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星屑の漂流者―ロスト・メモリーズ―  作者: くろめ
ロスト・メモリーズ 上
9/85

4 ロスト・メモリーズ(2)

 事情を話したところ、彼女は直ぐに理解をしてくれた。腕を組んでうんうんと難しそうに考えているのが、なかなか見ていて面白い。


「でね、君が落ちた時にもう一つ気になることがあって」

「うん?」

「あの時、君は『やっと』って希望に満ちた目をして言ってたんだ」

「希望に満ちた目、か……何があったんだろうな」


 他人事のように言っている。記憶が無いから、自分のこととしての実感も無いのだろうか。


「何にも思い出せない?」

「ああ、何にも」


 思い出せないこと自体に苦しんでいるのか、とても重たい表情をしている。深刻な事態だ。自分に何かできることは、何か無いだろうか。それを考えている内に、彼女が再び口を開く。


「でも、オイラは何も気にしちゃいないよ。ただ生きているだけでも奇跡だって、お前が言ってくれたじゃないか。ならそれを受け入れて、今を精一杯生きるだけだ。だからお前は、何も気に病む必要はないよ」

「そうなのかな」

「そうさ」


 また、彼女はにっこりと微笑んだ。本当は、自分が一番つらいはずなのに。

 強いな、この子は。口調も大分強めだけれど、精神力もそれに見合っている。


「聞きそびれていたけど、お前、名前は何ていうんだ?」


 ああそうか、まだ名前も教えてなかった。


「夜天 流衣。流れる衣って書いて、ルイだよ」

「ルイ……か。何だか、女の子みたいな名前だ」


 うっ。ちょっぴりグサッとくる言い方だ。

 顔も童顔だし、若干気にしてた身だ。

 しかもよりによって……。


「……女の子にそう言われると苦しい」


 そう言うと、彼女は何かを考え出す。


 間を置いて、返ってきたのは意外な答えだった。


「女の子?」


 ぷいと自分に指を指しながら、僕の発言に遺憾の意を唱えるかのようなその疑問符。


 そこで僕は気付いてしまった。

 いや、むしろ今まで何故気が付かなかった!

 この強気な口調。言葉遣い。それに何より一人称の「オイラ」。ここから結びつくことはただ一つ。


 この子が、女の子じゃない……?


 いや、こんなかわいい顔した子が!?

 や、それだと自分のことを棚に上げているような。僕だって別に可愛い顔してるけど男だし。でも、そんな自分をかわいいとは思わないし、かっこよくなりたいし。凄まじい事実を突きつけられた。こればっかりは感付きたくはなかった。


 いやぁー。あっははは。


「何に驚いているのか知らないけど、そろそろこれからについて考えなくちゃ」

「あっははははははははははははははは」


 ペチュン。と一発ほっぺを軽く攻められた。


「目を覚ませ。あと、人の話はしっかり聞いてほしい」

「ふぁい……」



 僕と、そして記憶を失った赤髪の彼方は、これからこの星でどうしていくのかを考えていく必要がある。かと言って僕らだけでは、どうするべきかなんて分からないのだけれど。

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