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「――これが俺の全てだよ、カミラ」
アーノルドは最後にそう言って、話を終えた。
こうして彼は包み隠さず、今までの全てを語ったのだった。
カミラは、一度も彼の話を遮ることなく耳を傾けていた。
「そう、だったのね」
自分が苦しんでいたように、彼もまた苦しんでいた。
そのことをカミラは今初めて知る。
「分かったわ、アーノルド。話してくれてありがとう。――だから、次は私の番」
彼は嘘偽りなく全てを語ってくれた。
カミラはその想いに応えなければならない。
だから、今度は自分の番だ。躊躇いはしない。
「アーノルド、私はね――」
そうして、彼女は彼に今までの全てを語った。
♢♢♢
アーノルドはカミラの言葉を最後まで真剣に聞いていた。
アーノルドに応えるため、カミラもまた嘘偽りなく全てを語ったのだった。
「ありがとう、カミラ。俺に全てを話してくれて。とても嬉しかった。それと、ごめん。俺は君を沢山傷つけてしまった」
彼はカミラに対して感謝と謝罪の言葉を告げる。
「いいの、アーノルド。私も嬉しかったわ。初めてあなたのことを知ることが出来たから。それとごめんなさい、私もあなたを苦しませてしまった」
カミラも言葉を返す。
アーノルドも「いいんだ、カミラ」と言葉を返す。
お互いに望まずして起きてしまった悲劇だった。だから、二度とこの悲劇を起こさないためにも、これから二人は話し合わなければならない。
二人には、まだ話さなければならないことがあった。今まで出来なかった分、とても沢山のことを。
決意を固め、先にカミラが言葉を紡ぐ。
「アーノルド、私からあなたにいくつか聞いてもいい?」
「何でも聞いてくれて構わないよ。全て答えるつもりだ。それと、俺もいくつか君に聞いていいかい?」
「もちろん、私だって全て答えるつもり。あなたに隠し事はもうしない」
「ああ、俺だってもう君に隠し事はしない」
二人は再度微笑みを浮かべた。
そして、お互いのことについて質問し合う。
二人はどこか照れ臭そうだった。けれど、決して遠慮はしない。
もう逃げないと決めたから。立ち向かうと決めたから。
お互いを知るため、二人は言葉を交わすのだった。
「アーノルド、あなたの好きな色は?」
「橙色だよ。優しい明るさだと思うから。君は?」
「藍色が好きなの。落ち着ついた色合いだから」
「なるほど、何となく君らしく思うよ」
「私もあなたらしいと思う。何となくだけど」
二人はおかしそうに笑う。
ただのカミラとして、ただのアーノルドとして、心からの他愛もない会話をしたのは、これが初めてだった。
だから、とても新鮮な気分だ。この時間がとても楽しく感じられる。
二人はさらに言葉を交わす。
相手のことをもっと知りたい。
「――アーノルド、あなたの好きな食べ物は何?」
「――カミラ、君の趣味を教えて欲しい」
二人は時間が許す限り、お互いのことを知るため話し合う。
この時、いつもすれ違っていた二人は、ようやく心を通わせ合うことが出来たのだった。




