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「そういえば、今日の休憩中、カミラさんはどこへ行っていたんですか? 最近、頻繁にどこかへ消えているような気がします」


 話題を変えて、少女はカミラに訊いた。


「医務室に行っていたの。先生には先日の事故から何度もお世話になっているからお礼を言わないといけないし、それに少し相談もしたかったから」


 そう返せば、少女は何故か不思議な顔をする。


「……そう、ですか。また(・・)ですか……」

「それがどうかしたの?」


 カミラは訊いた。少女がカミラの言葉に違和感を覚えているようであったからだ。


「いえ、少し既視感を覚えただけです。まるで二年前を再度繰り返しているような感覚だったもので……」


 そして、少女は思い違いだという風に首を横に振った。


「これまでお世話になった先生にお礼を言うのも当然のことですし、親身になってくれたのだから相談する相手に先生を選ぶのもおかしくはありませんよね」


 少女は半ば独り言に近い声でつぶやくと、誤魔化すようにして言った。


「何でもありません、カミラさん。私の思い過ごしだったようです」


 少女の口振りをカミラは気になった。二年前を繰り返しているというのは一体どういうことだろうか。

 そのことについて尋ねようとすれば、強引に話題を変えられる。


「今日、カミラさんとアーノルドさんが生徒会に帰ってきた時、妙にお二人が余所余所しく感じられのですけど、もしかしてアーノルドさんと何かありましたか?」


 突然投げ掛けられたその問いに対して、カミラは感情を抑えて極めて冷静に努める。


「そう? 別に何もなかったわ」


 カミラは出来るだけ自然な声音で答えた。


「そうですか。それなら私の思い違いのようで良かったです。何だか、帰ってきてからというものどこかお二人がぎくしゃくしているように思えてしまって」


 少女は、「すみません」と頭を下げて謝った。


「別に気にしてはいないわ。むしろ私達のことをとても気にかけてくれて嬉しく思うくらいよ」

「当然ですよ。何せ、お二人は私の友人です。気にかけなくてどうしますか」


 少女は笑みを浮かべた。

 カミラも笑う。


「甘々カップルさん達と過ごすのも、もう二年です。そろそろお二人の間の機微を察することに慣れてきたと思っていたのですけど、どうやらまだまだのようですね」


 少女は溜息を吐いた。カミラは落ち込む彼女を慰める。


「気を落とすことはないわ。私達の間に第三者が立ち入る余地はないのだから。たとえ、親友のあなたでもね。まあ、頑張りなさい」

「最近、少し変わってきたと思ったのですけど、本当にそこのところだけはぶれませんね、カミラさん……日々精進しますよ、はい」


 再度二人は笑い合った。


 ――そう、分かるはずがない。自分たちのことを。


 だって、当人であるカミラでさえ、相手の心情をまったく理解出来ていないのだから教えて欲しいくらいだった。


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