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軌跡  作者: alice
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第5章

 「サウサンプトンの郊外と言われますとどの辺りですか?私の家の領地が隣のドーセット州にありますのでお近くなのでは?」エドワードは少し身を乗り出して尋ねた。


 「サウサンプトンから馬車で1日位ですわ、父は港にも事務所がありますので…。ドーセットまででしたら近いと思います。」セリーナは家の地理を思い出しながら答えた。


 「そうですか…では春になったら是非遊びに来てください、ジェシカ達も来ますので。」


 エドワードに家に招かれ白い頬を高揚させ頷いた。


 「エドワード兄様あちらの洋装店に寄ってもいいかしら?あそこはこの辺では新しい生地を揃えてるそうなの。」ジェシカは嬉しそうにエドワードの腕を引っ張りながら早足で向かった…




 


 女性2人は新しいドレスの生地を見たり帽子に飾る羽やリボンを物色して楽しい時間を過ごした。その間エドワードは2人に尋ねられるがままドレスの形や色デザインなどの意見を言い店を出る時に2人が見ていた淡いローズレッドのお揃いのリボンをプレゼントした。



 セリーナは今年の新色と紹介されとても美しくて欲しいと思ったが手持ちのお金では買うことが出来ずジェシカと今度来た時にお揃いで買いましょうと言っていたリボンを贈られビックリしてエドワードを見つめた。



 「まあ!ありがとうエドワード兄様!」ジェシカは嬉しそうに微笑むと早速お店の鏡で束ねてある自分の髪に結んだ。

 

 セリーナにも付けてあげると言ってセリーナからリボンを受け取ろうとするとセリーナが困った顔で言った。



 「エドワード様高価なリボンを頂いても宜しいのでしょうか?」セリーナは家族や義兄からしか花以外の物を贈られた事がなかったのでどうしたら良いか困ってしまった。



 「せっかく貴女の為に購入したのですから貴女の美しい黒髪に飾ってください。」エドワードは優しく言うとセリーナの肩に流れる長い黒髪をそっと一房触った。



 セリーナはその言葉と行動にますます頬を染めて俯いてしまった。



 「セリー、折角のエドワード兄様からのプレゼントだから頂きましょう?」ジェシカも優しく促したのでセリーナはありがとう御座いますと小さく呟いた。




 ジェシカがセリーナの編みこんだ髪にリボンを通し結んでやるとその姿を鏡で見てセリーナも嬉しそうにエドワードにお礼を言った。




 3人は洋装店を後にして近くのカフェに入り冷えた身体を暖めることにした。








 ちょうど午後のお茶の時間だったので3人は軽い軽食と紅茶を頼み休憩を楽しんだ。


 

 


 「セリー、エドワード兄様はドーセット州のライという所にお屋敷を持っているのよ、今は男爵位だけど将来御実家の子爵家を御継ぎになるの。お兄様の実家は子爵家で浜辺の近くのボーンマスにお屋敷を持っていらっしゃるの。私はいつも春になると母と一緒に遊びに行くのだけれどとても気候が穏やかで気持ちの良い場所よ…お兄様もおっしゃってたけど今年は貴女と一緒に行けたらとても嬉しいわ。」


 ジェシカは毎春に其処を訪れていたが女性の従姉妹が居ないため少し寂しい思いをしていた。



 「ええ…ありがとう御座います。両親に聞いてみますわ、多分家からもそう遠くない距離ですからジェシカのご家族もいらっしゃるし許してくれると思います。」セリーナもジェシカと一緒に居られるならさぞや楽しいだろうと思い前向きに一緒にいきたい気持ちになっていた。



 「ぜひいらして下さい、その時は私も実家に戻って来られるようにしますから。」エドワードの嬉しそうに微笑む顔を見てセリーナはドキドキして俯いてしまった…。




 …どうしましょう、私ったらエドワード様の笑顔を見ていると恥ずかしくなってしますわ…けれどとてもお優しくって紳士的な方…。



 セリーナはこんなに長い時間男性と話をしたことが無かったのですっかり舞い上がってしまって頬を赤くしたり俯いたりと自然に接することが出来ず戸惑っていた。





 …半時ほどするとジェシカがもうこんな時間ねといって店を出て家に戻ることにした。ディナーの時間(この時代のディナーは3時か4時頃。)に間に合うようにと2人がセリーナを家まで送ってくれ門の所でまた明日もジェシカに会いに行く約束をすると分かれた…



 セリーナは2人と別れ自宅のダイニングのソファに座るとどっと疲れたような気がしてクッションにもたれ横になった…



 わたしったらすっかり緊張してしまってジェシカと話そうと思っていたことを全然話せなかったわ…明日もエドワード様もいらっしゃるのかしら?緊張してしまってしっかりとした返事も出来なかったし…大人しい子に思われてしまったかも…



 セリーナはそっとリボンを解くとじっと見つめ初めての異性からのプレゼントに嬉しくなった…



 社交界にデビューして1年たつがいつも緊張してしまってダンスを申し込んでくれた相手の顔をろくに見ることも出来ず、真っ赤になってしまった自分に何度も誘ってくれる男性はほとんど居なかった…みな珍しい髪色と瞳の色と東洋人のハーフと言うことで興味本位に話しかけてくるだけで受け答えもろくに出来ず爵位も無い自分には興味もつづか無かったようだ…



 恋もしたことが無く男性と長時間一緒に過ごしたことの無いセリーナにとって今日の一日は驚くべきことで優しく笑いかけてくれるエドワードの存在は大きいものっだった…





 昨日の美しい紳士…正に貴族風のスタンリーも優しく穏やかな少年の様な微笑のエドワードといいセリーナにとって昨日から心臓のドキドキが止まらない2日間であった…



ジェシカには3歳年の離れた弟が居ますあと4歳下の妹。ロンドンには着いてこず領地で乳母と一緒にお留守番です。

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