僕をもらってください
風が少し冷たくなって
金木犀の香りがしてきた
久しぶりに始まった早起きにも慣れ始めたころ
僕は天使をみた
正確に天使なのかと言うとそれはわからない
ただ、いま、目の前に背中から白い翼が生えた女の子が僕と見つめ合っているというのは事実だ
「あなた、私のことがみえるの?」
天使らしき彼女が僕に尋ねる
「…ふつうにはっきりくっきりみえていますけど」
思ったままの答えを返すと
「へー!!あなたとても珍しい人間みたいね!」
彼女は一気に僕との距離をつめてきた
僕のことをくるくるくるくる飛び回りながら観察してくる
「あの、ちょっと目まぐるしいので落ち着いてほしいんですけど」
こうも間近で飛び回られるのは初めての経験であり鬱陶しい…
「ごめんなさい!なんだかこうやって喋れるのも久しぶりで!」
笑いながら彼女はいった
「よし!決めた!私ね、一応人間界でいう恋のキューピットなの!
あなたの恋叶えてあげる!」
やはり天使だったんだ
その事実に嬉しくなった
「へー!!恋のキューピットなんてすごいや!!
そんな子に会えるなんて!」
「あなたの恋を叶えたいから、あなたの好きな人がいれば教えて!!」
僕の好きな人か…
「小さい時、僕が5歳くらいの時からずっと好きな子がいるんだ…」
「なになに!もっと詳しく!!
すごくやりがいのありそうな恋愛じゃない!!!」
彼女は目を輝かせて興奮気味だ
「ここの近くにある公園なんだけど、そこで今の僕くらいの女の人と会ったんだ」
5歳の時
お母さんに叱られて泣きながら公園のベンチに逃げた
その時綺麗な女の人が声をかけてくれた
「せっかくの可愛いお顔が台無しよ!」
笑顔がとても素敵だ僕は息を呑んだ
「ぼく、おねえさんにひとめぼれしたみたいです!
けっこんしてください!」
女の人はとてもびっくりしてから、一呼吸して、
「こんなに小さいのに立派な男の子なのね!」
今思えばすごくませた子供だったに違いない
「そうね、あなたが大きくなって、私のこと探し出してくれたら結婚しましょう!」
とびっきりの笑顔で女の人はそう言った
「…うん!やくそくだよ!」
「その時の笑顔忘れられないんです」
天使は何も言わない
「その人もその綺麗な白い翼が背中からはえていました」
黙っていた天使が口を開く
「…あなたの恋
叶えます」
泣きながら彼女はぼくに抱きついた




