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カミラはどこかの場所でひとり座り込んでいた。
不思議に思う。
ここは夢の中なのに。先程先生に薬で眠らされたはずだ。
だから今の自分は完全に眠っているはずなのに、どうしてか意識はあるように思える。
頑張れば体を動かせるかもしれない。
けれどカミラはそのまま座り込んだままで、立ち上がることはしない。
いや出来なかった。
そんな気力は残っていない。
ただ、涙を流すだけだ。
信じていた。信じていたのに。
ああ、どうして……。
何を間違えたのだろう。何がいけなかったのだろう。
おそらく全部だ。
私は、カミラ。
カミラが『彼女』ではなく私だったからいけなかったのだ。
だから、アーノルドは『彼女』を選んだ。
だから先生に裏切られた。
皆から親愛の情を向けられているのは私ではなく『彼女』なのだ。
だから誰も私に助ける価値を見出さなかった。自分はただ報いを受けただけ。考えればとても簡単なことだ。
私は、いないままの方が良かったのかもしれない。
その方が皆幸せになれたのだ。
私がいるせいで、皆ハッピーエンドになれない。
分かりきったことだった。
恋は罪だという。
だが、私が私でいることもまた許されてはならない。
カミラは夢の中でひとり泣き続ける。
ずっと泣いていても、涙は枯れない。
このまま消えてしまいたかった。
そうだ。
このまま自分が消えてしまえば、『彼女』が戻ってきてくれるかもしれない。
そうすれば、何もかも元通りになってくれる。
もう一度ハッピーエンドが訪れてくれる。
そう考え、カミラは最後の気力を振り絞ってゆっくりと立ち上がった。
夢の中でカミラがいるその場所は、二年前に彼女が飛び降りた学園の屋上に、あまりにも酷似していた。
カミラはおもむろに歩みを進める。
前へ。前へ、と。
夢の中で再現された学園の屋上は、どうやらとても不完全な代物だったらしい。
屋上の縁に立って下を見れば、まるで奈落のようで地面はなくどこまでも暗い闇が続いている。
前回は運良く助かった。
でも今度は流石に助からないだろうと、カミラは思う。
でも、それでいい。
そうでなけれはならない。
それが正しいのだから。
そう何度も呟いて、カミラは奈落へと足を踏み出した――
♢♢♢
先生は、静かに寝息を立てているカミラを見下ろす。
深い眠りについたカミラは少しの衝撃ではまるで起きる様子はないだろう。
そのことを確認して、先生は彼女から目を離さず扉の前にいるある人物に声を掛けた。
「先程カミラ君は眠ったよ。君も具合が悪そうだし、彼女と一緒にしばらく休むといい。なに、ベッドには空きがあるから、気にする必要はない」
そして先生は、声をかけた人物の方を向く。
「それとも男子寮まで送っていこうか? このまま何も見なかったことにすれば、全てが上手く解決すると思うがどうするかね? ――アーノルド君?」




