4 未来、過去と別世界
黙って仮面の男についてきたのはいいけれど……。
「どうしてまた、こんな海岸に」
「この時期の海岸は人気がないからな。話しやすいんだ」
なるほど確かに。となると、誰かに聞かれたらまずい話ということか。
潮風には、若干まだ寒気が残っているように感じる。太陽の光が暖かいお蔭か、寒さ自体はあまり感じることはない。
「私が話せることは少ないが、少しだけ話を聞いてほしい。」
「あ、ああ」
こいつは、何か重大な秘密を知っている。そんな気がしてならない。リガルスにも言えたことだけれど。
どこかしらオイラと似た雰囲気もある。もしや、同族か何かなのだろうか。髪も同じ赤色だ。
そして、どことなく親近感も湧いた。
「いきなりで驚くだろうが、私は未来。過去と、そして別世界から来た」
「ほあ? 本当にいきなりだな。しかも未来と過去、しかも別世界て……どういうことだよ」
「すまない。まるで意味が分からないかもしれないが、きっといずれわかる。お前だけには伝えるべきだと感じたんだ」
「オイラだけに、か。やっぱりお前、オイラを知ってるな? 知っているなら、どれだけ知っている」
「……どうだかな」
そこを曇らせるか……。
けれど、どうやらこれで、自分のことを知っていることは明らかだろう。
「それに、別世界って言うんだったら、オイラの存在も知らないはずだ。なのにどうして知っている」
「知る術はあるんだ。それ以上は語れない」
どうやら自分からの質問に応じるつもりはあまり無いらしい。無暗やたらと詮索したくなってしまうが、抑えるべきだろうか。
「このままの道を辿れば、お前は……未来は消失することになる。それを食い止めるために、私が来たと考えてほしい」
「……余計に意味が分からない」
「これ以上を今語ると、この先がどうなるか解らない。今はこれだけに留めておいてくれ」
自分の未来が消失する……? 余計に意味が分からない。この先、自分自身に命の危険が伴うということだろうか。
……有り得なくはないか。リガルスの件もあるし、しかも、自分は賞金首になっているらしいじゃないか。何かが起きてもおかしいということはない。
それ以外にも聞きたいことはあるわけだが、仕方がない。今は諦めるとしようか。
「さて……もう一つ。これは私の話じゃない。お前自身の話だ」
「オイラ自身の?」
「そうだ。お前は気づいていないのかも知れないが、お前は既に、ローテナリアや私が使ったような《力》を使うだけの潜在能力を秘めているんだ」
「なんだって!?」
まるで気が付かなかった。そしてまさか、自分があんなぶっ飛んだような力を使うことができるなんて……。
「驚いたか?」
「そりゃあ、驚きだ……」
こいつから聞けることは、想像だにできないことばかりだ。理解の範疇にないというか、こう、何といえばいいのか。
でも、こればかりは有益な情報だ。自分自身が力を持っているならば、あのリガルスへの対抗策を作ることもできるだろう。
「分かったところで……試してみるか?」
「へ?」
「勝負だ。お前の力を、出し切れるようにしてやろう」
ちょっと待て。そればっかりは聞いてないぞ。
でも、対して仮面の男は乗り気だ。
明らかに戦う心づもりであることが伝わってきた。
だが、それだけでは戦う理由にはならない。
「闘いたくない気持ちは分かるが、お前はローテナリアの力によって、身体が軽くなったらしいじゃないか。あれは、力が出せるようになった要因の一つだ。もし、このタイミングを逃せば、力は発揮できない可能性が出てくるんだ」
なるほど、最もな理由を挙げられてしまった。
そうか、今闘わなければ、リガルスに対抗する手段も得られないとするならば……これほどのチャンスは無いだろう。
「……わかった。お手合わせ願います」
「物わかりがいいな。流石は――何でもない」
「何だよ、そこまで言われたら気になるじゃないか」
「知っていいことと悪いことがあるんだ」
お前は本当によくわからないよ。自分の過去みたいに、何もよくわからない。




