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カミサマのマネゴトを

作者: だいしつげん

まだマネゴトさえしていないw


ポツリポツリと書いていく予定です。なので短編。

まずは「降臨までの経緯」を





「神様の真似事」を始めることになりました。わっしょい。


 何故? と問われれば、声を掛けて頂いたから、と答えます。

 此方の世界の外から来た、彼方の世界の推定神様に。


『其方の如きモノを探していたのだ!』


 やっと探し当てたと言わんばかりの。


『まさかまさか、破棄地の片隅でこうも珍奇なシロモノを見付けようとは!』


 それはもう嬉しそうな晴れやかな。


『これは考えを修正せねばならん。破棄地に蔓延る無用の塵芥にもそれなりの価値があるのだと。不可思議を潜ませ“この吾に”発見させるという、重要にして崇高な役割を担う程度には』


 破棄地? 塵芥ってナンノコト?


『それにしても呆れるほどに矮小であるな。我ながらよくぞ気付いたものだ。流石は“全てを見通す偉大な吾”。いつもながら冴えている』


 ……ナルシストというのは、端から見ると実に痛寒いです。


 神様へ対人コミュニケーションを問う事の無意味さは理解していますが、それでも、それでもこう、前振りというか事前通告というか、とにかく心の準備をする為の予兆なり予告なりが欲しかったと思います。

 何せ唐突に私の内へ轟きましたからねぇ。悦に入った自画自賛が(遠い目)。

 あの時は恐怖のあまり、ついに自分は発狂したのだと信じました。そうですね、当時の心境を無理やりに言語化すると、


「あは、あはは。ココはドコワタシはダレ? 神の声を聞いたとかないわー、ないわー……ヒハッ!」


 錯乱はしていましたね、はい。

 今となっては良い思い出です。……たぶん。


 当の神様曰く、異界において理想の素材を見付けたので(見つけた自分に)狂喜乱舞していたとのこと。


 皆様ここで疑問を抱きませんでした? 私は抱きましたよ。

 何故、造物主たる存在がわざわざ他神の創った世界へ足を延ばしてまで素材探しをしているのでしょう? 自分で創れば良いではないですか。

 その疑念が浮かんだ次の瞬間には、答えが「入って」きました。

 隣接する異界からの干渉。

 自身の被造物ではどうにも出来ない事態が発生したため、より強力な干渉力と存在力を持つ異界において、使えそうなモノを探していた、と。

 しかし同時に私は知ってしまいました。というか入ってきました。

 湯煙情緒たっぷりの温泉街をそぞろ歩く神様、名物料理に舌鼓を打つ神様、歴史探訪名所巡りをする神様……どうやらこのナルシストは異界というより地球、というより殆ど日本に居たようです。そして存分に観光を楽しんだ、と。


 何をしに来たと言っていましたっけ?


『問題ない』


 自信に満ちて、神様は言い切りました。己の行状を知られたことに対して、一片の気後れも無いようです。


『彼の地でそうして振る舞う中で其方を見出したのだから。吾が望み、吾が渡り、そして其方が有った。其方は吾の為の存在なのだ。これは運命である』


 世界は私の為に在るとか凄い宣言ですね、何様ですか。あ、神様ですか。

 屋台でイカ焼き食べていましたよね。ラーメン食べて舌を火傷していましたよね。温泉饅頭食べ過ぎてお腹を壊していましたよね。B級グルメがお好みですか、チョイスメニューのチープ感が半端ないです。

 ……もう、敬語を使わなくていいですかね?


『選ばれしモノよ!』


 はいはい。


 言葉を飾っても虚しいだけです。

 ぶっちゃけましょう。要は引き抜き、ヘッドハンティングじゃないですかこれ。

 自分やその部下の手に負えない案件に対して、外部の専門家を招いて解決させようと。正しい判断ですが浪漫もへったくれもありはしません。

 本当にヘッドハントなら此方に有利な条件を幾つも提示してくるし、私にも交渉の余地がある筈です。

 がしかし残念ながらこれはビジネスではなく、神様にとって私はどれほどに珍しくとも単なる素材です。素材なのです。

 私を見付けた神様が、一等最初に何をしたと思います?


 まずは神との接触で崩壊しない程度に私の魂魄を強化。次に神と人との意思の疎通を可能とする為に私の魂核内部へ無断干渉。神様自身の意識野? を通じて世界記憶とラインを繋ぎ、膨大、と言うのもアホなほど膨大な知識を問答無用で流し込んだ---そうです。


『なかなかに繊細かつ大胆な作業であった』


 ドヤ声がムカ付きます。


 人の魂魄を散々様々に改造した挙句、最後に「自我」を目覚めさせ、漸くに会話を成立させたそうですよ。

 

 会話、していましたっけ?


