出会い
「ふんっぎぃいい」
戦場の真ん中で男が鎧を脱ごうともがいている。もれる、もれると言いながら下半身の装備を脱ごうとするが時すでに遅く。
「あ・・・もれちゃった」
一度出たものは止まらない、あれよあれよというまに鎧の中のズボンをぬらし腿を濡らし足にまでたまってくる。
「ぎゃああああああっきったねええええ」
その瞬間男の耳元で大声がした、鎧の中ということも相まってかその声の大きさは何時もの数倍に感じ、男はまた気絶してしまった。
一話目 出会い
男がふと目が覚めたとき自分は歩いていた、はてな?と思ったが夢でもない、体にまったく力を入れていないのに勝手に足動いているのだ。否よくよく気づくと鎧が勝手に動いている…気がする。
男は意を決して足を止める、と鎧はバランスを崩し躓いた。あわてて手をつこうとするが今度は手が動かず顔面から地面につっこんだ。
「「いてえっ」」
「ん?」
また声がした、しかも耳元からだ。地べたにうつぶせになりながら男は起き上がろうとするが動かない。
無理に力を入れようとすると。
「いてえいてえ、無理に力をいれるんじゃねぇ」
とまた耳元から声が聞こえた。
「あーーあーー、誰かいるんですか?」
「ここだよここ」
「どこですか?」
「だーーかーーーらーーー!この鎧が俺だって言ってるだろ!!」
男はまた気絶した。
「おい!起きろ!」
「うん…ひやぁああ」
男は慌てて鎧を脱ごうとする。フルフェイスのマスクをむりやりとろうとガンガン引っ張る。
「いてえいてえ!おい!お前少しは落ち着け!何も食ったりしねえよ!」
とその瞬間いくら力を入れても腕が動かなくなった。
「おい、おい、とりあえず落ち着け、この状況がなんだかわかるか?」
「もしや・・・拾った鎧が呪われていて脱げないのでしょうか?」
「残念だがそうじゃない、呪われているのはこっちだぜ・・・なんでこんな人間なんかに・・・」
「で、ではなぜこのような状況に」
「とりあえず自己紹介しよう、俺は魔族第一歩兵隊リビングアーマーのリビだ」
「ま・魔族!」
「だから落ち着けっていってるだろ!この状況じゃなんにもなんねえよ!お前の名前は?」
「ツワブキ・イチロウ農民です。戦争になったから領主さまに無理やりつれてこられて…」
「OKイチロウ、慌てずに思い出せ、何故、こんなことに、なったのかを、いつこの鎧を着たんだ?」
「え、えーっと」
ばったばったと人が死んでいく、そりゃそうだ、戦争だから。領主様にひったてられて安い賃金ろくな装備もなく戦場につっこまされていく。
ここ100年の間この大陸では魔族と人間が戦争をくりひろげている、休戦協定?しったこっちゃない。
そんな暇があれば目指すのだ。あの高くそびえる山の頂上にあるどんな願いも叶えてくれる聖杯を。
僕がこの戦が初陣だった。聖杯を獲ようと狙う領主たちが敵を蹴落とせやれ登れとせっついてくる。
100年たった戦争ももうすぐ終わりをむかえようと両軍足を引っ張りながら9合目まで登っていた。
いざ戦争が始まると皆は敵に突っ込んでいく、後ろの方で突撃の合図をすラッパがやけに耳に残っている。
僕はなるべく死なないように敵から距離をとりながら死体の陰にかくれる。こんなところで死ねないまだまだやりたいことがあるのだ。途中死体からよりより武器にかえそのまま死体のふりをする。
もう少し・・・もう少し・・・
「撤退だー撤退だー!」撤退のラッパが鳴り響き僕はおきあがって逃げようとした、が混乱した味方の兵士に蹴られてまた気絶してしまった。
目を覚ますと真っ暗で月がでている、俺は助かったことに安堵しながら味方の陣地に帰ろうとした。
「っとその前にこれをどうにかしなくちゃな」
ぼろぼろの鎧にお世辞にも切れそうにない剣。とってもお粗末な状況だ。
「あーこの鎧でいいかな、バラバラだけど何とか使えそうだ」
そういいながら散らばった鎧のかけらを集めて体につけていく。驚くことにちょうど体にフィットした。
そして・・・
「思い出したか?」
「うん、このつけてる鎧ってもしかして?」
「そうだ、俺様は魔族のリビングアーマー、人間にバラバラにされて死んだはずなのに、お前のお陰で一命をとりとめた。といいたい所だがここからが本題なんだ」
「本題?」
「われらリビングアーマーは鎧が破壊されバラバラになったら死ぬ、普通はだ。しかしお前がくっつけてくれたおかげで命はたすかったのだが…俺を着たお前を外にだしてやれんのだ。次バラバラになったら俺は死ぬ。」
「ええええええええええええ」
「こんなことは前代未聞だ…人間を陣地につれて帰ると俺まで殺されてしまう、どうしたものか…」