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第十一話 24レベで上げきれなかった人とかいないのかな

魔王を倒す為の、レベル25キャラ量産作戦。

他のプレイヤーを勧誘して装備を渡し・・・レベルを25まで上昇させる作業は順調に進んでいた。


レベル上げは全員ひとまとまりでは無く、効率を重視して五人一組のパーティで行われた。

レベルの高いプレイヤーと低いプレイヤーを満遍なく配属する事で、低レベルプレイヤーのレベル上げを高レベルプレイヤーが手伝うスタイルだ。

そして、誰かがレベル25に到達した際にはそのプレイヤーをパーティから外し・・・代わりにまた別のレベルの低いプレイヤーを加えるという寸法だ。

この方法で不働達は一人ずつレベル25のキャラを増やしていった。

そしてボス戦の際には不働やヘルメラといった強力なプレイヤーが同行し、皆を最後の町グンドラーゼのある6-1エリアへと連れて行くのだ。


・・・一方で、レベル25へと到達し辿り着いたプレイヤー達には、6-1エリアにて素材アイテムを収集し・・・装備を整えるお金を集める作業が割り当てられる。

元攻略最前線組、リーダーは彼らを統括して集めたお金で装備を買う役目を担っていた。


この日も一定数の装備を購入した彼は、グンドラーゼの町の武器屋から出てきていた。


(・・・ふう、少々買いすぎたかな?まあどうせお金は無限に手に入る、いくらあっても損という事はないだろう。)

パンパンに膨れ上がった道具袋を置くと、リーダーは一息ついた。


すると・・・ふと街角に見慣れぬ四人組を見付ける。

ここに到達したプレイヤーは全て把握している筈だが、リーダーは彼等に見覚えが無かった。


(見た感じ、プレイヤーの様だが・・・。)


不思議な目でこちらを見るリーダーに気付いたのか、四人組は彼の元へ歩み寄って来た。


「やあ・・・君も魔王を倒す為に冒険を続ける者だよね。・・・ここまで来るとは相当な手練だと伺える、良かったら僕達と共に戦ってくれないかな?」

彼等を率いていると思われる戦士の男が言った。


「・・・。」

リーダーは少しの間何か思惑ありげに顎をさすっていたが、すぐににこやかな笑みを浮かべた。


「ええ、ええ・・・勿論ですとも。是非ご一緒させていただきたい。私はリーダーという名前でプレイしております。」

「そう、それは良かった!早速自己紹介させて貰うよ!」


ぺらぺらと自己紹介を始める四人。

リーダーは一瞬鋭い目で彼等を見た。


(ふむ、私のこの名前に対する反応は無しか・・・。)




・・・。


四人に加えてリーダー・・・五人組は酒場へと移動していた。

注文を済ませると、リーダーが微笑みながら問いかける。


「それにしてもたった四人で軽々とこの町まで到達するとは・・・随分とお強いんですなあ。」

「軽々・・・では無いけどね、でも四人で力を合わせたからこそここまで来る事が出来た。」


戦士の男が言うと、彼の仲間達も顔を見合わせうなづいた。

リーダーもほうほう、と頭をうなづかせる。


「では貴方がたは随分と硬い絆で結ばれているのですね。ここに来る前は共に何か他のゲームでもプレイされていたのですかな?」

「・・・。」


すると、彼等は何故か一瞬固まってしまった。

・・・少し遅れて戦士の男が快活に答える。


「ああ、僕達はずっと四人で旅を続けてきたんだ。」

「・・・ふむ、そうですか。」


またしても何度か頭を下げうなづくリーダー。だがその目には再び鋭いものが宿っていた。


(なるほど・・・やはりそうか。だったら・・・。)


すっと立ち上がると、リーダーは机の上に道具袋の中身を広げた。

この町で最高の値段を誇る最強装備がずらりと並ぶ。


「これはちょっとした事情で買い集めた物です。どうでしょう?お近付きのしるしにこの中から好きなものを装備しては?」

「それは本当かい!?凄い・・・これならすぐにでも魔王にさえ挑めそうな気がするよ、ありがとうリーダー君!」


そう言うと四人はあれこれと装備品を物色し始めた。

それを見守りながら、リーダーは裏でそっとメニューを開きフレンド欄から不働への通話ボタンを押した。


『・・・リーダーか、どうしたんだ?』

『ああフドウ君、ビンゴだよ。・・・前に君が言っていた四人組と今エンカウントしている。』

『・・・!!なんてグッドタイミングだ、ちょうどこっちもそっちに向かおうと思ってた所だ。すぐに向かう、足止め出来るか?』

『うむ、任せてくれ。』


それだけ言うとリーダーは通話を切った。

ほぼ同時に、装備を整え終えた戦士が声を掛ける。


「リーダー君おまたせ、準備完了だ!すぐに出発できるよ!!」

「ああ、わかった。」


にっこりと、リーダーは微笑んだ。



町を出るべく出口へと向かう一行。

だがリーダーは彼等を教会の前の看板の所で留めた。

『詐欺に注意』と書かれた看板の所で・・・。


「すまないが、もう一人仲間が来るんです。ここで待ち合わせしてるのですが・・・」

「ええ、それは構わないけれど・・・おや?」


戦士の男は視界の片隅に、何か物凄い勢いでこちらに走り寄ってくる影を捉えた。

・・・他でもない、それは鬼の形相の不働だった。


「見付けたぞ・・・お前ら!!」

「・・・っ!!」


ドキリとした表情を浮かべる戦士達。


「どうしたんだい・・・君は一体・・・。」

「忘れたとは言わせない、今度こそこいつで叩きのめしてやる・・・!俺の装備の恨み・・・晴らさせてもらう!!」


言いながら不働は『詐欺に注意』の看板を引き抜いた。

そう、彼らこそ以前グンドラーゼの町で途方に暮れていた頃の不働から装備を盗んだ・・・詐欺冒険者グループだったのだ。

鬼の形相で、不働は彼等を睨んだ。


すると、そこにいたリーダーが彼にそっと囁く。


「フドウ君・・・間違いない、彼等はNPCだ。」

「NPC・・・だと?」


NPC、ノンプレイヤーキャラクター。

不働や和來の様に現実の人間プレイヤーが操作しているキャラクターではなく、彼等はこのゲームに予め仕込まれた・・・いかにもプレイヤーが操作しているかのように見せかけたゲーム内のキャラクターだとリーダーは言うのだ。


