第10章
ジェシカはセリーナの腕を組むと引きずる様に屋敷の中に戻って行くと周りに人気が無いのを確認するとセリーナの腕を上下にふった。
「セリー!!!なんて事なの!?スタンリー様が私の事を覚えてくださっていたなんて!!!」ジェシカは声を落としてはいるがセリーナの腕をぶんぶん振り唖然とするセリーナを置いて感極まった様に手を握ると喜びでその場でくるくると踊りだした。
「…ジェシー?ジェシカ?あの…ひょっとして先ほどの方が貴女が以前おっしゃっていた方なのかしら?」セリーナは今や手を握りしめ明後日の方を向きブツブツ神に感謝の祈りを囁いているジェシカに恐る恐る尋ねた。
「まぁ!なんて事!セリーったら気づいていらっしゃると思っていたのに分かってらっしゃらなかったの!?」ジェシカは勢い良くセリーナに振り返り気の毒な子を見る様に見つめそっと手を握った。
「セリー…そうよ、あの方が以前叔父のパーティーで従兄のエドワードお兄様からご紹介されたスタンリー様なの!…2回踊ってくださって気の利いたお話も出来なかった私の事を覚えてくださっていたのよ!?しかも今日のパーティーにもいらっしゃってるなんて!!」
「どうしましょう!!セリー!のんびりしてられないわ!今日はいつもより念入りに支度しなくっちゃ!一緒に手伝ってくださる?」ジェシカは話しながら感極まったのか瞳をキラキラさせてセリーナの手を強く握った。
「まぁ!やっぱりそうなのね!なんて素敵なんでしょう?ジェシー、貴女はパーティーの主役より綺麗に輝かなくては!」
2人はその場で強く手を握り合うと踊る様にジェシカの客室へと支度の為に戻って行った…。
「ああ!髪型が決まらないわ!どうしましょう??」ジェシカの部屋で一緒に支度をしてたセリーナに鏡台の前を長々と独り占めしているジェシカが白い顔を赤く染めながら縋る様に振り返った。
「お嬢さま、お願いですから折角のお化粧が流れてしまいますので涙は流さないでください。」ジェシカの化粧を終え髪にブラシを当てながらアップにしたりダウンにしたりとあれこれ指示され少しウンザリとした口調で侍女がジェシカを諫めた。
「分かっているわよぉリビーの努力を無にする気はないわ。」ジェシカはますます悲しそうに侍女に言うとう~っとうなって姿勢を直した。
セリーナはうなだれシュンとしてしまったジェシカの脇に立つと優しく肩を撫でた。
「ジェシー落ち着いて、髪はそうね、サイドからトップに編み込んで生花の小花を散らさない?アップで纏めてエドワード様に頂いたお揃いのリボンで飾るの、首には貴女の綺麗なくせ毛を数本垂らして。そしたら貴女の綺麗で長い首も見えるし生花を飾るからとても可憐に見えるわ。」そう言うとセリーナは部屋に飾られた花瓶から白いデイジーをリビーに渡した。
「私も貴女とお揃いのリボンを付けて花を飾るわ、最も黒髪の私が付けたらどんより暗くなってしまうけど。」
「そんな!セリーナの髪はエキゾチックで素敵よ!黒髪に白は良く映えるわ!そうね、今日のドレスはローズピンクだらかお兄様に頂いたリボンが合うわね!リビーお願いね。」セリーナのアドバイスを参考にリビーは髪を結ってった。