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軌跡  作者: alice
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第6章


 今日も同じ様にモーニングを少し過ぎた時間にセリーナはジェシカの家を訪れていた。今日は広いリビングで暖炉の前に2人で座り込んで話をしていた。


 ウェイルズ夫人はソファに座ってそんな2人を微笑ましそうに眺めながら趣味の刺繍に精を出していた。




 セリーナはジェシカと昨日の話をしていた。


 「ジェシー、今日はエドワード様はお出かけ?」セリーナは何の気もないようにさり気なく尋ねた。


 「エドワード兄様?今日はお友達の方と一緒に朝からお出かけよ、兄様に会いたかったの?」ジェシカは何の気なしに聞いてみた。


 「え?イエ…そうじゃなくて…昨日のお礼もちゃんと伝えていないような気がして…」心なしかセリーナの頬が染まっているように見えた。


 ジェシカはソファで刺繍をする母を見やるとウトウトしている様なのでセリーナに身を寄せ小声で話しかけてきた。




 「ねえ、セリーには心に思う方がいらっしゃるの??」ジェシカはちょっと恥ずかしそうにしながらしかし瞳を輝かせて尋ねた。


 「え?心に思う方!?」セリーナはビックリして何の事だか分らなかったのだ。


 「お慕いしている方がいらっしゃるのかなって思って…」ジェシカはあまりにセリーナがビックリしたのでモゴモゴと口篭ってしまった…


 「お慕いしている方…その様な方いらっしゃらないわ…」セリーナは恥ずかしそうに頬を染めると俯いてしまった。


 「そうなの…ねえ、エドワード兄様の事はどう思って?従姉妹の私が言うのもなんだけどお兄様はとても紳士的でお優しい方よ、私セリーとお兄様はお似合いなんじゃないかと思って」ジェシカはウフフと微笑みながらセリーナの様子を窺った…。


 「そ、そんな…エドワード様に失礼だわ、私なんてあんな素敵な方には似合わないわ」慌てて肯定の言葉を口にするセリーナの様子を見てジェシカは笑い出した。


 「冗談よ、そんなに真剣に否定しないで。でも似合うって言ったのは本当よ、お兄様もあなたの事を可愛らしいって言っていたもの。」ジェシカは目の端を拭ってセリーナの握るとごめんなさいねと言った。


 「ジェシー、からかわないでちょうだい!」セリーナは握られたジェシカの手を軽く叩くともうと言って笑った。


 「そういうジェシーは何方かいらっしゃるの??」今度はセリーナが仕返しとばかりに身を寄せて聞いた。



 「実はね…」そう言うとジェシカは母がちゃんとうたた寝しているか確認して母に背を向けてセリーナに耳打ちした。



 「実は去年エドワードお兄様のお屋敷に遊びに行ったときに叔父様が開いてくださった舞踏会でとても素敵な人にお会いしたの…」ジェシカはポッと頬を染めると興味心身で聞いているセリーナの手を取り続きは私の部屋で話しましょと言ってセリーナを2階の自室へと連れて行った。








 自室の前に着くとジェシカはセリーナに向き直り、


 「この話は誰にも内緒よ!エドワード兄様にも!!」と言ってセリーナを自室に案内するとベットの端に座り続きを話し始めた。



 



 「初めてお会いしたのはその舞踏会のときでエドワードお兄様のご友人として紹介されたの、そのときに2回ダンスを踊ってくださって…」ジェシカはその時を思い出したのか夢見るような表情になった。


 「それで?どんな方なの??」セリーナが先を促してジェシカの意識をこちらに戻しした。



 「ええ、それでねわたしったら緊張してしまってあんまり大した事をお話できなかったの、今日の舞踏会の事とかエドワード兄様の事とか…」ジェシカはあからさまにシュントした表情になった。


 「お名前はジュード・マーロウ様…マーロウ子爵の令息…濃いダークブラウンの髪に瞳の色は薄くアンバー…ポロが得意でいらしゃって馬を可愛がっているそうよ…」




 「初めて聞くお名前だわ…マーロウ子爵様は何度か聞いた事があるのだけど…」セリーナは思い出すように眉間にしわを寄せていた。


 「とってもおもてになって色々な噂話を聞いた事があるわ…どれもあまり良い物ではないけどね」ジェシカはくすりと笑うとセリーナの眉間の皺を指で伸ばした。



 「それって…浮気ものって事?そんな男性貴女には相応しくないわ!」セリーナはムキになって言った。



 「そんな心配要らないわ、私の事なんてどうせ覚えていらっしゃらないわ…私の片思いよ…」俯き寂しそうなジェシカの表情を見てセリーナも悲しくなった…


 「それでセリーはどうなの?気になる方とかいらっしゃらないの?もしかして本当にエドワード兄様に恋してた?」ジェシカはパッと顔をあげるとセリーナの手を握った。


 「それなら私協力してよ!!」ジェシカの顔は先程とは違ってキラキラ輝いていた。


 「え!!そんな…確かにエドワード様はとても素敵な方だけど…気になるとかそんなんじゃないわ…ただ素敵だなぁと思っているだけで…」顔を赤くしながらぼそぼそと話すセリーナを見てジェシカはそうなの…貴女と親戚になれると思ったのにと笑って軽口を叩いた。



 「あ、でも…気になるとかそんなんじゃないんだけど…少し素敵だなと思う方が…」セリーナが思い出したように顔を上げジェシカを見つめた。


 「どなたの事?」ジェシカはセリーナに続けさせようと促した。


 「ええ…先日、あなたに会う前よ。貸し本屋に行った時なんだけど…」


 セリーナは恥ずかしいとは思いつつ貸し本屋で偶然会って隣に腰掛けた男性についてジェシカに詳しく話して知っているか尋ねた。



 「スタンリー・ギャルウェイ様…爵位までは分らなかった?」そうジェシカに問われセリーナは一生懸命彼の特徴を話した。




 「…髪は金に近いブラウンで瞳の色は濃い青…スタンリー様…」ジェシカは必死に思い出しているようであった…


 

 「…ごめんなさい、力になれそうに無いわ…」ジェシカの悲しげな表情を見て気にしないでとは言ったもののセリーナも心が沈んでいくのを感じた。


 「でも貸し本屋さんでお会いしたのならまたロンドンでお会いできるんじゃないかしら?明日その貸し本屋さんに2人で行ってみない?」ジェシカはセリーナを元気付けようと提案した。


 「…ええ、そうね。もしかしたらまたお会いできるかも!」セリーナはジェシカの提案に元気付けられ明日が楽しみねと笑顔になった…






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