表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

第四章

 首相が死んでから、二か月が経った。

 メートヒエン郊外の商店で、新聞を買った少女がいた。

 普通、こんな年齢の少女は新聞を買ったりはしないものだが、この日ばかりは店主も然程不審には思わなかった。

 この日の一面記事は、エルガロードで起こった事件の最終章だからである。

「……」

 少女は無言で記事を読む。その記事の内容は、要約すると以下のようなものだ。

 二か月前、エルガロードで起こった爆発。それは事故ではなく、やはり魔法テロリストによる仕業だった。しかも、彼らが用いたのは爆弾ではない。魔法ですらない。それは、砲弾だった。このことが判ったのは事件後さほど経っていない頃だったが、果たしてその『砲』がどこにあったのかがわからなかった。その目星がついたのが先日で、今日がそれを引き揚げる日である。

 エルガロード港から沖へ出て少し南下すると、小さな島がいくつかある。その島の裏側で見つかった沈没船。それこそが、魔法テロリストが用いた即席砲艦の残骸だとされた。

 その引き揚げ調査が今日行なわれる。もっとも、現場は危険であるとして厳重に封鎖されているため、近寄ることはできない。多くの市民は、それがわかるとこの事件から興味を失い、新聞を捲る。

 しかし、少女は違った。その記事の端に書かれていた、小さな記述を見逃さなかった。

『魔法テロリストの活動が活発化したことを受け、政府は病院刑務所に収容中のヨハンナ・シェッファーを近日中にも設備の整った施設へ移送、懐柔を図る見通し』


「そんな情報を漏らす政府があるか」

 レイ・ルイーネは露骨に訝しんだ。ミゥが持ってきたこの情報は、どう見ても何かの陰謀が絡んでいるとしか思えなかった。

「例えば、移送車両を私たちが狙うと想定して、おびき出すとか?」

「そういうことだ」

 ぶっきらぼうに言い、レイは手元の本に目を落とした。ナレッジ魔法図書館に陣取ってからというもの、彼の一日は読書だけで消費されていた。

「一体何をそう熱心に調べてるわけ?」

 ミゥの問いに対し、それに答えることすら面倒だとでも言うように鋭い視線を送ると、無機質な声で返事をした。

「蘇生魔法だ。ミークを生き返らせる方法がないか探ってる」

「は?」

 ミゥは呆れた。そんなことができるはずはない。だがレイは言葉を重ねる。

「普通は無理だが、ここは世界最高の魔法使いの城だ。そして俺は世界最高のマジックアイテムトレーダーだ。そして、今俺の手の内に、世界最高かつ最低の魔法工房の娘までいる。これなら、何かできないとも限らない」

「……」

 ミゥは二の句が継げない。しかし、レイの顔を見るに、どうやら本気らしい。

「じゃあ、とりあえずヨハンナは放置していていいのね?」

「構わない。そもそもあんな女、死のうが生きようが知ったことか」

 ページを乱暴に捲りながら言う。冷め切った紅茶を飲み、ミゥが買ってきたパンを食いちぎり、本に没頭する。

「これだ、これは基礎理論に使えるぞ」

 ペンを走らせ、汚い字で本の内容を書き写す。傍から見れば、世紀の大発明を目指す異端学者のようにも見える。

 だが、間もなく発明王レイは、手をピタリと止めた。

「おい、ミゥ」

「?」

 帰り支度をしていたミゥも手を止める。

「ヨハンナの移送先と期日、もしわかったら教えてくれ。いや、よく考えたら……殺さないといけない」

 ミゥはレイの意図を悟り、小さく笑みを浮かべた。


 そして数日後、その情報をレイに渡した彼女は、メートヒエンへ戻った。今回の休暇を終え、再びマーリン家で仕えるためである。

 メートヒエンの駅で列車から降りた彼女は、徒歩でマーリン家へ向かう。当然ながら、メイドに迎えの車など寄越されない。

 その姿を、建物の陰からじっと見る者があることに、ミゥは気付かぬふりをした。

 OUOSVAVV

D     M

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