お葬式爆笑Ver.
「それでは……遺書を、読ませていただきます」
「はい……」
グスン
ズズズッ
すすり泣く声が聞こえる。
「ええ……身に着けるもの、演劇、舞踊などで出演者が使う衣服……」
「……そりゃ衣装や……」
「ウッウッ」
「グスッ」
「ズズズッ」
「……もうひとつ、遺書のほうを、預からせていただいております……。それでは、読ませていただきます」
「はい……」
「……辞典の事……」
「そりゃ辞書や……」
「うぅッ! ウッ!!」
「ズズズッ!!」
「まったく……この人は……最後まで……うっ!!」
すすり泣く声がよりいっそう大きくなる。
「……それでは、最後の遺書を……読ませていただきます」
「はい……」
「………以上。……以上、遺書でした」
「………最後はシャレかい……」
「ウッ!!」
「ズズズッ」
「くっ!! ううっ!!」
「ヒックッ!!」
泣き声で会場が包まれる。
「……ええ、最後に故人の肉声のテープを、預からせてもらっています」
「はい……」
「それでは、流します」
ガチャ
ジー
「……あーあーあー。あめんぼあまいな食べたんかい!!??」
「いきなり大声出さないで。びっくりしちゃうから」
「ええ、皆さんこんにちは。この度は私のディナーショーに来てくださって」
「葬式だ葬式。」
「それでは聞いてもらいましょう。青い山脈」
「古い古い」
「エイドリア〜ン!!」
「ロッキー山脈じゃないから。あんたが歌うのは青い山脈でしょ?ロッキー色に染めないで」
「アイルビーバック」
「シュワちゃん色にも染めないで!てかあんた死んでるから戻ってこれないよ!!」
「僕は死にましぇ〜ん!!」
「すでに死んじゃってるから」
「このバカチンが!!」
「その言葉そっくりそのままお返しします!!」
「なんの魔封波返し!!」
「マジュニアかおまえは!!ってかおまえがしないといけないのはバカチン返しだから!!魔封波返せてもバカチン返せないよ」
「オラに元気を!!」
「分けてあげたいのはやまやまなんだけどさ、あんた死んじゃってるから出来ないわ」
「クリリンのことか〜!!!」
「お前のことだよ!!勘違いでスーパーサイヤ人になられても困るから」
「冗談はさておき、漫談でも一つ」
「それも置いてくれ、冗談も漫談も置いてくれ」
「続きまして、おもしろ御焼香」
「それさっきやったから。若手芸人全員やらされたから。追い込まれて焼香ばら撒いたヤツいるから」
「ふざけてんじゃねえよ!!」
「おまえの遺言だろうが!!司会の人が言ってたぞ!?故人の強い要望でって!!」
「続きまして、ロックお経」
「乗れねえよ!!お経で縦揺れは出来ねえよ!!16ビートとか無理だから」
「それでは、少年合唱団によるお経の合唱です」
「子供の純真な声でお経はやみて。聞いてみたいって心はあるよ。あるけどもさ。やっぱ歌っちゃダメ。うん」
「お葬式を終わります。みなさん。家に帰るまでがお葬式ですから」
「この会場だけだよ。それにまだお葬式終わらないからね。勝手に終わらせないで」
「それではお葬式Vol.2をはじめたいと思います」
「そんなんはじめないで。一回で充分だから。間も空いてないし。せめてハーフタイムを設けてくれ。」
「いや〜。お前ツッコミうまくなったな〜」
「いま聞いてないでしょ?勝手にテープに録音してんでしょ?それにあわせてんだよこっちは。よく考えてみたらすごいことなんだから。奇跡だよ奇跡。キリストもびっくりだ」
「長いもんな〜。もう405年くらい経つか」
「関が原の戦いからの仲か。大往生にもほどがあるぞ」
「でもホントにそんぐらいやってたかったな〜……。2年ぐらい」
「どこがそんくらいだよ!!200分の1じゃねえか!!1000だったら500だよ!!当たり前だよ!!!」
「ちょっと……目に粗大ゴミが……」
「大きすぎるなあそれは。入ったらえあらいもんだよあんた」
「……ああチキショー。涙が止まれねえや!!誰かコルク栓もって来いコルク栓」
「それ涙腺に押し込んじゃう?でも粗大ゴミが入るぐらいだからね。出来るかもね」
「まあ、あれだ。最後に言っておくことがあるなら。そうだな。どんな辛くて、悲しいことがあってもさ、笑いに変えちゃえってことかな。オレって笑うの大好きだからさ。一番身近にある幸せって笑うことだって思ってるわけ。だからさ、みんなに笑っててほしいわけよ。悲しいとか悔しいとか、つらいとか、そんな理由で涙を流してほしくないわけ。だからさ、俺が死んだくらいで泣かないでよ。みんなの笑顔がみたいなあ。なんてね。じゃ、この辺で終わろうかな。ああ、そうだ。1つ言い忘れてたけどいま言ったこと全部ウソだから。」
「それがウソだろ。もういいよ……」
『ありがとうございました』
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「ヒックッ!!」
「ウ……ううっ!!」
「それでは、これにて、すい臓がんでこの世を去った故人の、お葬式を終わりにさせていただきます……ええ、それでは……最後に合掌でお別れとしたいところですが、故人の要望により……強い要望により……爆笑で、終わらせて頂きたいと思います」
「うううっ」
「さっ……さよなら……」
「くっ……」
「……ありがとう……」
「ヒックッ!!」
「それでは…………爆笑!!!」
そして会場は爆笑で包まれた。
あるものは腹に手をやり。
あるものは笑い転げた。
そして誰もが、涙を流すほど爆笑していた。
これが、地球を笑わせる男といわれたお笑い芸人の最後だ。
先日おばあちゃんが亡くなりました。
そのとき、お葬式に参加しながらふと思いました。
自分ならどんなお葬式を挙げるだろうか。
私は爆笑に包まれながら逝きたい!!