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第十四話 ターン制のRPGは最高やで

魔王との戦いは続く・・・。


「グオオオッ!!」

魔王が放つ紫の炎が・・・辺りに蔓延る邪魔者達を焼き払わんばかりに迫る。


「・・・くっ、回復を頼む!!」


不働が叫ぶと、パーティの後方に配置された僧侶軍団は一斉に回復魔法を放った。


ぴかぁぁぁあ!!




パーティを組むにあたり不働が意識したのは、回復に重点を置く事だった。

魔王の攻撃パターンが把握出来たとはいえそのHPは未知数である。その圧倒的な攻撃力を鑑みれば、体力も果てしないものが予想される。

ならば長期戦は必死。

故に体力回復の出来る僧侶のプレイヤーを攻撃力を維持できる限界までパーティに組み込んだ。

その人数は21。実に半分以上を回復役で固めた。


・・・しかしそれでも回復は追い付かなかった。

二回行動の魔王の攻撃が誰かに集中すればそれを受けきる術はないし、そもそもいつ来るかもしれない『パンデモニウムストーム』を耐えるためにパーティ全員のHPを常に最大近くまで保っていなければならない。

僧侶達に倒れたプレイヤーを蘇生する余裕など無かった。

一人・・・また一人と集まった仲間達は倒れて行く。




「ぐえええっ!!」


魔王の強烈な叩き潰しに、また一人僧侶の男が倒れる。

気付けば残っているのは不働とヘルメラに和來、それとリーダーだけだった。

加えて不働と和來とリーダーは虫の息、次の一撃で倒れてしまうだろう。おまけに頼みのヘルメラは、敵の瘴気の息で麻痺状態に晒されていた。一切の行動が取れない。


「まだなのか!まだ奴は倒れないのか・・・!もう今ので僧侶は全員やられちまったぞ!」

「これまでのボス戦の通りなら、あと一撃という所まで追い詰めればボスは何らかのアクションを示すだろう・・・とはいえもう10万近いダメージを与えている、後少しの筈だよ!!」


焦りに似た叫びを上げる不働の横でリーダーは冷静に言い切った。

しかしその額には滝のような汗が浮かんでいる。彼にもまた余裕などない。

すると彼等の横で、和來は果敢に飛び出した。


「回復できないのなら、後はもう全力で攻めるしかないじゃんね・・・くたばれっ!!」


彼女は残った魔力を集中させ、特大の炎弾を撃ち放った。魔王の姿が爆炎に包まれる。


「どうだっ・・・!?」


・・・しかし魔王はそれを容易く振り払うと、倍返しとばかりに和來に巨大な闇の炎を吐いた。

攻撃後の隙だらけの彼女にそれをどうこうする術はない。


「・・・うっ、ここまでか。・・・へへっ兄しゃ、後は任せた。」


ごおおおおっ!!

和來は炎に飲まれ消滅した。


「・・・くそっ、和來。はああああっ!!」


ざしゅっ!!

不働が飛びかかり剣撃を放つが・・・やはり魔王に倒れる様子は無い。

このまま絶対に勝てないのではないかという恐怖が彼を襲った。


「っ・・・。」


次の手番はリーダー。その後には再び魔王の攻撃が待つ。依然として状況は絶望的だ。

彼は冷静に状況を分析すると・・・何故かそっと武器を下ろした。


(これは一種の賭けだが・・・それしか手はあるまい。)


すると彼は何かのアイテムをヘルメラに使用した。

それは麻痺を治す気付け薬だった。

ヘルメラの体から麻痺が抜ける。


「・・・!」

「この後の魔王の攻撃でもしも二人以上が生き残れれば可能性は繋がるだろう。だからこれは賭けだ。ゲームにはやはり運否天賦は付き物だからね。」


リーダーの賭け。それは自身で攻撃する代わりに、高い攻撃力を持つヘルメラを回復させ、彼女の強力な攻撃で魔王をあと一撃の状態まで追い込み・・・次なる不働かリーダー自身の攻撃で魔王を倒そうというものだった。

