ぶりに魔王の間の扉が開く。

しかし現れたのはやはりヘルメラでは無い。

世界中を回り、残っているプレイヤーがいないか確認してから来たリーダーだ。

彼は沈んだ目のままじっと佇む不働を見て、声を掛けた。


「・・・私で最後だ。もう他にこの世界に残っている『プレイヤー』はいないよ。」

「・・・。」


不働は何も答えない。

リーダーはその姿に何か言おうとしたが、それをやめて彼の横を通り過ぎた。


「最終的に答えを出すのは君だ。納得のいく答えが出たら、このゲームをクリアするといい。きっと現実にも君を待っている人がいるはずだから。」


それだけ告げると、リーダーはゲームを出た。

不働はやはり・・・そこから動こうとはしなかった。




《和來ちゃんのデレナイクエスト・大攻略》

エンディング編

『このゲームではクリアしてもスタッフロールは流れないよ。そもそも製作者不明だしね。まあそんな物が無くても現実に戻れる感動で皆の胸はいっぱいだから大丈夫だね。ちなみにゲームをクリアしてもこのコーナーは永久不滅!!いつまでも終わる事は・・・あ?今回で最終回?そうですか・・・。』

挿絵(By みてみん)

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