MISSION1
「貴方にとっては、弟みたいなものだ。気を使わなくてすいません、エドリア」
表情を固めて息をのんで立ち尽くし、どう反応していいか分からないといった目をするエドにシューラは頭を下げる。
こんな頼りなげな顔つきの彼を、シューラはいままで見たことがなかった。
どんな時でも人を喰ったような表情を浮かべているのが常で、平常心を欠くくらいに動揺をしているのは明らかであった。
「なんか、俺にはアイツが死んだだなんて信じられそうにない」
こんなに動揺して、仕事をこなせるのか。
今だけでも、落ち着け。
エドはどうにか胸の中の感情を圧し殺そうと必死に努めて、ゆっくり息を吐き出しながら目を伏せた。
ジリジリジリジリジリジリジリジリ!!!
けたたましく警報がフロア内に鳴り響き渡り、慌ただしく警備の人間たちが駆け回り始める。
あー、かなり時間が経ったな。
そろそろ限界だったかもな。まあ、カートにしちゃあ良く我慢した方かもしれないね。
タイミングとしては、バッチリだ。
ヤル事があれば余計な気回しや、考え事をして空回りすることはない。
思い悩むのが、一番の大敵だからな。
「騒がしいな。VIPルームの方みたいだ」
そわそわしたように、警報を聞いたシューラがすぐに駆け出しそうに動くのを見て、エドは慌ててその肩を掴んだ。
「ちょっと待てよ。シューラ、そいつは俺の仕事みたいだ。お前が行くと更に大事になるから、ここで待っててくれないか」
昔から好奇心が旺盛だったシューラの性格は変わらないようである。
でも、躊躇わずにすぐにVIPルームに向かおうとしたってことは、もしかすると…...。
「あそこに入るパスワード、知ってるなら教えてくれないかな」
「あんた、一体なんの仕事してるんだよ」
「それは、守秘義務かもね」
問いかけに答える気はないとばかりの表情を浮かべて、人にものを頼むような態度とは全く思えない様子でエドは笑みを返した。