「君の話を初めて聞いた時から疑問には思ってはいたんだけど、実物を見て確信を得た。流石はこのデレナイクエスト、随分と精巧にはプログラムされているようだが・・・このゲーム歴40年の私の目には隠しきれなかったようだ。・・・独特のNPC臭さがね。さしずめ彼等はプレイヤーの装備を奪い取ろうと狙う、盗人お邪魔キャラという所だろう。ご丁寧に詐欺に注意なんて看板が作られてるのが何よりの証拠だ。」

「本当か・・・俺には全く気づけなかった、やるな。」


流石は自身の倍のゲーム歴を誇るだけはあるリーダー、不働は感嘆するばかりだった。

そして・・・正体を看破された戦士達はその本性を表した。


「くくく・・・バレては仕方あるまい、俺達は魔王様の命令で冒険者から戦力を奪い取る命を受けた盗賊よ。こうなればこのまま力ずくで貴様らの装備品を奪い取ってくれよう。」

「・・・勿論俺らは抵抗するぞ?」


これで・・・!とばかりに看板を構える不働。

戦士改め盗賊の男はそれを嘲笑った。


「くくく、それは頼もしい事で。だが生憎こちらは四人、そちらはたった二人。ご丁寧に同じ装備を与えてもらった以上、単純計算でも倍の戦力差があると思うのだが・・・。」

「ああそうだな・・・十倍近くのな。」


意味深な笑みを浮かべると不働は指笛を響かせた。

すると・・・どこからとも無くあちこちから全く同じ服装をした者達がわらわらと集まってくるではないか。


「こ、これは・・・!」

言葉を失う盗賊達を囲む様に彼等は立ち並ぶ。


ばばばばばばばばっ!!


「待たせたな、フドウ。」

「かっこつけてんじゃねえよ、兄しゃ。」

「姉御!こちらの準備は万端です。」


女騎士ヘルメラ、それに和來ら攻略最前線組を初めとしてジックーら次点組・・・加えてあちこちの名うてのプレイヤー達が集合していた。

皆同じ最強装備、レベル25で。


完成していたのだ・・・!魔王を討伐する為に組織された最強のパーティが。

総勢38人もの大軍団が・・・!

その圧巻に盗賊達の顔はみるみる青ざめて行く。

不働はそれを見て勝ち誇る様にニヤリと笑った。


「さあお前達、やってしまえ・・・!」

「うおおおおっ!!!」

「うわあああああ・・・!!」


不働の号令で飛び出す一同。

盗賊達はその荒波にあっという間に飲み込まれた。





・・・。

やがて嵐は去った。

完全勝利。不働達は盗賊を完膚無きまでに叩きのめした。


「オオオオオッ!!」

皆は勝利の雄叫びを上げる。




「き、きたねえぞ・・・待ち合わせしてるのは一人だけって言ったじゃねえか。俺達を騙しやがったな。」


ボロボロにされ干からびたカエルのようにひっくり返りながら、盗賊の男は近くにいたリーダーを睨んだ。

それに気付いたリーダーは小さく息を吐くと、先程の騒ぎで近くに転がっていた看板を拾い上げ・・・その杭の部分を男に突き刺した。


「がっ!!」

「ふっ、そうだね。だからご丁寧にこんな看板が作られているんじゃないかい?『詐欺に注意』ってね。」



トドメを刺され男は光となり消滅した。

何のドロップアイテムもない。本当にタダのお邪魔キャラだったようだ。

それを見届けると、再びリーダーは小さく息を吐いた。


(ゲームバランスはさておき、このゲームは他の部分の完成度は高い。ここまでの冒険でもバグの類は一切見られなかった。不働君、君はこの町には6人ものプレイヤーがバグで迷い込んだと言っていたが、やはりそんな筈は無かったんだ。今回の盗賊も予め用意されたイベントでバグではなかったしね。だから不働君・・・君はこのゲームのたった一つのバグなのだろう。)


リーダーは少し離れた所で不働が楽しそうに談笑しているのを見つけた。ヘルメラと一緒だ。


(そう・・・今回の事ではっきりと分かった、やはりバグはたった一つだったんだ・・・。)


リーダーの視線はそのバグに見舞われた存在ではなく、隣の女騎士へと向いていた。




《和來ちゃんのデレナイクエスト・大攻略》

経験値編

『魔物を倒した時に得られる経験値の量はパーティの人数によって決まるよ。戦闘終了時に生存していたプレイヤーみんなで割るんだ。つまり人数が増えれば増えるほど戦力は増すけど一人一人が貰える経験値は減る・・・。だからやろうと思えばゲーム内の千万人ものプレイヤー全員でパーティを組む事もできるけど、最終的に一人一人のレベルは7とかになるだろうね。そんなの敵の全体攻撃で一瞬で消し飛ぶぜ。超弱い。』

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