 私ですか? 勿論、悲惨ですよ。麻酔をかけて手術をしたわけではありませんから。加えて本来なら知る筈も知る必要もない情報が、経験が、知識が。

 最悪を通り越した最悪。狂気を超えた狂気。精神は一時ズタズタでもボロボロでもなくサラサラになりました。

 現実世界ではほんの一秒未満の出来事だったでしょうが、体感時間は……

 だというのに自死もできない、と。

 確かに耐えました。耐えられるように造ったのだから当然だとあの神様なら嘯きそうですが、「耐えられる」のと「苦痛を感じない」とはまるで別物なのだとは分かっていなかったようです。いえ、単に頓着しなかっただけかもしれません。

 刀工が、炎に炙られては叩かれ続ける鉄の気持ちなど頓着しないように、本当にかの存在にとって「これ」は些末事であったのでしょう。


 体感時間にして優に数兆年、叩かれ続けた素材の苦痛など。


 一連の魂への狼藉を、咎める者も止める者もついに現れませんでした。「破棄地」という言葉の意味が身に沁みます。


 我に返った時、ご満悦の体であったナルシストへ言ってやりたいことは山ほどありました---が、引き抜きに関しては速攻でお受けしました。

 え? 早い?

 でもその時の私の現状は、極め付けにシンプルだったのです。


選択1「約三分後、生まれ育った世界で死ぬ」

選択2「別の世界へ行き、ナルシー様に使役される」


 ほんの一瞬前まで、自死も出来ない狂気の世界を漂っていたのではないのか? と思う方もいらっしゃるでしょう。仰る通りです。


ですが、「タマシイ」についてのエキスパートらしい我が改造主は、恐ろしく周到でした。


 私の「こん」は永に続いた知識の流入に心底ウンザリしていて、最早、何もかもがどうでも良いという状態だったのです。

 けれど一方の「はく」は。肉体を司り、それ故に今まで殆ど機能していなかったその部分は。


 まだ意志ある者として在り続けたい、一生命体として生きたい……否、死にたくない。


 死にたくない。


 生命としての原始的な、実に真っ当で当たり前の毅い猛い、強い願い。

 選択の余地など無かったのですよ、はい。というか、この期に及んで私に選択をさせるというナルシーの性格の悪さといったらもう。

 汚い、流石カミサマ、汚い。


 兎にも角にも私は私が宿っていた肉から離れ、神様曰く『この世界の存在力をそのままに』彼方の世界へやってきました。

 そして神様が言葉正しく神の手で『粋を極め、凝りに凝って創った』器へと宿り、現在に至ります。


 ……まぁ、そこまでは良いんですがね。


 分からないのですよ! そのオートクチュールで一点モノな自分の姿が! 


 器に納まった私を見てナルシスト様がドヤ顔しましたから、さぞ素晴らしい造形だと期待も大きかったのに。

 鏡が欲しいです切実に! 


 しかし鏡は無い。というか鏡云々ではなく。


 問題は周囲の環境にありました。


 私の認識、つまりは脳内処理映像に於いて、周囲は全て白い靄なのです。四方八方上下左右、何処を見ても何処までも白、白、白の雲度10。 全く何も見えません。自分の手足さえ。

 こうまで視界が利かないなんて話が違います。

「神器」に宿された「神力」は世界の隅々まで届くのだと、雇用主たる自己愛神様は豪語されたのに。


『実に面倒なことになっているのだよ』


 ……ああ、なるほど。

 これが、世界が異界に侵食された結果ですか。


 話には聞いていましたが相当です。というかこの有り様では、先達たる神々の被造物なんて既に跡形も無いのではと推測せざるを得ません。

 ま、それならそれで良いんですがね。容易く異状に影響され朽ち果てるような原・神代の瓦礫になんて興味を抱く価値も無し。


 だからこその私。だからこそのヘッドハント。だからこその「カミサマのマネゴト」です。


 さぁ、始めましょう。





 まずはやはり「光あれ」でしょうか?













 鏡っていつになったら創れるのでしょうね……


自分の姿を知る為には鏡が必要だと思い込んでいるあたり、どれだけ膨大な情報を蓄えていてもこの主人公の頭はあまり良くないです。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、海の物とも、山の物ともつかないね。 海も山もまだ無いし(苦笑) シム・ワールド的な物になるのか、あるいは・・・ とりあえず、再びポツリと書かれた時 またのぞきにきます。
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