Ⅰ 同血近親を探す
★☆★
ここは、別の世界のとある王国。
緑が生え渡り、生命が幸せに生きる。そんな自然豊かな場所である。
そんな幸せな王国であったが、なんとここで、一つの事件が起きていた。
『ん……』
「お父さま、我が直血の兄妹はどちらに」
「永世中立なこの星に於いて、他の王国への干渉は禁じていることは存じているかな。我が娘、ローテナリアよ」
ローテナリアと呼ばれる少女はその場で少し考え、そして察した。彼女の雲行きは怪しかった。
「ええ。勿論です。まさかとは存じますが、もしや」
「左様、勘当だ」
彼女は酷く動揺している。
「しかし、あの子がそのようなことをするなど……」
「お前が気にすることではない。それと、『お父さま』ではないだろう」
「……無礼を申し上げました。『国王』」
「よろしい。部屋に戻りなさい。お前は何も、知る必要はない」
「はい……」
彼女は護衛に連れられて、自室へと向かって行った。
部屋に戻った彼女は、改めて考えていた。
平和を願うはずのあの子が、果たして何も無しに、もしくは小さなことで他の王国への干渉を行うだろうか。いやいやそんなはずはない。
あの子は確かに、悪い人に騙されてついて行ってしまうような、それだけの酷い純粋さがある。でも芯が通った、とっても強い子。そして、私たちに言われたことを黙っていられるような子ではない。きっと、何かとてつもないことが起ころうとしているんだ。そうでなければあの子が動くはずがないのだから。
「お父さまに言われただけで、ただずっと待つだけなんて嫌。わたくしにだって、出来ることがあるはず」
彼女は決意をした。
「ノリス。ノリスは居る?」
しばらくして、部屋の扉が開く。
「お困りですか姫様」
「相変わらず動きが早くて関心ですわ。さて、ノリス。わたくしは今から外に出てきます。でも、これをお父さまに申し上げてはいけません」
現れた薄い緑色の髪をした青年は、顔をしかめて、悲しそうな表情をする。
「姫様。自分は姫様の身を案じておりますゆえ、国王様に仰らないで外出をなさるのは、認めることができません」
「ふふ。そう仰ると思いました。わたくしにも考えがございます。先日お母さまとお手を繋ぎ、下の階へと降りていくのを見かけたのですが、あれは一体何だったのでしょう。お父さまに聞けば解ることでしょうし、聞いてみましょ」
「姫様っ! それだけはっ! それダけハゴグギハァッ!!」
動揺し過ぎである。これには彼女も苦笑いだ。
ローテナリアは今にも地べたに這いつくばり土下座してしまいそうな彼を、珍妙な目で見つめつつ静止した。
「黙っていて欲しいですか、ノリス」
「……はい」
「では、わたくしを外へと導くのです」
「かしこまりました。準備をして参ります」
ノリスはまた廊下へと出て行った。
『前言撤回。えげつない人だ。僕の妹はここまでしない。多分』
「外に出るなら……姫と思われないようにしませんと……」
彼女は止まらない。探している同血を見つけるその日まで。
『……なにこれ』