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 夜のうちに考えをまとめてカミラは朝早くに医務室へと向かった。


 基本的に、カミラは生徒会の仕事の合間の休み時間を利用して先生と会っているが、それが習慣化する前は医務室に行く頻度は朝が多かった。事故直後はよく自身の身体の具合について訊かれたものだ。


 ゆえに、朝早くであっても先生は医務室にいつものようにいるだろうと踏んで訪れたのだが──


「開いていない……?」


 カミラが扉に手をかければ、扉は固く閉じられていた。鍵がかかっていて、びくともしない。

 驚いて視線を横にずらせば、すぐ近くの壁には貼り紙があった。


 内容は『急用が出来たため、現在留守にしている』というものだった。


 珍しいこともあるものだ。そうカミラは感想を抱く。いつも暇そうにしている先生に用事とは……。

 しかし、昨日は来客があるとも言っていた。もしかしてそれに関係しているのかもしれない。


 暇でなくなるのはいいことだ、仕方ない、とカミラは自分を納得させると踵を返す。相談相手である先生がいないのではどうしようもないため、カミラは少し時間が早いが生徒会室に向かうことにしたのだった。


 休憩時間にはおそらく先生も医務室に戻ってきているだろう。

 解消出来ない不安を抱えたままアーノルドに会うのはあまり気が進まないが、とにかくカミラは頭から感じている不安を一旦強制的に追い出して生徒会の仕事を行うことに決めたのだった。


 ♢♢♢


 しかし、嫌なことは考えないようにするといっても、やはり限度というものがある。自分以外の誰もいない部屋で黙々と仕事をこなしても一秒一秒、時間が経つごとにカミラの気が滅入っていく。それに伴い、仕事の効率も無意識の内に落ちていく。


 仕事開始の時間が近づき、生徒会の役員が一人、また一人と生徒会室に入ってくる。そのたびにカミラは相手と挨拶を交わすが、内心、冷や汗を流す。次に入室してくるのがアーノルドかもしれないと、焦りを抱くのだ。


 他の役員に「朝早くから勤勉だね」と褒められても、正直カミラの心はそれどころではなかった。

 カミラの中の焦りが徐々に違和感へと変わっていく。


 なぜなら、もうすぐ時間だというのに、アーノルドの姿は見えなかったのだ。真面目な彼は、いつも規定の時間になる前には必ず席に着くはずなのに。


 遅刻だろうか。アーノルドが……? どうしてかカミラは何かがおかしいと感じ始めていた。


 役員は粗方集まり、残すはアーノルドと少女だけとなった。


 そして生徒会の仕事の開始時間となりかけた時、慌てるように生徒会室に入ってきたのは、少女だけだった。


「すみません、少し遅くなりました」


 そう皆に謝罪して席に着く。彼女はすぐさま仕事にとりかかった。


 役員は皆集まっていた。アーノルドだけが生徒会室に来なかった。




 しばらく後になって、彼は体調が芳しくないため今日一日欠席するという旨の連絡が届いたのだった。


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