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竹田くん1日、前半戦!


「うおっ!今かすったぞ!熱い!痛い!」


「えぇい!うるさいわ!それも全て貴様の強行のせいじゃろがい!」


「馬場美濃守!それが誉ある武田家の当主に対する口の聞き方か!傷つくぞ!」


「傷ですんでるだけマシだと思え諏訪の若造!全く、貴様のせいで不死身の名も返上だ!次は儂か…山県殿は先に逝ったしの」


「いや、まて!許さぬぞ!これは命令だ!戻れ馬場!」


「誰が諏訪の若造の命令など聞くか!こっち向くな!愚か者が!皺が増える!」


「お前ら本当に最後容赦ねぇな!クソっ!泣くぞ!」


「当たり前じゃ。再三の引き止めも無視しおって!顔も見たくないわ!……絶対にコッチに来るんじゃないぞ、四郎勝頼!」


弾丸が精強なる武田兵達の命を刈り取っていく中、こいつらは絶対に死なないと思っていた父の代の化物家臣達。そんな、いつもうるさい目の上のタンコブである爺共が次々に死んでいった。己を守って。





「……会いに行くにはバツが悪ぃなぁって天目山で腹切る時に思ってたなぁ。ったく。腹切りなんて2度とやらねぇよ。くっそ痛かったし」


モゾモゾとベットから身体を起こす竹田くん。時折見る前世の夢という奴だ。現世の価値観からするとキチガイか狂人の集団達の思い出である。山県昌景とかマジでクソチビの癖に最後まで勝てなかったし。


「あの世があるか分からねぇけど…。言い訳はこの生が終わってからで許してくれよ。いや、ダメだ。馬場や山県以前に親父に殺されるかも…」


むしろ、死んだ後のことの方が恐ろしいというのも中々レアではないか。いや、戦国時代(ヒャッハー)に生きてたら大体死んだ後の方が恐ろしいか。


「ま、いいか。必死に頑張った分、今は気楽にいこう。なんか、未練がある奴は努力するみたいな展開は俺たちに求めるなよ」


こんなんだから、滅んだんじゃ…。なんてのは禁句である。現代日本に転生しすっかり腑抜けた男、竹田勝頼。


しかし、前世の幼い頃に厳しく躾られたものは魂にでも刻まれているのか妙に早起きである。


「……起こしに行くか」


いつもの日課をこなしに、ベットから降りるのであった。







「政!ご飯だぞ!起きろ!着替えろ!学校だ!」


「………有給使う…」


「残念だったな高校にその制度は無い」


「…ご飯…何?」


「卵焼きと焼き鮭、ご飯と味噌汁だ!安心しろ!ここでは味噌汁をご飯に何回継ぎ足しても誰も文句は言わん!」


「…ボクの後世に残る黒歴史を言われて傷ついた。寝る」


「あ、お母さん。鍵を貰えますか?いえいえ、全然、あ、ありがとうございます」


「…えっ?ちょっと待って。お母さーん!まさか渡して無いよね?えっ、嘘でしょ?ボク、女の子だよ?そんな、まさか」


「おいおい、お前まだパジャマなのかよ。ほら、早く着替えろ」


「うわぁぁぁぁぁぁ!なんで当然のように入ってくるの!ちょ、お母さーん!」


顔を真っ赤にしてはだけているパジャマを隠すように布団をかぶる。


「お前のお母さん、娘をよろぴくって言って仕事行ったぞ」


「あ、ありえない!高校2年生の女子の部屋に男を入れる親なんて聞いたことない!万が一があったらどうするの!親として!」


「俺らの時代、中二で子供産んでる奴ざらだから。お前のお母さんも同じ感性なんだろ?」


「四百年前じゃん!古すぎだよ!」


「ほらほら、いいから。着替えろ。それか飯だ。……あー、お前また髪がボサボサだ。ほら、こっち来い。といてやるから」


「…あっ…う…うぅぅぅ…」


部屋のドア(城門)が開いてしまえば後はチョロい。恥ずかしそうに俯きながらも身体を預けてくる。


「しかし、キミはよく飽きないね。毎日、毎日。家が隣だからって起こしにきてさ」


「お前のお父さんにお願いされてるからな」


「お父さんにも!?」


「まぁ、あんまり関係ないが。因縁も一周回れば情が芽生える。武田と上杉がいい例だ」


「いや、あれはあまりに落ち目の武田が哀れで……いたい!いたい!」


「その原因の1人が何言ってやがる」


「金に目が眩んだキミが悪い。……って、このパターンも飽きるほどやったね。幼稚園の頃に。そう、あれは初めての邂逅から約3年…」


「はい、終わったぞ。ついでに話も終わりだ。学校の行きたくないが為の引き伸ばし作戦はもう通用しないぞ」


「………はぁ…仕方がない。分かった、今日はボクの負けだ。着替えるから出ていってくれ」


「ほいほい、下で待ってるぞ」


「ち、ちなみに姉上は…」


「もういないぞ。お前と一緒に食べたかったからギリギリまで待ってたけど、今日は諦めた」


「なら良し。すぐ行くよ」


「いや、お前姉さん嫌いすぎるだろ。いい人じゃないか、お前のことも随分と気にかけているし」


「2度目の生も出涸らしのボクの気持ちはキミには分からないよ!」


バタンと大きな音を立ててしまるドア。かなり力が篭っていた。


「………泣くなよ…」


たまに踏み抜く地雷。啜り泣きながら着替える音が聞こえる。


「ほっとけるか、あんなの」


親に頼まれたから。それもあるが、何よりほっとおけないだろう。あんな性格なのに、前世でボロクソだ。いつ、ヤケになるか分かったものでは無い。


「……………」


「ほら、悪かったって。手ぇ繋ぐか?」


「………………………………………ッコク」


俺も最後裏切られまくったから、疑心暗鬼になるのも分かるが馬鹿だったからなぁ。政は変に聡いから余計辛いのだろう。軽く情緒不安定なきらいがある。


さしずめ俺は精神安定剤代わりだろう。元宿敵がだ。皮肉なもんだが、咎める相手は誰もいないのは確かに気楽ではあった。





「あっ、やっぱりお味噌汁は2回かけるのね」


「……何度も言うけど計れないんじゃなくて、癖なだけ。勘違いしないで」


「はいはい」


まぁ、突っ込むとすればそんな食べ方をJKがするのはどうかと言いたいが…これが彼女なりのアイデンティティなのかもしれない。口を挟むのは不粋だろう。


「……あっ…多すぎた…」


「……………………」


………何も言うまい。







「やぁ、おはよう。二人とも……なんで政ちゃん涙目なの?」


「泣いて無いし。泣いたこと無いし。むしろ泣くって何?」


「鏡見れば分かるよ」


「ねぇ、勝頼。コイツから香る香水の匂い彼女のじゃないよ。風魔、風魔」


「そうだな、報告しないとな。透波、透波」


「ごめんなさい。だから、忍者組織の名前を出して脅すのやめて!」


悲鳴が通学路に響く、蒼天の青空が気持ち良い1日はこうして始まるのであった。



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