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第二章

 エルガロード市街地のホテル。休暇をこの場所で過ごすことが多くなったミゥ・ヴァイスハイトも、その轟音に仰天した。

「な、なに?」

 窓へ駆け寄ると、表が慌ただしい。道路は逃げ惑うように走る人々で溢れているが、家々のベランダには野次馬のように一方を見つめて指差してを繰り返している連中がいる。

 その方向は、市庁舎の方角であった。

 部屋を飛び出すと、既に廊下に出ている他の宿泊客も多かった。皆一様に窓にしがみつき、突如始まった非日常に見入っている。

 ミゥもそれに倣うと、すぐに異変が目に飛び込んで来た。市庁舎の方角、エルガロードの中心地からやや海側の位置から、黒々とした煙が上がっている。それも、小規模な火事のレベルではない。街のブロック一つ程度が丸々、機関車の煙突と化したかのような、大きな黒煙だった。

 しばらくその煙を見つめてから、ミゥはホテルの一階へ降りた。ロビーに置かれているラジオに、群がる人々は何も喋らない。ロビーには、ノイズ混じりのラジオの音声と、表から聞こえてくる人々の悲鳴だけが響いていた。

 ラジオの音声は不鮮明なだけでなく、その声自体がパニックの色を呈しており、人混みの山越しに聴いているミゥは、何を言っているのかうまく聞き取れなかった。

「すみません、何があったんですか?」

 前にいた中年の男性宿泊客に声を掛ける。男性はミゥを振り返り、一瞬声を詰まらせた。醜い顔の男ではなかったが、ミゥのような若い女と話す機会など、既にほとんど失っているのだろう。

「ああ、どうも公園のあたりで爆発事故があったらしいんですよ」

 丁寧な口調で男性客は教えてくれたが、そんなことはミゥも把握している。

 何が、何故爆発したのか。そういった情報は、まだ入っていないらしかった。

 ミゥはそのままラジオに耳を傾け続けた。相変わらずよく聞き取れないが、断片的に情報は得られた。爆発が起きたのは、市庁舎よりも港の方に近い位置。そこには、大きな公園がある。付近にはレストランがいくつかあるが、行政機能に影響するような施設はない。死者、負傷者はかなりの数に上るものとみられるが、詳細は不明。道路は封鎖されている。等々。

 まるで想像した通りの情報ばかりしか手に入らないとみたミゥが、部屋に戻ろうと立ち上がる。既に部屋に戻った宿泊客も少なからずいた。これ以上ラジオに喰いついていても、意味はないだろう。ミゥは階段へ向けて歩き出す。

 しかし、その瞬間だった。

 ラジオの間近にいた若い男性が、声を上げた。

「何だと!」

 明らかに異常を感じた彼の声に、ミゥも立ち止まってラジオの前に戻った。他にも数名、ラジオに興味を失っていた客が再び注目し始める。

「どうしたんですか?」

 ざわつく中、ラジオの音声も甲高いものになっている。最初に声を上げた若い男性が、周囲を見回して言った。

「首相が死んだ! 爆発に巻き込まれたって!」

 ホテルのロビーに、大きなざわめきが生じた。

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