第7章
2人はモーニングを済ますと意気揚々と貸し本屋へと向かった…
「セリー?どの辺りでお見かけしたの?」ジェシカは到着早々セリーナの腕を引きキョロキョロと辺りを見回した。
「ええ…あ!あそこ!」セリーナは小声で本棚の方を指差すとジェシカがあっちねと言ってセリーナの腕をひっぱって行った…
「う~ん残念…」本棚からそっとソファの方を窺うと其処には誰も居なかった…
セリーナも早朝でもあるしいつも居る訳でもないだろうから期待はしていなかったが心の隅ではかなりがっかりしていた。
「…まぁそんなに直ぐにお見かけ出来るとは思っていなかったからね…」ジェシカは小さくフンと鼻を鳴らすと慌てて口元を隠しセリーナを振り返った。
「まぁ…セリー…そんなにガッカリしないでちょうだい…」セリーナの明らかに落胆している表情を見てジェシカはそんなセリーナをいじらしく思った。
「セリーナ…元気を出して?ロンドンは広いんだし、まだ社交場も廻ってないじゃない…きっとまた会えるわ」ジェシカはセリーナの手を優しく握るとさあ次は社交場を廻ってみましょうと笑顔を見せた。
「そうね…ええ、行きましょう」セリーナも微笑むと2人は腕を組みロンドンの有名な社交場を探しに行った…。
2人は1日かけて4つの社交場とパークを廻ってみたが目的の人物を見つける事が出来ずジェシカの家のソファに凭れ深い溜息をついていた…
「まあまあ2人とも朝から出かけてどちらにいらしていたの?」ウェイルズ夫人が暖かい紅茶を入れたカップを2人に渡しながら尋ねた。
「ええ…ちょっとロンドンを2人で散歩していたの…遠くまで行き過ぎてしまって疲れてしまったわ」ジェシカがカップを受け取り有難そうに1口すすった。
「そう…淑女が2人で遠出なんて褒められたものではないでしょう」ウェイルズ夫人は小言を言いながらサイドテーブルに置かれた手紙の束を手に取り中身を見始めた。
「セリー今日は無駄足だったわね…一体セリーナの思い人様はロンドンの何処にいらっしゃるのかしら」ジェシカは溜息をつき窓の外を眺めた。
セリーナも溜息をつきジェシカの視線の先を一緒に眺めていた…
「ジェシー、ロナウド子爵様のお宅で開かれる舞踏会の招待状が届いているわ…お招きくださったのね…」ウェイルズ夫人はニコニコと微笑みながら興味無さそうにしているジェシカに渡した。
「ロナウド子爵様…お会いした事ないわ」
「ロナウド子爵様の舞踏会の招待状?ジェシカ、貴女も招待されたのね!」セリーナが嬉しそうにジェシカの手を握った。
「ロナウド子爵様宅で開かれる舞踏会は冬のロンドンで開かれる舞踏会の中でも指折りの大きさよ、私も去年ご招待を受けて伺ったけれどとても賑やかで楽しかったわ…お昼から開かれるのだけど去年はまだ子供だからといってイブニング前には母につれて帰らされてしまったけれど…夜はお酒も出てとても華やかだそうよ…」セリーナは思い出してるのかウットリと窓の外を見ている。
「そうなの…お母様、セリーナもご招待を受けているようですし私も行ってもいいかしら?」ジェシカは郵便の確認をしている母に甘えてお願いした。
「ええ…お父様に相談してみるけど多分いいとおっしゃって下さると思うわ」ウェルズ夫人は嬉しそうに微笑むと手紙をキチンと畳むとお返事を書かなくてはとダイニングを出て行った…
「セリー今年は夜まで一緒に楽しめそうね!」ジェシカはキラキラした瞳でセリーナを見た。
「ええ、両親に聞いて見なくてはだけど…貴女が一緒だったら良いと言ってくれると思うわ」セリーナも嬉しそうにジェシカに微笑んだ。
それから2人は両親に舞踏会の出席の許可を取ると何を着てくか、髪型はどうするかと準備を楽しく進めていった…
「セリー、当日のエスコートはどうする予定なの?」ジェシカが侍女に試しに結ってもらった髪型を鏡の前でチェックしながら尋ねた。
「え?エスコート…特に考えていなかったわ、母もいるし…」セリーナは特に気にしていないといった感じで見ていた本に視線を戻した。
「そう…やっぱりね。ねえ、エドワード兄様も行かれるんだけど母達の変わりにエスコートをお願いしようと思っているの」
セリーナはジェシカの突然の提案にビックリして振り返った。
「お兄様はきっと否とは仰らないわ、母達と一緒に居るのもいいけれどセリーナと初めて舞踏会に行くのだからしっかりとしたエスコートが居る方がいろいろな方のご紹介も受けやすいと思わない?」ジェシカは自分の髪型が気に入ったのか仕上げにリボンを結ぶと嬉しそうに振り返った。
「それはそうだけど…エドワード様は嫌がらないかしら?」セリーナは心配そうに呟いた。
「大丈夫よ!私がお願いしておくから任せてちょうだい!」ジェシカの中では決定事項なのか決まりねと言って今度はセリーナの髪型を決めようと言って鏡の前に座らせるとその髪を弄り出した。