勿論その為には次の魔王の攻撃を耐える必要がある。敵の二回攻撃で二人のプレイヤーが死亡すればそれで終わり、それでなくても『パンデモニウムストーム』が飛んでくれば三人まとめて倒されてしまうだろう。そもそもヘルメラの攻撃で魔王を瀕死に追い込める保証も無い。

一か八か、ギリギリの勝負である。


だが次の瞬間、魔王の噛み付きが彼に襲いかかった。あっという間にリーダーは粉々にされてしまった。

これで次の攻撃で不働かヘルメラのどちらが倒れてしまえばリーダーの作戦は全て不発に終わってしまうという事だ。


・・・そして魔王がとった行動は・・・雷の魔法によるヘルメラへの攻撃だった。


バチバチバチィィ!!!!

強烈な閃光がヘルメラを襲う。


「ヘルメラ・・・!」


嘆く様な不働の声。

しかし当のヘルメラは・・・攻撃一発分を耐えられるHPを残していた。

雷をものともせず、彼女は剣を振り上げ飛び上がった。

リーダーの作戦・・・その第一関門は突破したのだ。


「よくもこの私を縛り付けてくれたな、彼の仇だ・・・くらえっ!!うおおおおっ!!」


ばしっっ!!その一撃は深々と魔王に突き刺さった。

クリティカルヒットである。


「グワアアアアッ!!」


魔王が苦しそうな声を上げる。

これは・・・あと一撃のシグナルだ。

つまりリーダーの賭けは・・・上手くいったのだ。

ヘルメラの攻撃は、敵を追い込む事に成功した。


これであとは、続く不働の攻撃で魔王を倒す事が出来る。


(これはあと一撃というサイン・・・!)

(いけるぞ・・・これでいける・・・!)


そう二人が確信した、その時だ。

追い詰められた魔王の足掻きは・・・想像を絶するものだった。


「グウウウウオオオオ!!!」


彼は両方の手に巨大な二つの魔力を収束させ始めた。

それはまさに・・・あの『パンデモニウムストーム』の光だ。

それが・・・二発。

次の手番も何も関係なく、死に際の魔王は割り込みの破れかぶれで二発の『パンデモニウムストーム』を撃とうというのだ。


「ガアアアアアッ!!」


不働達に襲い掛かる二重の瘴気の大爆発。

その総ダメージ数は・・・660だ。


(馬鹿な・・・こんなの、耐えられる訳無いじゃないか。ここまで来て、終わるのか・・・。)


死を覚悟して顔を伏せようとする不働。

だがその前に、何かが立ちはだかった。

・・・それは、仰々しい鎧に身を包んだ女騎士だった。


「諦めるな・・・フドウ。」

「ヘルメラ・・・!?」


彼女は不働を守るように両手を広げる。


「騎士の持つ特殊能力でな、味方を庇い全ての攻撃をその身に受けるというのがあるんだ。フドウ、ここは私が命に変えても受け止めてみせる。だから諦めるな・・・お前の手で、魔王を倒せ。」

「なっ、そんな事をしたらお前は・・・!!」


しかし有無を言わさず爆風は全てを包み込んだ。



・・・。

目に映る全てを吹き飛ばし、満身創痍の魔王だけが残る。

ニヤリと、彼は勝利の表情を浮かべる。

だがそこにはもう一人だけ・・・生存している者がいた。

・・・不働だ。


「くそぉ・・・おおおおおっ!!」


ざんっ!!

一刀両断。

彼の放った最後の一撃は・・・魔王の体を半分に切り裂いた。




《和來ちゃんのデレナイクエスト・大攻略》

魔王編

『100696もの膨大なHPに永遠に魔法を唱え続けられる無限のMP。加えてワンターンに二回行動というとんでもないスペックでそれらをぶちかまして来るとんでもないラスボスだね。・・・だけど、暇な人はもう一度よーく今回の話を見返して欲しい。なんと私、魔王の二回行動の間に割り込んで攻撃してるから。いよいよ私も限界を超えた力を手にしつつあるようだね、フッフッフ・・・。ただの作者のミスとか言わないで。』



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