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最後部分を修正しました。
気がつけば、カミラは見知らぬ場所にいた。
「ここは……どこ?」
自分は今、椅子に凭れて、どこかの中庭のような場所にいる。そこは学園でもないし、自身の家の中庭でもない。小鳥のさえずりが聞こえていて、吹く風が体に心地いい。
この場所は、カミラに覚えがない。だが、どこか馴染み深いような気がする。本当に、ここはどこなのだろうか。記憶を思い起こそうとして、
「ああ、起きたのかカミラ」
カミラの前に現れたのはアーノルドだった。彼は、カミラの傍らに来て、穏やかな様子で話しかけてくる。
「気持ちよさそうに寝ていたから、起こすのを躊躇ってしまったよ。それとも起こした方が良かったかな?」
彼の雰囲気は、実に落ち着いていた。そこでカミラは思い出す。ああ、ここは自分とアーノルド、二人が建てた家だ。学園を卒業して、自分たちは夫婦になったのだ。
カミラは、首を横に振って答える。
「いいえ、起こさなくて良か……そういえば」
「どうしたんだい?」
カミラは、少しばかり不安げな表情を浮かべて言った。
「怖い夢をみていたの……とても。今は、それがどのような夢だったのかはっきりと思い出せないけど……」
胸がざわつくような、嫌な感じだ。思い出さなければならないような気がするし、思い出さなくていいような気もする。よく、分からない。
「ひとつだけ確かに覚えているのは、あなたが私ではない人を好きになったということ。……だから、怖かったの」
カミラの言葉を聞いて、アーノルドは小さく微笑んだ。
「そうか、それは確かに怖いな。想像するだけで、身震いするよ。でも、それは夢だったのだろう? 今の君は夢の中にはいない」
カミラは、アーノルドをみつめて笑った。
「そうね、所詮は夢だもの。今、私は夢の中にはいない。ねえ、アーノルド」
「何だい、カミラ」
カミラは、一拍置いて言葉を紡いだ。
「愛してる」
アーノルドも微笑んで言った。
「俺もだ、カミラ。愛してる」
二人は想いを確かめ合う。
これまでもこれからも、一生変わることのない、その想いを。
そして次に、アーノルドはカミラから少し離れて彼女の前に立つと言った。
「起きたなら、行こうか。俺たちの子供達が待っている。君と一緒に遊びたいそうだ」
「……もう、本当に元気な子たちね。誰に似たのかしら」
「君だろう。負けん気が強いところとか君にそっくりだ」
「あら、目元はあなたにそっくりよ。それに思いやりがあるところも」
二人して笑って、その後カミラは椅子から立ち上がる。
アーノルドは、カミラに手を差し出す。
「アーノルド」
「何だい、カミラ」
「私、今、とても幸せよ」
そうしてカミラは、アーノルドの手を取った。
♢♢♢
目の前には、先生の顔があった。
「起きたかね、カミラ君。随分と幸せそうな夢を見ている顔をしていたが」